帰って来たぜ我がホーム
「どっか行く度に女の子増やして来るよねトール」
「ぐっ……そんな事はないと思うぞ、マァム。ほら、エクスシーアとかグレッソチューンとかゲーグレイッツァとか女の子じゃないし!!」
「ふ~ん」
半目のマァムとルールールーの圧力に、思わず顔をそむける。
纏わり付いて来るラミアーに対抗するかのようにイブとファティマとジャンヌが引っ付いて来て、ミカとバラキがすり寄って来る。
うん、分かってる。とてもじゃないが、今の俺の格好は、説得力なんてもの、微塵もないなんて事くらい。
「まぁ、ここ、トールの作った拠点なんだから、どんだけ女連れ込もうが勝手だとは思うけどさ」
うおお! 言葉に棘が有りまくる!!
そんな感じで、言葉の毒に見悶えてたんだが、マァムは苦笑すると大きく溜息を吐いた。
「まぁ、あたしも連れて来られた口だから、あまり強く言えないけどね、面倒見るなら、最後まで見なさいよね」
「ありがとう、分かってるよ。責任は取るさね、マァム、お前も含めてな」
「な!! 子供が生言うな!!」
照れ隠しなのか叩いて来た手をサラッと避ける。いや、なんか勘違いしてねぇか? 責任を持ってちゃんと途中で放り出さずに、拠店旅立つまで養うって意味だからな?
「女の敵ですね」
ルールールーに毒づかれたが? なぁ、もっと常識的に考えようぜ? 俺、3歳児よ? 何で皆、そっちの意味でとらえるかな?
イブも顔を赤くしてモジモジし始めるし!!
「トールちゃんがそこまで言うなら……」
そして頬染めていやんいやん言ってるキャル、いつからそこに居た。
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見つけた遺跡は機能停止している様に見せかけて、登録しているメンバー以外には反応しない様にして貰った。
これに関しちゃ、色々と思惑が有ってだがね。
どの道、グラスには話を通すつもりでいる。元々そう言う事で話が進んでたって事でもあるしな。
まぁ、今回遺跡を探してたのだって念の為って側面が強かった。正直な所、あっても無くても構わんかったんよ。
ただ、発見しちまった物はしちまったそでしょうがないし、なら、できるだけ公爵に説明しておいたカバーストーリーに寄せておいた方が良いだろう。そっちでは俺が迷い込んだのは“死んだ遺跡”って話にしてあるしな。
ギルドにも『調べたが特に何もなかった』って話で通してある。ぶっちゃけ、稼働してる遺跡なら兎も角、稼働してない遺跡なんてお宝が出て来なけりゃ、ただの洞窟と変わりなんて無いんで、別に領主にまで報告する義務はないんだとか。
特に今回、発見したって事にしてる場所、大森林のかなり深い所だし、態々騎士団やら兵士に確認に行かせても、金が掛るだけで何の旨味も無いしな。まぁ、今回のコレは嘘だけんども。
結構世界のあちこちに繋がってるっぽい“扉”のある遺跡だから、あんま権力者に渡したくないって思ってるのがホントの所。
絶対、他国への侵攻とか考えるだろ。為政者なら。
もっとも、これ公爵に差し出したら、俺が世界の色んな場所に、自由に旅に行けなくなるかもって思惑もあるがね。
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「どうです!! 師匠!!」
久しぶりだなドヤ顔マトスン。俺の目の前には密封されたビンがあった。
色々とヒントは出してたけど、自力でここまでできる様に成ったんか。
この世界、物を運ぶ時に使うのは基本、木箱や樽。物によっちゃ瓶って事もあるが、割れやすいって事も有って、扱いは慎重にになるし、蓋を閉めても決して密封する事は出来ない。
要は、何にせよあまり日持ちをさせる事が出来なかった訳だ。
エクスシーア商会では、冷蔵車を開発をしていた事も有って普通よりも日持ちさせる事は出来たが、それでも移動に掛る日数とか考えれば、あまりに心許ない所ではあった。
だが、密封できるとなれば、話は変わって来る。
瓶詰めする前に、キッチリ滅菌をしておけば、その日数は飛躍的に伸びる事になるからな。
長距離長時間の移動となると、現状、これ以上の最適解は無いだろう。
今後、ボーキサイトを発見して、アルミニュウムを精製できる様に成ればまた違って来るだろうが、それでも、この密封ビンは、歴史を変える程の発明である事には変わりない。
これを作るにあたっては、マトスンの才能もあるが、ドワーフの力も必要だったし、彼等の協力を仰いだのはエクスシーアなんだとか。
まったく、俺の知らん間にどんどん進んで行きやがるな。
これなら、次の段階に行けるか?
「なぁ、マトスン。真空断熱って物を知ってるか?」
「!! 師匠、その話、もっと詳しく!!」
さあ、マトスン、お前はこれを何処まで飛躍させる事が出来る?




