一足飛びができるのも才能が必要なんだわ
「少し、何かを掴めたと思いますな」
コボルトの村に戻ると、グレッソチューンがそう言った。
どうやら、気持ち的に川を超えたおかげで、前進できたらしいな。
「オレも、何か掴めそうです……」
止めれ、俺を熱っぽい視線で見るなゲーグレイッツァ、それは超えちゃいけない一線だ。
……正直、すまんと思ってる。
大森林に行っていたんで、コボルトの村に来るのも久しぶりだわ。
あの後、ゲーグレイッツァは、特に何かできる様には成らなかった。今言った様に、「何か掴めそう」とは言っているが、こっちを見ながらなんで、多分それは違う物だ。
やっぱり、本番の中で突然閃いてなんてのは物語の中でも無けりゃ早々無い様だわ。
俺の場合は、それまでやっていた事をさらに推し進めてって感じだからまたちょっと話が違うしな。
まぁ、基礎に成る物が、元々有ったって事さね。
そんなこんなで、特に得られる者が無かったって言うか、下手すりゃ何か捨てかねん修行の旅だった訳だが、グレッソチューンの方はそれなりに充実した時間を過ごせたらしいな。
何と言うか、出力が増えた。そんな感じの雰囲気がする。
あれだな、変則気味に結果を求めるんじゃなくて、基礎が大事だってこったな。
「そうそう、オレだけじゃなく、ティネッツエも、何か掴めた様ですぞ?」
「へえ?」
なんか、俺と顔を合わせてくれなくなってたんだが、それでもグレッソチューンと一緒に特訓を続けてくれてたって事かね? まぁ、生真面目そうな娘だったしな。それで、何かを掴んでくれてたってんなら上々だな。
「お前が、何か教えててくれたのか?」
「いえ、それなんですがな……」
うん? 何じゃろか? 俺が首をかしげると、唐突に後ろから抱きすくめられた。うお!! 気配を感じんかった!? って。
「ラミアー!!」
微笑みながら俺に頬ずりする。ラミアー。もしかして今のは【短距離瞬間移動】か!?
何かラミアーの顔見て頬を染めてたグレッソチューンが、ハッとした顔で、口を開く。
いや、ラミアー、絶世の美少女だとは思うけど、オッサンが頬赤らめて見惚れるとか、事案以外ナニモノでもないと思うの。
「ああ、良かった。やっぱりオジキの身内の方でしたか」
いや、何でコボルトの村に居るん? 前にココに来ようとした時には、教会に姿が見えんかったんで、これ幸いと置いて来てたんだが……
「数日前、突然現れて『とーる、何処?』と言って来て……オジキも知ってる通り、ここは秘密に成っててるんですが、何故かこの方を追い出そうって言う気にはなれなくて、こっちも困惑してたんですが……」
チラチラとラミアー見ながら言われても説得力が……
ああ、成程、ラミアーの【魅了の魔眼】か。それでコボルトの村に居座ってたと。あや、グレッソチューンの反応見てると、それだけが理由だとは思えんのじゃが?
前も思ったが、この世界、ロリコン率高くね?
えー……いや、確かに黙って離れたのは俺だと思うが、コボルトの村にまで探しに来るかね。
しばらく要らない位にプラーナは喰らわせてあったと思うんじゃが? 足りんくなったかね?
「あー!! ラミねーさま!! だ、だめですよ!! とーるさまに、おこられちゃう!!」
怒んないよ? 相変わらずティネッツエは、俺が怖いんか。てか、ラミ姉様?
ラミアーの方を見ると、何かドヤ顔で胸張った。
……もしかして、そう言う事か?
グレッソチューンの方を見ると、何とも言えない表情で頷く。
つまり、ティネッツエちゃんに何かを教えたのはグレッソチューンじゃなくて、ラミアーって事? でもソイツ超能力者だぞ? なんの関係が……いや、【魅了の魔眼】は【精神支配】に近い物はあるが、まさか、そこから何かを感じ取ったのか!?
凄いなティネッツエちゃん。てか、俺の周りの幼女、天才多くね?
「なぁ、ティネッツエちゃん、能力の強化とか感覚は摑めたのかね?」
「ひぅ! ひゃ、ひゃい!! ラミねーさまと、とっくんしました!!」
うわぁ、緊張具合が前以上やん。これ、俺が直接関わんない方が良いかねぇ。
って! ラミアー!? 何故つねる!!




