潜入任務
「二人の捜索には、俺1人で行く」
「トール、さま!!」
「ヒャンヒャン!!」
「クーンクーン!!」
「アオン?」
「オジキ!!」
「アニキ!!」
俺の言葉に、皆が慌てた様に集まった。
いや、色々考えたんだが、聖武器二人のを探しに行くだけなら、多分1人の方が良い。
行く場所は分かってるんだから、特に探し回らなきゃならんって事は無いし、だったら、俺1人の方が対応しやすいからな。多分荒事に成ると思うし。
あの二人が連絡もつかない状況に成ってる事を考えると、特に戦闘力に乏しいコボルト達は残った方が良いだろうな。それは、大火力があっても、接近戦は出来ないイブも同じ事だ。
いや、むしろ遺跡内は、高火力だと却って危ないだろう。戦闘を前提にした宝物庫の様な場所以外だとな。宝物庫が戦闘前提に成ってるって時点でどうかとも思うんだがな。
それはさて置き、特に、これから行く所は、動力源が有るであろう場所だ。そんな所で大火力の魔法なんざ使って見ろ、弾薬庫で火遊びをするが如くだわ。
そうなると、三人は残って貰うのが最善だし、犬達には三人を守って貰うのが好ましい。
ニーズヘッグを退治して、森ん中が落ち着いて来たとは言え、まだまだ魔物の出現数は多い。ミカ達が三人を守ってくれているとなれば、俺も安心してファティマ達を探しに行けるからな。
いや、俺にした所でバラキやミカ、ウリ何かが一緒に行ってくれるなら、心強いってのは実際そうなんだが、場所が場所だろ? 前世の動力室みたいな所とか、変電室みたいなところだと、犬達の、特にウリの空中機動とか逆に危ないんよな。
下手な所足場にしたら、本人も施設も危険が危ないんだわ。
そんな事をツラツラ説明して、ワシャって、撫で倒して腰砕けにした後、ダッシュで捜索に向かった。
******
事前に場所は聞いていた事も有って、動力室は直ぐに分かった。
室内から直接動力室には行けず、一旦遺跡の外回りへ出た後、再び外部階段を使って地下へと向かう。
道中、特にさっき探索した時と変わらん様に感じた。
具体的に言うと、特に動力とか電源が入った様には感じなかった。
どう言う事だ? ファティマとジャンヌは確かにエネルギー源の確認に向かったんだよな? どこかで見落としたか? それともただ時間が掛ってただけなのか? だとしても念話が通じないってのはどう言う理屈だ?
そんな事を考えながら、3階分はありそうな外部階段を下りて行く。
どうでも良い事だけど、外部階段を掘り出すのが地味に大変だったわ。
俺のエクステンドドリルだと、斜め下の直線に掘り進む事は出来ても、階段自体はその場所を探しながら手掘りせんと、出て来んからな。
かと言って階段を出さんと、ほぼ滑り台状態なんよ。
危険個所は是正しつつ、安全第一で! ってな。
さっきは二人を見送って戻った、両開きの鉄扉のハンドルを回し押し開ける。入ってすぐに動力源があるのかと思えばそうでも無かった。
打ちっぱなしのコンクリートを思わせる殺風景な廊下を進み、突き当りの鉄扉を更に押し開ける。
「ここに来てマッドな研究室かよ」
思わず口の端がヒクヒクと引き攣るのを感じた。
バスケットコート二つ分はありそうな広間に等間隔に設置されたシリンダー状のガラス管には、やけに真っ白な動物達がシリンダー装置1つに付き1体封じられていて、薄っすらと光る照明に照らされる、半開きになった目と口の様子から、まるでホルマリン漬けの生物サンプルを想起させられた。
床には、各シリンダー装置から伸びた配線が無造作に伸びている。その様子は、密林の木の根の様にも見えた。
「……ファティマもジャンヌも居ない、か」
この先じゃろか? そう思い歩みを進める。生物サンプルの森、と言うには整然としたシリンダー装置の間を奥へ奥へと歩いて行く。入口と同じ様な鉄扉。……え? まだ奥があるのか? いや、有るだろ。そもそも動力源を確認しに二人は行ったんだ。ここに動力源的な何かなんざ無かったじゃねぇか。
何か、根本的な事を失念しとったわ。思った以上に目の前の光景に圧倒されてたっポイな。気をつけんと。
俺は深呼吸をしてから鉄扉を押し開けた。
………………
…………
……
って、おい!! さっきと全く同じような光景。え? コピペ? コピペか? 手抜きなんか?
同じ様に整然と設置されてる装置、中に居るサンプルも似た様な感じ。そして、その先に在る鉄扉も同じ様な感じ。
そして、その鉄扉を押し開けた先の光景も……
あるうぇ? コレ、ただ時間がかかってる説濃厚!?
いや、この規模の同じ様な部屋が連なってるだけでも脅威っちゃぁ脅威なんだけどもよ。そもそもここ、何の施設? 動力源の部屋は?
既に20近い部屋を通り抜けてるんじゃが?
上の建物はこんなに広く無かったよな!!
いったいどうなってるんだ!?




