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幼児実業家?

 パタンパタンと機を織る音が響く。結構音が大きいのな。

 これ、機織りは機織りで別に場所造った方が良いかね?

 いやまぁ、教会(きょてん)の有る辺り、裏通りなんで住人が多くないっちゃ、多くはないんだが、それでも周囲住人との摩擦は少ない方が良いと思うんだわ。


 とかって話をしてたら、エクスシーアが「ならば、その周囲の人間を機織り事業で雇ってしまおう」とか言ってむしろ巻き込む事で解決しやがったわ。え? なにこの剛腕経営者っぷり。

 取り敢えず、教会に程近い場所に、新しく屋敷を借りて機織り工場に改装した。


 いや、いつの間にかこれだけできる程に資金力上がってたんな。その辺丸投げしてたんで、何か使って良い金増えたな位の認識だったわ。

 道理で、夕飯のおかずが増えてた訳だ。


「トール、アンタに自覚がない様だけど、全部アンタの知識有っての事なんだからね? 第一、御貴族様への伝手なんて、アンタ無しじゃ作れなかったんだから」

「あ、うん」


 マァナにも言われたが、そう言や、貴族の方に流通してんの第二夫人がお茶会とかで喧伝してくれてるからだったわ。有難うママン。

 バロメッツの羊毛を織った布は、『ゴールデンウール』とかって名前が付けられて、高級品として貴族連中に広まってる。

 品質も高く、希少価値も有って、結構な値段が付いてる訳だ。これも、第二夫人とお付きのジョアンナのおかげなんだがね。流石は公爵夫人の侍女。目利きが半端なかった。


 そんな訳で、コボルトとの取引が始まって暫く経ったが、概ね良い感じに回ってるんじゃねぇかと思ってる。

 ボトルネックに成るかと思ってた、村と公都との間の輸送に関しては、何かグレッソチューンとゲーグレイッツァ親子が競う様に志願してきた。

 おまいら、コボルトの村の存在が外にバレるの嫌がってたんじゃねぇのかよ。

 コイツ等の豹変っぷりに、一時期長老連中に、俺が精神支配系の術の使い手じゃねぇかって疑われたわ。

 確かにグレッソチューンの方には【契約の魔術】を掛けさせてもらったが、ゲーグレイッツァの方にはそんなもんは掛けてない。


「フフンッ、オレとオジキは魂で繋がった義兄弟なんだ。下に付いただけのオマエとは違うのだ!」

「ずりいぞオヤジ!! アニキ!! オレにも【契約の魔術】ってのを掛けてくれよ!!」


 うぬぅ、OSHIOKIが効き過ぎたか!?


 コイツ等、俺の事を『オジキ』『アニキ』とか呼ぶんだが、3歳児に対しての対応がそれで良いのかと問い詰めたいんだわ。


 それもまぁ脇に置いといて、一番の問題はコイツ等がコボルトって事だ。そもそもが、権力者に搾取された過去があるんで身を隠してたってのに、態々出てくる事なんて、本末転倒も良い所なんだが?


 ただ、それに関しちゃ、別の意味で嬉しい誤算があった。コイツ等がコボルトだって身バレする最大の要因は、青味がかった肌の色な訳だ。つまり、それさえ隠せれば、後はただの狼使いな訳だな。


 そこで活躍したのがファンデーションだったんだわ。肌色を隠す為なら、これが一番だったしな。

 ただ、鉱物系のファンデーションは、取り敢えず細かく砕かにゃならんのが手間だったんで、荒野の方に新しく専門の小屋を作った。風車小屋付で。荒野はだいたいいつも強めの風が吹いているんで、丁度良いっちゃぁ丁度良かったんよ。

 ファンデーションにする鉱石は、先ず細かく砕いた後、石臼で挽いてから、さらに乳鉢でパウダー状にする。

 その、『砕いて細かく』と『石臼で挽く』までは、風車を使えばできるからな。


 それに、そもそもコボルトの村とは別に出入り口が必要だとか思ってたしな。偽装と言う意味でも。

 なんで、コボルトの村から、この出先の村までは地下で繋いである。勿論、秘密通路仕様で。


 予定では、信頼のおける人間を雇って、パウダー状にまでする仕事をコボルトの女性達と一緒にやって貰うつもりでいる。


 勝手に村を創っちまって良いのかって話もあるが、荒野やら森林やら、開発をするのは領主の仕事でもあるんだが、ぶっちゃけ、開発をしても旨味が無いと思ってる場所に手を付ける領主なんていない。

 なんで、割と開発やら開拓したいなら勝手にやってくれ、そのかわり、上手く行ったら税金は払えよってスタンスのヤツが多いんで、開発するよって届だけだして、税金だけ払えば問題無かったりする。


 今は、その税を俺が立て替えてるってぇ形か。コボルト達、金なんて使って無かったから、鉱石や羊毛の代金は、その税を俺が払うのと、石鹸や日常品なんかの現物支給で賄っている訳だ。


 コボルトの村、石鹸とか無かったんよ。洗濯やら何やらは、アロエみたいな植物の、樹液でやってたっぽい。

 それよりも、石鹸の方が落ちが良いって評判が良かった。

 ついでに、村の女性達の肌や髪艶が良くなったって喜ばれた。


 うん、鹸化の少ない、ボディーソープみたいな石鹸の方な、あれ、精油を混ぜてシャンプー代わりに売り出したんよ。

 まぁ、こっちも売れた。

 それと、即席コンディショナーもセットで。髪洗って、パサつくのって、確か髪が弱アルカリ性に傾いてるからだった筈なんよ。

 前世のコンディショナーのCMで、確かそんな事、言ってた……筈。

 要は、コンディショナーって、洗髪でアルカリ性に成った髪を弱酸性にまで戻すって物じゃ無かったかな? 「人の肌は弱酸性~。だからコンディショナーも弱酸性が良い~」みたいなのを見た記憶があったし。

 なんで、お酢とかで戻しても良かったんだが、レモンみたいな果実をさがして、それを薄めてコンディショナー代わりにしたら、まぁ、それが上手く行った。


 今じゃ、これ等も主戦力の商品に成っている。これも第二夫人のおかげだわ。ジョアンナも結構必死な表情で欲しがってたし。

 この辺りの美容品関係、特に教会の女の子達が張り切って作ってくれるんよな。まぁ、いつの時代も、綺麗になる事に貪欲なのは女子ってこったな。

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