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口は災の元とはよく言ったもので

 道中倒したトロルとかの素材を渡して、街道の注意喚起をギルドに報告しておく。


 あの後も、トロル以外にジャッカロープやらアルミラージやらって魔物が出て来たんよ。まぁ、襲ったのが向こうか、こっちかは微妙な線ではあるんだけんどもよ、前より魔物の数が増えてるってのは確実だろうさね。

 それと一応、『栄光の絆』とやらに攻撃されかかった事もな。あっちがどう出るかは分からんけど、一応な。


 宿は色々考えた結果、前と同じちょっとお高めの宿。だって犬達も一緒に泊れる所って、あそこしか知らんし。

 どの道、登城とかするって事も考えると、それなりのグレードの宿にしといた方が無難だろうからな。


 王都に着いた事は、門番の兵隊さんを通じて連絡を入れてあるんで、その内返答が来るだろう。

 まぁ、それまでは、精々王都散策を楽しませて貰うさね。


「っと、忘れてた! ルールールー!!」

「何でしょうか?」

「王都にも()()()()? 情報収集頼む」

「ああ、アレですか」

「うん。アレだ」


 転ばぬ先の杖だ。


 ******


 それから登城したのは左程経たない後だった。通されたのは謁見の間とかではなく、前にも来た応接室。

 護衛の兵士とかメイドさんとか居るけど、やっぱり、国王と一対一の(てい)なんだろうな。

 ストレートでも甘みを感じられる紅茶に口を付け喉を潤した後、国王が口を開いた。


「色々考えたのだが、やはり爵位を貰って欲しいのだ」


 紐付ける気満々じゃねぇか!

 眉根を寄せる俺に、国王はまぁまぁと手を振った。


「王国のギルド所属の冒険者が他国の貴族席だけ持っていると言うのはやはり、色々と問題があってな」


 まぁ、その辺は分からんでもない。下手すりゃスパイ扱いが順当だよな。別の国に()()太い繋がりがある冒険者なんざ。


「そもそも、()()であれば、オヌシが公爵だった未来も有ったのだがな」

「要らねぇよ?」

「まぁ、そうであろうな。自身の才覚だけでこれだけの事を成せる者には、血脈の柵の方が足枷になるだろうよ」


 その才覚、チート(ずる)だけどな。前世持ちだし。まぁ、って言っても、結構な幸運に恵まれた結果ではあるんだよな。現状(これ)


「最低でも魔人族国から送られた爵位と同等の物でなければ釣り合いが取れぬのだよ」

「だが、向こうから送られたの伯爵位だぞ? それと釣り合いって伯爵位以上って事だろう? 他の貴族からの反発とか多そうだけどな」


 名誉とかつかない永代貴族扱いだしな。これで準男爵だとか騎士爵だとかならまだ反発も少ないんだろうが、伯爵ともなれば立派な上位貴族だ。

 たかが冒険者をいきなりそんな地位に据えたら、他の貴族からの反発は必至だろうさね。


 ふむ、と国王が腕を組む。それは分かっているって所か。


 魔人族の国で、俺が伯爵位でも反対されなかったのは、王様と王弟の軍の前で力を見せつけたからだし、その上で、王都に居た貴族達も目撃した“邪竜”なんて分かりやすい脅威を退けたからだ。もっとも、向こうの貴族の認識では、俺の伯爵位は、これだけ厚遇してるんだから、俺が魔人族国に()()()()()って言うパフォーマンスの為だって事を理解してるからだって所もある。


 だが、この国だとまた事情が違うからなぁ。

 二体の『龍殺し』にしたって、どっちも伝聞でしかなく、実際に“俺”って言う人物の能力は未知数ってか、どっちかと言うと騙りっぽく思ってる奴等の方が多いだろう。

 たぶん、今のこの姿を見せたら、尚の事『信じられない』と思う相手の方が多いはずだ。

 これがまた、“最年少S級冒険者”とかって謳い文句でもあれば別なんだろうけど、未だに俺はD級冒険者でしかない訳だしな。


「それで、ちと相談なんだがな、トールよ」

「いやな予感しかしないが、一応聞こう」

「伯爵家に養子に……」

「却下で」


 さっき血族なんかの柵が足枷に成るっつたばっかやん!


「そうは言うがな、分かりやすい実績と言うものが必要なのだよ……」


 冒険者の実績って、基本荒事やん。そんな物期待するとか、話にならん。


 正直ね、貰える土地を指定できるなら、授爵も悪か無いとは思うんだ。商会の本拠地にしたり、拠点に居る子供達を住まわせたりとかな。実際、コボルト達の住んでる所、余所の貴族ん所だし。

 ただ、貴族って物に成った場合のメリットとデメリットを考えるとデメリットの方が多い様に思うんだよな。俺の場合。一番問題なのが、俺自身が自由に動ける時間を作れなくなるって事だな。

 何処まで行っても、基本的には俺は冒険者だからな。社交界とか訳わからん。


 魔人族国の伯爵位を貰ったのだって、そうしないとエリスが困るからってのもあるし、それ以上に、貴族の義務って奴を免除してもらってるからってのが、結構大きいんよ。


 とか考えてたら、国王、何か悪い笑みを浮かてべるんじゃが?


「と、言う訳で、トールよ、オヌシが修行で使っていたというダンジョンな、その付近をくれてやるので、開発をせい」

「は?」


 肩眉を上げた俺に対し、国王は楽しそうに言った。


「大森林は隣国との緩衝地帯でもある。妖虫種やら魔物が多すぎてどの国も手が出せなんでな。そんな場所を開墾し、砦なり町なりを作ったとなれば、それは充分な実績に成るとは思わんか? のう、トールよ」


 いや、確かにそうだけんどもよ、そもそも、何で俺が授爵する前提で話が進んでるん?


「いや、何もオヌシを授爵させたいが為だけで言っておる訳ではないのだ。最近、魔物の出現情報が多くてな、大森林内で、間引きの出来る者が必要だと思っておったのだが、近隣の貴族連中に言っても、何やかんやと理由を付けて、のらりくらりと躱され続けておってな」


 まぁ、未開拓の森の中なんざ、兵隊が進軍するにゃあ最悪の場所だしな。


「なので、()()の出来る人材を欲しておったのも確かでな。何処かに魔物の増加に危機感のある、前途有望で尚且優秀な若者でも居れば良いと思うのだが、トールよ、オヌシに心当りなど無いか?」


 そう来るか!! 確かに街道付近の魔物の増加に対しての注意喚起を提言したけどもさ!


 こん畜生!! 自業自得だった!!

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