そう言えばファンタジーな世界観の惑星に行くSFとか多かったよね
ラミアーを抱きかかえながら壁を走る。こうなると、隔壁が上がってるのは助かるっちゃあ助かるよな。
シリンダー装置の方は、一先ず置き去りにする方向で。
俺の加速にも慣れたのか、ラミアーは随分と楽しそうに俺に頬ずりをしている。いや、もう、何だこの状況。
いくら何でも懐き過ぎじゃろ。眉根を寄せ、ラミアーを見るが、彼女はキョトンとした表情で俺を見る。うん、何の迷いもない信頼しきった表情。
【瞳術】を発動しないってだけでも有難いか。うん。そう思う事にしよう。
本当はラミアーの【瞬間移動】で離脱出来たら良かったんだが、どうやらエラいエネルギーを食うらしく、それで脱出できないか? と訊ねると、悲しい顔でしょんぼりしちまった。
そうか、バリアー張り続けながら【念動力】で移動するよりも燃費が悪いのか。なら、仕方ないな、うん。
成程、あの【短距離瞬間移動】以降、【瞳術】以外使わなかったのはその為か。ラミアーとしても、最後の賭けだったんだなぁ。今の状況が勝った結果なのか負けた結果なのかは置いといて。
まぁ。それはそれとして、一先ずファティマ達を探すべく動力源の有るであろう部屋を目指す。隔壁が上がった時点でループは停止したんだと思う。ってか、多分扉に付随してたんじゃないかね? この様子を見るに。
避難させようって状況でループとかしたら意味ないもんな。
さて、当然だが、遺跡については俺なんかよりファティマ達の方がよっぽど詳しい。この遺跡を掌握するとなれば、彼女達の力は必須だ。
確かに、未だに戻って来て居ない事に対しては不安があるが、行き先について、全く手掛かりの無いオファニムに比べれば、まだ手掛かりの有る二人を探す方が良いだろう。
これで、二人ともに行方知れずだったら、どうするかね。最終手段、『殴って止める』が発動しなけりゃ良いんだがな。
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詳しい配置とか分からんので、とにかく奥を目指す。隔壁解放されて分かったんだが、サンプルが保存してあった部屋は合計で12部屋あったわ。
いや、それでも結構多いよな。当時の生き物全てと考えれば圧倒的に少ないが、どうも、この施設で管理されてたサンプルは中型程度の陸上生物がメインだったらしく、鳥や魚と言った生き物は居なかったぽい。いや、シャッター降ろしてこっちに襲い掛かって来てる奴とか居るから全部を確認した訳じゃねぇんだけんどもよ。
他を確認し、おそらくここだろうって、一際分厚そうな鉄扉の前に立つ。
「いい加減、俺にまとわりついてゴロゴロするのは、止めてくれんか? ラミアー……」
そんな、何で? みたいな顔されてもな。
ファティマとジャンヌが戻っていない。多分入れ違ったってぇ事もないだろう。
なら確実に、“何か”がある筈だ。
普通の感性してたら動力部で、ドンパチする様な事、想定すること自体が間違ってるんだろうが、古代文明人、中々のゲーム脳っぽい所がチラホラ見えるんだよな。
なんで、動力部に迎撃装置とか付けてそうって言うかさ。
杞憂であれば良いんだが、もしそうだった場合、こう纏わり付かれてるとね。
ファティマ達を助ける為にも全力が出せる様にしときたいしさ。
そんな事をツラツラ説明して見たんだが、何か首捻ってるのが、理解してんだかしてねぇんだか。
戦ってる場所に居ても足手纏いにはならん位のポテンシャルはあるとは思うんだが、如何せん思考が読めんのだよなこの娘。
とか考えてたら、突然ひゅるんと鉄扉の前へ赴くと、【念動力】でバンッ!! と、扉を吹き飛ばした。
って、何やってんの!?
むこう側も一瞬反応できなかったのか、ピタリと止まって居たんじゃが、ハッとした様にウニュウニュ配線が襲って来る。分かってた! こうなる事は分かってた!! 当たって欲しくない予想の方が当たるのは良くある事だからな!!
そんな配線攻撃、ラミアーは【超能力防壁】で弾き返しつつ、【念動力】で引きちぎる。
当たる瞬間だけ障壁が光るエフェクト、何かパリパリと電流じみた物を迸らせながら襲って来る配線。
ちょ、何かここだけジャンル違くね? 何故に超能力大戦!?
四方八方からの配線を涼しい顔で弾き引きちぎる。向かって来てる配線と言うか触手と言うかだけを迎撃してる所を見れば、おそらく俺の言ってた事は理解してるっぽい。
無尽蔵とも思える物量だが、それでも引きちぎられた配線の分だけ視界が開ける。
「ファティマ!! ジャンヌ!!」
半ば取り込まれたかの様な感じで配線に囚われてる聖武器の二人が奥の壁に見えた。ラミアーが俺をチラリと見る。
「あ!! 仲間!! 俺の仲間だ!! あの……ゴーレムは!!」
ロボットで伝わるかどうか分からなかったんで、ゴーレムだと言ったが、どうやらそれで正解だった様だ。
両手をクロスさせる様なポーズで、髪の毛逆立てて、【念動力】の出力を上げたらしいラミアーの力で、ファティマとジャンヌに絡まってた配線が吹き飛ぶ。
何か80年代SFアニメでも見てる様な気分になったわ。こう、力使うとキュルルロロロロロ……とかって効果音が聞こえてきそうな。
あー、凄いやね。ここに来て遠距離攻撃の有用性をまざまざと見せつけられた様な気分だわ。
……とか言ってる場合じゃねぇ!!
俺が、落下するファティマ達を助けようと足に力を籠め……る前に、やはり【念動力】で拾い上げたラミアーが、そのまま二人をこっちに寄越す。
うん、有難う。未だバチバチやり合ってるラミアーに感謝を告げると、嬉しそうにはにかんだ。
何じゃろね? 思っててより色々と状況が上手く行ってるのは嬉しいんじゃが、今、最っ高に、俺、いらない子じゃね?




