静かな戦争
貯水池を掘った時に出た残土で、外周はちょっとした山になってた。
まぁ、良いか。誰にも迷惑かけないし。多分。
いや、本当はちょっと湖畔のリゾート地的なイメージがあったんだが、出て来てみればカルデラ湖ですわよ奥さん。
木ぃ引っこ抜いて穴が出来たらそこが山頂の池に成ってって流れで、何か落語の『頭山』を思い出したが、自殺する気とか全くないよ? 命の限り生き抜くとです!! そもそも木々は切り倒したんであって引っこ抜いた訳じゃないから大丈夫!!
それはそれとして、地下に第二第三の貯水池を作らんといけない訳なんだが、この土砂量を見ると、本格的にコンベアと送風機が必要だよな。
一先ず公都に戻ってマトスンにコンベアとか作らせるか。動力は……うん、まぁ、ちょっと考えてる事はあるんだ。上手く行く……とは思うが、どうだろう? やってみてか。
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「あ!! エリスちゃん久しぶりー!!」
「うぬ、キャルも息災な様で何よりなのじゃ!!」
子供二人が抱き合ってキャッキャと騒ぐ。傍から見てる分には平和で良い光景なんだが、その魔人族、一応、女王だかんな? キャル。
まぁ、本人も気にしてないみたいだし、良いのか? ぶっちゃけ俺も気にしてないし。
うん。ついて来たんよエリス。公都にまで。腰の軽い女王様だよな。ルールールーに一応連絡頼んだわ。一応、俺が把握はしてるけど、国の方に情報行ってねぇと拙いだろうし。
こんな時の為のルーガルーのジジイだ。仕事をして貰おう。てか、やっぱり遠距離通信の何か欲しいよな。風魔法通信だけじゃなくて。
まぁ、それはそれで、何か考えよう。それは兎も角、マトスンにやって貰う事があるんだったわ。アイツは何処だ?
そんな事を考えながら教会の中を歩いていると、エクスシーアが俺の方に歩いて来た。
「おお、我が君、良い所に帰って来た」
「何かあったか?」
「うむ、王都の支店なんだがな、どうも、貴族からの圧力を受けてる様でな」
「マジか」
何だっけ? 何とかって侯爵かね? 豚会長、割と元気だな。と言うか、もしかして豚会長じゃなくて侯爵の方が主体だったんかね。
「う~ん。実害は?」
「商品の取り扱いの代理店として契約してやるとか何とかな、そのせいも有って貴族向けの商品の売れ行きが公都に比べると半分以下と言った所だ。とは言え、赤になるほどではないがな」
「店舗に直接とかって事はないんな」
「うむ」
何だっけか? ああ、ベスティニアス侯爵だ。社交界で売り出したいなら自分所を通せと。多分ネガティブキャンペーンのロビイ活動とかもしてるんだろう。
俺も伯爵位があるって言っても他国の爵位な上、この国では実績がないからな。いや、無い事ぁないんだが、『竜殺し』に関しちゃ、眉唾だと思われてるっぽいんだよなぁ。
第一、俺、社交界デビューとかしてないし。
多分その辺りを突かれて信用できないとか騙りの詐欺だって感じで話を持って行ってるんだろうけど……
「ちょっと、気に入らねぇかな?」
「どうする? 我が君よ」
「ルーガルーのジジイの伝手使って、周辺諸国に売り出せるか?」
「うん? 成程?」
国内で売らせねぇってんなら、素直に国外に売り出すさね。幸い、マトスンやドワーフの協力で、密封できる瓶の生産は目途がついてるんだ。
第二夫人と聖王国のリティシアにも手伝って貰おう。
貴族ってのは面子が大切だよな? 外交官殿よ。




