彼女達はお怒りの様です
『【不覚】まさが、動力修復中にあんな辱めを受けるとは!!』
『【屈辱】旧式の魔力動力炉を交換もせず、なんで触接で魔力を溜める様な方式にしたのか理解不能なのデス!!』
おおう、助け出された聖武器二人が荒らぶってらっしゃる。
動力室のラミアーにやり過ぎない様に言った後、バチンコバチンコやりあってる後ろで、ファティマ達に事情聴取をしてみたんじゃよ。
まぁ、大体は予想通り。動力復旧をしていたら、突然魔力を吸い取られ動けなくなった所を捕らわれた、と。
ここで問題だったのは、ファティマ達がロボットだった事らしいんよ。人間だったら、ギリギリまで魔力を吸い取られるだけで済んだはずなんだが、ファティマ達はあくまで“物”として扱われたせいで、魔力を吸い取られた挙句、魔力電池代わりとして取り込まれちまったらしい。
ギリギリまで吸い取るってのも何だと思うが、人の物を勝手に部品にするて、ここの命令を構築した奴、倫理観がブッ飛んでね?
それは兎も角、これが、旧式の動力炉じゃ無かったら、そして、おそらく施設の人間に“魔改造”されてなかったら起こり得なかった事なんだと。
つまり、当時の最新式の動力炉であれば、空気中やら、周囲の土地からでも魔力を生成、増幅し、エネルギーと出来たんだが、旧式の動力炉は、魔力電池に手動で魔力を注入しないといけない仕様なんだそうな。
で、なら動力炉を交換すれば良いだけなんだろうが、何を考えてたのか、ここの研究員は、むしろ旧動力炉に自動で魔力供給をする……それも物理的暴力でって装置を追加しちまったらしい。
それが、この触手配線。
いや、シリンダー装置も同じ様な仕様な事を考えると、単なる趣味なんじゃ?
もしかしてあれか? ここのサンプルって生体電池も兼ねてたのか? で、それ等サンプルの命も尽きたんでエネルギー供給がされなくなった……とか?
うん、死んでるからサンプルになったんじゃなくて、生きてる時から生体電池兼サンプルだって事なら、ラミアーが囚われていた事も、脱出した途端に襲って来たのも理解できるが。
むしろ、ラミアーは、良く生き残れたな。あれか? 仮死状態になってて無事だった的な? 真相は分からんが。
だが、ラミアーが嬉々として触手を引きちぎってる事に対しての心情は理解できる気がする。相当ストレスをため込んでたんじゃろなぁ。
心情は分かりはするが、全部壊させる訳にも行かんのだよ。オファニムの居場所、吐かせんといかんからな。
それよりもおまいら、その説明だと、おまいらも実は魔力を注入せんでも活動出来るって事に成らんか?
おまいらが旧式だったなら兎も角。
『『【動揺】ギクゥ!! (デスゥ)』』
よし、おまいら後でOHANASHIな?
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自分達に行われた凶行について、ファティマ達は相当ご立腹だったらしく、色々と問答無用な感じで施設のシステムを乗っ取って行ったわ。
特にジャンヌ、魔力接続とか何やらで、自身とシステムを直接繋いで書換えてるとかで、最初は警告音やらエラーやらで喧しかったのに、あっという間に静かに成ったんよ。
何でも、魔法式の構築とシステム命令の構築は、似た様な物だとかなんとか。
『【得意】ウィザードは伊達じゃないデスゥ!!』
そのプログラムを操る方の“ウィザード”は、サイバーパンクでの意味じゃったはずじゃが!?
まぁ、そのおかげでこの施設の全容は判明したんじゃがね。
当時の生物の生態なんかを解明するための施設だったらしい。ここから“扉”を使っていけるのも、熱帯雨林だったり、涼し気な高地だったりと言った場所だったらしいんやけど、件の隕石衝突で軒並み“扉”は使用不可能になってたわ。
まぁ、それでもいくつかは使える様に成ったんで、後々冒険に行こうと思ってる訳だ。それも、世界を股に掛けられるって言うね。今からワクワクが止まらない。
結果として密入国する事になるが、それは“扉”の性質上、仕方ない事じゃんね。
こんな能天気な話ができるのも、オファニムが見つかってるからなんだけどな。俺の思ってた通り、生体電池代わりにシリンダー装置に押し込まれかかってたわ。
まぁ、あの時は俺と一緒にラミアーにエネルギー吸われて、ほぼ空っぽの状態だったからな。それでも、判定は魔法生物って事で、一応のサンプルとして分類されたっぽい。
いや、ホント、無事で良かった。
さて、現状どうなってるかなんだが……
「何時でも良いぞ?」
『【了解】では、お願いします。マスター』
『【不満】ムウ、ボクが変換炉代わりになりたかったのにデス』
GOが出たんで、ファティマにプラーナを注入する。彼女が魔力変換炉の代わりに成って、施設の魔力を溜める装置に魔力を注ぎ込んで行く。
いや、俺ってプラーナしか使えんじゃん? それってつまり魔力が無いって事な訳で、誰かに変換してもらわにゃ、装置の方に魔力を溜められない手事でもある。うん、魔力皆無だからな、俺。
それでも保有プラーナ量は、魔力変換時のロスを考慮しても、ここにいるメンバーの中で飛び抜けて多い。
ジャンヌの言う所では、イブよりも多いんだそうな。それはちょっと予想外だったな。
『【説明】プラーナを固体化できる程に凝縮した挙句に、それを全身に纏わせられるなんて、オーナー以外早々見ないデス』
あ、うん。そうか。
そう言う事らしい。
まぁ、今回活躍らしい活躍が出来んかったからな。最後の最後でお役に立てて本望ですとも。
そんな作業をしている俺の後姿を、イブが凝視する。すんませんイブさん、視線が痛いです。
うん、分かってる。危険だからと同行を拒否したのに、戻って来てみたら、何かメンバー増えてるんだもんね、言いたい事があるのは分かりますとも、イタイホドニ。
ただ、ラミアーの事に関しちゃ、色々とイレギュラーだったのは確かなんよ。なんで、後で言い訳だけはさせて下さい。
ホント、お願いします。




