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これも外交努力なんだろう

「なぁトールよ、この伯父さんにもちょろっとで良いから教えてはくれんか?」

「は?」


 いや、何のことだってばよ。突然ギルドから王命での登城を命じられて、おっとり刀で駆けつけてみれば、通された応接室で国王からそんな事を言われた訳だ。俺のこの反応も分からなくはないだろう。

 第一、王都に来てからの俺は問題になる様な事なんざ一切してないってか、冒険者の活動そのものをしてない。

 商会の方の用事を待ってるだけだからな。精々、犬達と王都の近くで遊んでたくらいだ……あれが問題になったのか? いや、まさか。無いだろう、流石に……


 いやいや、それを差し引いても、門番から即時で通されての最速での謁見。よっぽど何か重要な問題でも起こったのかと思うだろう。だが、待っていたのはこれだ。しかも教えてくれって、何をだ? てか、それだけの為に王命まで使って俺を呼び出したのか?

 暇なのか? このオッサン。


「いや、何の話よ」

「とぼけるでない。話は聞き及んでおるぞ? ルーガルー翁から」


 またあのジジイかよ!!


 あのジジイが係わってる事って言ったら商会関係か? だが、商会関係の事であるなら、俺が大して関わってる訳じゃないって事も分かってるはずだ。

 なら、何を?


「其方、新たなお菓子を作ったそうではないか」

「そっちかよ!!」


 いや、今この世界に現存しているお菓子とは違うかもしれんが、そもそものレシピがファティマからもたらされている以上、昔はこの世界にもあったお菓子なはずだ……あ、それでも数百年前の話か。

 その間に技術が逸失したってぇ事か?

 まぁ、古代文明が神話の如く語られている事を考えれば、技術体系が後世に残らない様な“何”かが有ったのだろう事は想像に難くない。


 いや、今はそんな考察をしている場合じゃなかったな。


「ありゃ、俺が作ったってぇ訳じゃないが?」

「しかし、其方のゴーレムが作ったと聞き及んで居るが?」


 ファティマが聖武器だって事を知らないのか? それとも知っていて……ああ、そう言う事か。そもそも、そんな区別をしてるのは俺だけなのか。


 俺はファティマ達をロボットだと思っているが、そもそもゴーレム自体、遺跡から発掘されているものと、現在の技術で作られている物との二種類がある。

 この世界の常識的には人型の自立物は全てゴーレムって事なんだろう。ゴーレムの中には、簡単な受け答えをする者もいるらしいし、武器形態だったファティマには驚かれても、人型では驚かれなくなったのもその辺りが理由かもしれない。


 俺の認識では『人型にも成れる武器』だが、こっちの住人的には『武器にも成れるゴーレム』と言う認識なんだろう。

 武器であれば自立思考をすると驚かれるが、ゴーレムならそう言う事もあるって感じなんだろうな。


 まぁ、それはどうでも良いか。


「つまりはレシピが欲しいと?」

「そう言う事だ、礼は弾むぞ?」


 ……この反応、もしかして、またこれ「俺、何かやっちゃいました?」懸案じゃろか?

 精油の時も、あれが秘伝レベルの技術だとか思わんかったしな。

 前世ではレシピって、ネットでいくらでも検索できる様なものだったし、料理学校なんて物も有ったから、むしろ、「私の考えた料理法見て~」位の勢いだったけどな。


「……俺はレシピの重要性って奴が今一、分かってないんだが、それほど重要なのか?」

「ほう? まぁ、可愛い甥っ子の為だ、余が教授してやろう」


 ニンマリと笑う国王。いや、甥っ子じゃねぇだろ? 親戚かも知れんが。

 確か国王と公爵がまた従兄弟くらいの間柄じゃなかったか? よく覚えてないが。


 てか、ちょっとファティマに確認するか。えっと? ニョインニョイン、ファティマ応答できるか?


『【困惑】何でしょうか? その変な擬音は。いつも念話をする時そんな物入れてませんでしたよね? マスター』


 へ、変か? そうか。うん。そう言われればそんな気がする。正直すまんかった。


『【不要】いえ、構いません。それで、何でしょう?』


 ああ、国王がケーキのレシピを知りたいって言うんだが、教えてしまって構わんか?


『【肯定】はい、構いませんが……確かマスター、今日は王命での登城でしたよね? それで何故そんな話に? まさかとは思いますが、そんな事の為に呼び出されたのですか? この国の王は暇なのですか?』


 うん、俺も同じこと思った。でも、まぁ、結構重要な案件だったらしいぞ? 今国王、偉い勢いでレシピの重要性を俺に説明してるし。何か、“食事”って物が、外交上でも重要なカードに成りえるらしいわ。


 ……ああ、そう言う事ね。確かに自国の特産品使った料理が有っったとすりゃ、その特産品の輸入なんかで上に立てるって訳だもんな。

 特に農産物は、風土気候で育成に大きな差が出るし、輸入に頼らなけりゃならんって場面は絶対に出るしな。

 そうでなくても、例えばよその国の特産品を使ったレシピが有ったとして、それをカードに使えば、相手に恩を着せる事も出来るだろう。


 先ず第一に、この世界、食べる物の種類ってのがそう多くない。例えば麦が不作だった年とかに、ジャガイモやら里芋を美味しく食べられるレシピなんかがあれば、餓死する人間の数も抑えられるだろうさね。


 特に、情報伝達って意味じゃ、この世界、あまり発達しちゃいない。そうなれば、そう言うモノを伝えるのは書に記するか口伝しかない訳だもんな。


『【納得】そう言う意味では教えてしまっても構いませんよ、マスター。私達が使う時は例外にさせて貰えれば』


 ああ、そうだな、独占されるとこっちも使えなくなるのか。気を付けよう。


『【呆然】しかし、何でしょうね?』


 何がだ?


『【説明】こんな情報、【アーカイブ】に接続すれば、いくらでも引き出せますのに……』


 いや、それ、最武器達(おまいら)だけだからな!?

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