またきた
「来ちゃった! のじゃ!!」
『【挨拶】来てしまいました』
『【久々】来たよ』
「良し!! ハウス!!」
いや、ホント、何考えてやがる女王!! 国宝2つも連れて!! ってか、また密入国か!?
「うう、酷いのじゃ。ワシはオヌシ様に会ない夜を何度枕を涙で濡らした事か、オヌシ様はワシに会いとう無かったのかなのじゃ」
「少なくとも、こんな形で会いとう無かったわ」
来るなら正式に来い。なんでこいつはいつもいつも密入国とお忍びなんだ? ってか、一番最初のアレはしょうがなかったとは思うが、その後は立場的にも勝手に入って来るのは拙いと思うんじゃが?
まだ幼いとは言っても女王様なんだしさ。
『【嘆息】ですから、正規のルートで来ましょうと言いましたのに……』
「だって、大森林を突っ切って来た方が早かったのじゃ」
『【同意】ワタクシ達がいる以上、危険など無いも同然だろう? 聖弓』
国内最大戦力だってのは分かるがな、聖剣。今回も聖弓の言う事の方が正しいぞ?
「まぁ、来ちまったのはしょうがない。で? 何の用だ?」
「ほんに、いけずなのじゃ!! そもそも連絡をして来たのはそっちの方なのじゃ!!」
ああ、国境で活動してるけど、害意は無いよって連絡して貰ったアレか。
「いや、だからと言ってエリスが来るほどの話じゃないだろ?」
「何を言う! 良人が、二人の為の愛の巣を作っていると言うなら、それを支えるのは妻の役目なのじゃ」
愛の巣じゃねぇし!! 夫婦にもなってねぇわ!!
「まぁ、それはそれで理由の一つなんじゃが、我が国としても、大森林内には国境監視の為の砦など作って無かったのでな、オヌシ様がここに街を作ると言うなら、それに合わせて砦を隣接させるのも良いかと思って視察に来たのじゃ」
ああ、ちゃんとそう言う理由もあるんな。まぁ、それなら……
「と言う建前を付けてゴド爺を説得して遊びに来たのじゃ」
「ぶっちゃけたなぁおい!!」
ゴドウィン侯の呼び方がゴド爺に変わってるんな。まぁ、頼れる相手があまりいないしなエリス。実父がアレだし。
まぁ、国境線も近いと言う事で緩衝地帯を間に挟んで城塞都市を造る事にしたようだな。問題があるとすれば、場所が大森林の奧所と言う事だ。
王国と魔人族の国との国境線の関所は他にもある。大森林を避ける様に繋がっている街道で、そこも同じ様に緩衝地帯の平原を挟んでの城塞都市が向き合っている形だ。王国と魔人族の国は一応争ってはいないが、敵対していないってだけで、同盟国って訳でもない。
そんな王国が国境付近に街を作るとなれば、魔人族国も警戒をしないって訳にはいかないだろう。
「ワシはオヌシ様が我が国に攻め込むなどと言う事はないと確信しているのだが、それを信じられない者が居るのも確かのなのじゃ」
そりゃそうだろう。互いにナイフを隠して足を踏み合いながら笑顔で握手をするのが外交って物だ。
その懸念は正しく分かる。
ただ、今回の街造りに関しては、俺の実績作りと、最近国内の魔物が増えてきた為に、その出所だと思われる大森林内の間引きが主で、隣国との関係を如何こうってのは考えてない。
まぁ、それでも、動きがあれば対処しない訳にも行かないんだから、面倒っちゃ面倒だよな。
まぁ今回は、遺跡を探すにあたって、遺跡の出土数の多い魔人族国付近まで近付いた事も原因の一つではあるから、俺の責任もあるっちゃあるんだろう。
だから、この辺りに城塞都市を造るなら、開墾位は手伝ってやろうじゃぁないか!!
「まぁ、この辺りに街を作ろうってのは理解した。で、緩衝地帯はどの位とる?」
「緩衝地帯地言っても、実質両軍を配置する為の場ではあるからのぉ。正直必要ないとも思っておるのじゃ」
「そんな訳にはいかんだろ」
「そうじゃの、4km程度の草原があれば良いのじゃ」
「分かった。ファティマアアアアアアァァァァァァァ!!」
『【了解】サー!! 分かりました!! サー!!!!』
言うが早いか、俺はオールアップし、目の前の森を切り払った。
次々に木々が倒れ、視界が晴れる。
エリスが唖然としていたが、やがて呟いた。
「ほんに、常識外れじゃの」




