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その冒険者の裏の顔

 ニーズヘッグ退治から暫く経った訳だが、なぜ俺は日がな一日サイン漬けなのやら。ニーズヘッグの事は今は経過観察中。なんで、特に手を出す事はない。


「決算が必要な書類が溜まっているのだよ我が君」


 エクスシーアの言葉に溜息を吐く。そう言や俺、商会オーナーだったわ。てか、いつの間に俺の事『我が君』とか呼ぶようになった。エクスシーア。


 何と言うかね、エクスシーア有能過ぎだ。商会が発足して1年も経ってないハズなんだが、貴族向けの化粧品関係も庶民向けの雑貨類もアホみたいに売り上げ右肩上がりで、実は店舗そのものも支店が出来る程になってるんだわ。

 って言いうか、マトスンが思いのままに作ったガラクタを含めた試作品の中から、有用な商品を拾い上げるの上手過ぎなんじゃよ。ギア式の糸車を揚水用のコンベアに転用するとか、キャンピングカー用のキッチンを貴族用の風呂に使用するとか、現物を見てみれば納得できるが、そもそもそうやって使おうって言う発想力がもう。

 本人は過去の宝物庫なんかの資料から類似品を検索して活用してるって言ってるんだが、流石は元宝物庫のガーディアンって所か?


 コイツの有能さはそれだけに留まらなくて、いつの間にかルーガルーのジジイ巻き込んで、公都以外の街にも販路を拡大してやがった。実はこれはルーガルーのジジイから打診された事なんだそうな。

 まぁそれ自体は有り難い事だしな、ルールールー経由で、また、魔人族国のワインでも渡しとくか。

 何でかあのジジイ、俺の前に出てくるの避けていやがるらしいし。


 で、エクスシーアなんだが、その上、製造時に出る騒音なんかのクレームをそのクレームを出しそうな主婦層をこっちの製造に抱き込む事で華麗に回避してみた剛腕っぷりを発揮しまくって、何かドワーフの鍛冶屋連中も雇ってやがったよ。

 香水の噴霧器を作ったりその入れ物部分のガラス器作ったり。


 そう言や作らせてたなぁマトスンに色々。


 元々、ガラスって高温に耐えられる炉が無いと作れないから、ドワーフの協力が必須だったらしい。


「良く、協力を取り付けられたな」


 ドワーフって頑固一徹なイメージで、こんな女性向けのチャラチャラした物には目も向けないってイメージがあったんじゃが?


「我が君のおかげだ」

「?」


 俺がコボルトを味方につけたおかげで、希少な鉱物が手に入る様に成って、ドワーフの歓心を得られたんだそうな。

 それと、元々ドワーフって細かい細工なんかも得意なんで、高級な装飾類は得意だったらしい。う~ん、なんか変な先入観があったなぁ。反省反省。

 そうか、ドワーフか、ミシンとか作れんかね? 足踏み式の。


 いや、それはともかく、商会に俺って必要なんか? もう、エクスシーアが居れば良いんじゃね?

 ガキ達も手を離れて来たし、そろそろ見聞を広める旅とかもしたいんじゃがなぁ。


「余計な事は考えなくて良いのでサインをして貰えるか? 我が君」

「あ、はい」


 ******


 ファンデーションの新作を持って第二夫人ん所に遊びに行くと、第二夫人、ちょっとお疲れの様子。俺を膝の上に抱いて、ギュッと抱きしめたまま何か俺の旋毛ん所スンスンしてる。何だこれ?

 まぁ、それで落ち着くってのならそれでも良いけどさ。


 今回のファンデーションには聖王国のリティシア嬢から送って貰った商品に成らなかった真珠を粉にしたものと、チタンの粉を配合していてより白く見える……らしい。


 いや、正直良く分からんのよ。確かに今までよりは白っぽいとは思うが、それで「綺麗でしょ?」みたいな事を言われてもさ。

 これメインで配合してるコボルトの人達も実演してくれてるんだが、そもそも俺の中に『白いから綺麗』って概念がないんよ。


 まっちろい肌ってぇと、お白い塗りたくった芸人のイメージしかないしさ。


 そもそも俺がファンデーション作ろうって思ったの、この世界の化粧品の中に所謂、鉱毒が入っていて人体に有害だから、イブが使う物は安全な物を使って欲しいってとこが始まりで、そのついでで、第二夫人とかにも安全な化粧品を勧めてるってだけの話だからなぁ。


 「そんな事では、女性の心は掴めませんよ」ってコボルト代表(グレッソチューン)の奥さんからも言われたが、すまんね、朴念仁で。だが、俺今3歳よ? まぁ、もうじき4歳に成るんだが。


「成程、確かに明る目の肌に成る様ですね」


 第二夫人お付き侍女のジョアンナが、そう感想を漏らす。


「それで、コレの量産はどの程度可能なのですか?」


 鉱石自体は結構安定して採掘されてるんでそっちの方は問題ない。むしろ問題なのは聖王国次第な真珠の方。なので全く同じものと言うのはそれ程大量には作れないだろう。今だってリティシア嬢の厚意で安く売って貰ってるんだ。これ以上我侭を言う訳にも行かないだろう。


「今ある原材料だけだと300個くらいが限界かね。ただ、真珠パウダー抜きなら、それなりの量が作れるはずだ」

「そう、ですか。では、真珠パウダー入りは奥様のお茶会の招待客限定にしましょう。そうすれば特別感も出ますし……」


 そこでしか手に入れられないしなって事でプレミア感が増し、それを提供できるってだけで第二夫人の夜会での発言力も増すらしい。


「だけど、それって、このファンデーションがウケたらって話じゃろ? 大丈夫なんか?」

「ええ、当然です」


 まぁ、俺には良く分からん世界なんで、その辺はジョアンナに任せよう。


「……逆に、坊ちゃまは、この様な重要な事を私に任せてしまって大丈夫なのですか?」

「そりゃまぁ、母上の信頼してる相手だし」


 ジョアンナの献身には頭が下がるし感謝もしてる。俺がそんな風に思うのも筋違いなのかもしれないが。

 そう思っていたら、彼女が顔を伏せてしまった。照れてるんかね?


「トールちゃんって結構女泣かせよね」

「はい?」


 いきなり何さね? ママン。

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