それじゃぁ、行きます
何でも、バフォメットにはベルゼブブに貸しがあるとかで、それを盾に言う事を聞かせられるんだそうな。
ただ、その貸しを使わなくとも今回の件なら言う事を聞かせられるだろうとも言っていたが……
ああ! 暴食のオドが好みなら、ニーズヘッグはそのまんま嗜好にマッチするのか!!
まあ、その件に関してはバフォメットに任しておけば良いか。
それは置いといて、何かファティマとマトスンが何かごそごそやっているんが気になるんよな。あの二人、最初より仲良くなってるんか?
最初は敵対……と言うか、ファティマがマトスンを避けてたんじゃが。
まぁ、マトスンのあの変態っぷりを見れば分からんでもなかったしな。
『【警告】それ以上近付いたら、防衛権を行使しますよ? 個体名【ジャンヌ】が』
『【追従】狙い打つデス~!!』
「いやいや、これは仕方のない事だと思うよ? なるべく近い位置で視界を共有しないと! 間違ってたら大変なんだし!」
勘違いかな? 控えめに言っても鼻の孔膨らませて手をワキワキさせてるマトスンキショイし。
けどまぁ、多少関係改善はなされてると思っておこう。何せ、オファニムとケルブのメンテナンスの一部はマトスンに任せている位だし。
『【苦悩】こんな変態の力を借りねば犬車の改良も出来ない程、この時代の技術水準が低いとは!!』
やっぱり勘違いだったかな?
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バフォメットがベルゼブブを連れてくる日……つまり、ニーズヘッグ討伐の再開日の朝、魔改造されたキャンピングカーを見て、俺はちょっと遠い目に成った。
ねぇねぇ、俺の目にはキャンピングカーに六本脚が生えてるように見えるんじゃが?
『【同意】その通りです!! マスター!! 車体はそのままに、森内部での走破性を上げる事を実現させました!!』
あ、うん。いや、森の中はともかく、街中はコレだと拙くない? ほら、イブやルールールーどころか、オスローやジャン、マァナも呆然としてるし。
何故かドヤ顔をしてるマトスンと……キャルお前もか。てか、いつの間に手を出しやがった。
「二階部分の天井上げると出て来る布製の壁、作ったのアタシなんだよ!」
あ、うん。樹脂を染み込ませて防水性を上げたのか。そうか。何か知らん間に新作が増えてるのな。あー、冒険者のマントとかに転用すれば売れるんじゃないかな?
『【称賛】流石ですマスター。因みに、染み込ませる為の防水樹脂は、個体名【ヴィヴィアン】が提供してくれました』
「提供しましたぁ!!」
ヴィヴィアンいつの間に。まぁ、有り難いが。
犬達の方は興奮して周囲を走り回ったり、匂いを嗅いだりしているわ。
いやいや、現実逃避してる場合じゃなかった。街中の走行はどうするんだって話だよ、この異形は流石にどうよ?
『【自慢】フッフ~。ボク達が、その事を考えてないと思ったデス?』
『【追従】御者席に座って、手綱を握って、プラーナを通してみてください。マスター』
あ、うん。オチが見えた。
そう思いつつも、俺は言われた通りに、プラーナを流す。
ギョゴギギガガ!
そんな稼働音が聞こえたかと思うと、六本の脚が折りたたまれ反転し、車輪が出現する。……いやホント、何処を目指してるんだ? 聖武器。
その内、人型に変形しても驚かねぇと思うわ。
てか、この六本脚、あの時の多脚多砲塔戦車の技術のフィードバックか? 機械類は重いし、即時に軍事転用が可能だった事も有って、リティシアに判断を任せて、ガーディアンの素材以外の現物を持って帰らなかったのに、良く再現できたな。
『【動揺】ギ、ギクッ』
『【狼狽】ヒュ、ヒューデス』
くすねて来やがってたのかおまいら。後でSEKKANな?
『【悲哀】そんなぁ』と言う聖武器’Sの悲鳴を聞き流しながら、俺は調味料なんかをキャンピングカーに積み込んで行った。
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ギルドの前まで行くと、人間態のバフォメットが長身の中性的な美人と連れ立って待っていた。
コイツがベルゼブブか? 何でまた美形なんだろうな。
これで出会った魔族って4人目な訳だが、四分の三が美形だわ。
まぁ、参照してる絶対数が少ないから、必ずって事じゃないとは思うが。
「よう、コイツがベルゼブブか?」
「あ?」
「やめろベル」
「……」
ちょっとハスキーな女性みたいな声だ。やはり美声。その、ベルゼブブと思しき美形が、不機嫌そうにソバージュの長髪を掻き上げる。
ホントにバフォメットに逆らおうとはせんのな。貸しって言ってたが、どんな貸しなんだか。てか、ゴモリーには「阿婆擦れ」とか言ってたが、ベルゼブブは「ベル」呼びか。貸し借りも気には成りはするが、超個人主義のコイツ等がどんな関係なのかって事もちょっと気になるな。
いや、突っつくと藪蛇に成りかねんから、突っつかんが。
簡単な紹介をお互いに済ませて、キャンピングカーに乗り込む。車中泊できる人数は四人で作ってありはするが、この人数で乗ってもまだ余裕はあるな。
さて、ニーズヘッグとの決着、着けに行きましょうかね!!




