遺跡探索は冒険者の重要な仕事
崖下の、表から見え辛くなっている場所に当たりを付ける。ここなら外から雨も入ら無さそうだな。
「オジキ!! おいて行くなんてひどいじゃないですか!!」
「そうだぜアニキ!!」
「俺の目の前でケンカなんざ始める輩の方がもっと酷い」
ピシャリと言い放った言葉で、コボルトズが撃沈する。自己主張は時に美徳だが、それだけに時と場合は考えて貰いたい所だ。
「ケルブ!」
そう呼ぶと、『分かってます』とばかりに近付いて来たケルブがガシャリと開き、俺はその中に居たオファニムを纏った。
プラーナの体内循環を高め、スリットを解放する。ジャキン!! と言う音と共に活性化したプラーナが噴き出し、右手にエクステンドした。そしてそれの密度をさらに高め、加速させる。
ギュルギュルと言う音が響き、エクステンドドリルの赤色の光が輝きを増す。そして俺は、それを少しづつ地面に突き入れた。思い切り叩き込んでクレーター作る訳にゃいかんからな。
偽装工作しに来てんのに、その前提を壊すとかアホだし。
螺旋の流れに乗って、土砂が後方へと吹き飛んで行く。ガブリがめっさ穴掘りをやりたそうにしてるが、入り口だけはかんべんな。外から見つかりにくい様に偽装せにゃならんのだわ。
まぁここだけ終わりゃ、交代したるからよ。それまで我慢してくれ。
慎重にやってるとは言え、通常ではありえないスピードで穴が掘られて行く。その様子をコボルトズは唖然とした表情で見ていたわ。
まぁ、古代文明時は兎も角、現在、ドリルや掘削機何て物があるとも思えんから、当たり前なのかも知れんがね。
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ガブリや他の犬達と戯れながら掘り進める事半日ほど。ついに遺跡へと突き当たった。
他の遺跡と同じ様な磨き上げられた石壁と、わざとざらつきを残した床。照明はついていないって事は、休眠してるか管理システムが死んでるのか。
取り敢えず、生き物の気配は感じないが、遺跡内の“扉”って、いわゆる転移装置だから、現状居なくても、後々出てくる可能性も微レ存。
基本、遺跡内のシステムが外に出る事は無いが、何らかのエラーで出てくる可能性も無くはないから、一通りは確認しておかなきゃなぁ。
それはそれとして。
「グレッソチューン、ゲーグレイッツァ、助かった有難う」
「いえ、いえ、オジキの為ならば!!」
「アニキの役に立ったなら、嬉しいぜ!!」
いや、ホント、コイツ等居なかったら、どんだけ時間かかったか。直で遺跡を嗅ぎ当てるとか、ホントチートだよな。
同じ様な感じで、地中の鉱石とかを嗅ぎ当てられるって言うなら、権力者ならぜひとも欲しいと望む能力だろうさね。
『【報告】やはり、この遺跡のシステムは完全に停止している様です』
『【補足】稼働してた痕跡はあるデス。多分エネルギー供給が絶たれたんで停止したデス』
「って事は、エネルギーの供給さえすれば、復活するって事だな?」
『【肯定】イエス。マスター』
簡単に遺跡内部の様子を調べて来たファティマ達を迎える。ダンジョンってのはある意味資源だからな。古代文明の知識や遺産なんて物が埋まってる可能性がある。
そうでなくても、古代遺跡ですよ古代遺跡!! それも超文明の!! そんなん興奮するなって方が無理だわ。
もしかすれば、ここに多脚多砲塔戦車みたいな浪漫の塊が有るかも知れんのや!! いやぁ、胸が高まりますなぁ。
一応の話、グラスに見いだされた俺は、黒鎧を発見した遺跡で修業したって設定にする兼ね合いもあるんで、この遺跡の中は確認せにゃいけんのよ。
取り敢えず、遺跡停止状態で探索した後、稼働させて見てか? いや、エネルギー供給の方式を確認してないんで、稼働させられるかどうかは分からんがね。
もし核融合炉とか使ってるとか言われたら、お手上げな上に、むしろ動かしたくなくなるんだがね。普通の人間は、クラシックカーの趣味が高じても核融合動力のバイクとか整備なんてできんのだわ。てか、あのバイク、街のガソリンスタンドで給油とかしてたよな? 永遠の謎だわ。
ああ、思考が逸れた。
少なくとも、動いて無い状態で、内部は一通り確認せんといかん。で、ないと、5年間もここで修業してたって言う説得力がないからな。
『【期待】搭乗型ロボが有ると良いのですが』
『【要望】部品の一部でもあれば上々デス』
うん、その希望に沿うものが有れば良いよね。黒鎧を見つけ出した設定なんで、搭乗型ロボがあれば、カバーストーリーの補強にもなるしな!!
決して聖武器’Sが、将来、搭乗型のロボに成りたいって言う、自分達の欲望を駄々洩れにさせてるって訳じゃないと信じたい!!
と、イブが俺の服の袖口をクイクイと引っ張る。
「トール、さま、まだ、いっしょ、に、たんさく、できる?」
上目使いのイブに、ほっこりする。癒しはここに有った!!




