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用意は周到に

「パードゥン?」

「貴殿の配下に加えていただきたい」


 ああ、聞き間違いとか、言い間違いとか、そう言った事じゃあ無いらしい。

 てか、どうしてそう成った?

 俺的には、ちょっと必要な物を物々交換なり何なりで取り引きして貰いたかっただけなんだが?


 それの対価が配下とか、意味分かんないんだがね?

 俺達の戦闘力的な物を見込んでって事なら、冒険者的に依頼してくれれば良いんじゃが?


「えっと? 何か力を貸してもらいたいって話か?」

「貴殿の下に付きたいと言う話です」


 周囲のコボルト達の顔を見回す。誰も彼もがコクリと頷いた。


 え、これ、どう言う展開?

 配下っつったって、俺にそんな権力なんざ無いぞ?

 確かに魔人族国だと伯爵だけんども、それだって名ばかりなもんだしなぁ。

 いや、そんな事、コボルト連中が知ってるわきゃ無いから、それとは別なんだろうが。


「……さっきも言ったが、ケルブは別にお前らの神を模したって訳じゃねぇからな?」

「それは十分に理解しております。その上で、お願い申し上げております」


 確固たる意思ってやつを感じる。


「何故、と聞いても?」

「貴殿が“強者”だからです」


 ……どこでそう判断したんだ? 俺のやった事と言えば、殺気放って、OSHIOKIしたくらいだぞ?


「貴殿の放った“覇気”、アレは王者のソレ」


 殺気だよ? てか、覇気って何? まぁた、新しい単語出して来たな。

 言いたい事は分からんでも無い。要は、相手を威圧する何かだって事だろ?

 だがね、そりゃ確実に勘違いだわ。実際、俺が放ったのは殺気でしかない。

 そもそも、俺にそんな器は無いじゃろ。


『【称賛】良くぞマスターの偉大さを見抜きました!!』

『【賛同】そうデス!! オーナーはいずれ世界を統一するのデェス!!!!』

「おお!! やはり!!」


 よし!! 黙れおまいら!! イブさんもコクコク頷かない!!


『【確認】ですが、マスターなら一国の全兵力とも渡り合えますよね?』

「いや、流石にそこまでは無理でね?」

『【試算】周囲の被害を考えず全力でと言う前提でなら、計算上、ボク達なら十分行けるのデス』


 マジか。いや、国と渡り合える冒険者の一団とか危な過ぎやしねぇか?


『【進言】マスターは、自身の戦闘力を過小評価し過ぎな所があります。正しく力を振るう為にも、自身の能力の正しい認識は必要だと思います』


 ……魔人族国での事なら、お前やオファニムが有っての事で……


『【発言】私の事にしても、個体名【オファニム】の事にしても、私達は“武器”です。マスターの力の一部なのです。まるで別だと言う様な言い方をしないでください!!』

『【追従】ボクや個体名【ケルブ】もオーナーの力なのデス。それに、オーナーが何かをすると言うのなら、個体名【イブ】も、オーナーの力に成るのデス』


 ジャンヌの言葉に、イブがコクコクと頷く。いや、それは嬉しいんだが……


『【追加】それに、単体だったとしても、マスターは戦略級兵器と渡り合っていたではないですか』


 ああ、聖王国での話か。

 ……そうだな、確かに俺の力は相当に高い。ただ、それでもなお届いていない相手ってのは確かに居る事も忘れちゃいけねぇだろう?

 そもそも、俺って人物は一人しか居ねぇのも確かで、あれやこれやって手を伸ばしても、その全てを守れる訳じゃないのも確かなんだ。

 だから……


『【平気】その為に、私達も居ます。マスターの手が届かない場所は、私達が守ります』

「……そこまで言うのなら、分かった」

「おお!!」

「だが、別に俺は成りあがりたいとか、世界を統一しようだとかは思って無いが、それで良いのか?」


 俺の言葉に、コボルト族長は安堵した表情をした。その周りの代表達もだ。

 イブがフンスと鼻を鳴らし、ファティマ達からもドヤってる雰囲気が伝わって来る。


「いやぁ、安心しました。我々の願いを聞き届けてくださって」

「……まぁ、ここまで熱望されれば、この位は、な」


 ホッとした雰囲気に、場の空気が緩む。

 グレッソチューンの、奥さんだろうか? 女性のコボルトに飲み物を持って来る様に言うと、暫くして淡い茶色の飲み物が出された。


 見慣れない飲み物だな。コボルト特有の何かじゃろか?

 出された飲食物に手を出さないとなると失礼だもんな。

 特に、こうして手打ちが決まった直後とかな。()()()()()()()()()()()()と、取られかねないし。


 独特な香が鼻腔をくすぐる。


 ……ふうん。成程成程、部屋外の連中は保険か……

 俺は、少し熱めのソレに口を付ける。口内に苦みが広がった。


「イブ、苦いのは苦手だろう? ちょっとこれは遠慮しといた方が良いな」

「うん」


 イブを止めると、彼女は素直にそれに従ってくれた。

 神経にザラリとした何かが触れた。と、同時に、ジャンヌが何かを呟き、外から何事は騒いでる声が聞こえる。


「ひやぁ!! な、何ですか!!」


 ヴィヴィアン? 恐らくバロメッツを観察していただろうヴィヴィアンの悲鳴、チラリと周囲に視線をまわす。なる程?

 てか、ヴィヴィアンは平気なのか? それにはジャンヌはコクリと頷いた。

 そうか、俺の手の届かない所はお前達が守るんだったか。俺少し苦笑しつつ、立ち上がろうとして、ドサリと、真横に倒れる。


「トール、さまっ!!」


 イブが叫ぶ、だが、俺に手を伸ばす前にグレッソチューンが「動くな!!」と、こっちの動きを制止した。

 ドカドカと部屋に入って来たコボルトの若者が矢をつがえて俺達を取り囲む。


「ちょ、何ですかぁ!!」


 そして、腕を押さえられたヴィヴィアンが部屋の中へと連れ込まれた。やけに元気なヴィヴィアンの様子に、グレッソチューンが少し首を傾げるが、気を取り直して俺達を見下した。


「動くなよ? その矢はお嬢ちゃんとその化け物を狙ってる。それに、お仲間に怪我をさせたくは無いだろう?」


 これは、ファティマ達への警告か? それとも、俺にファティマ達を止めさせる様に指示しているのか? もしくはヴィヴィアンに対してか?

 だが、ファティマ、ジャンヌ、()()()()()()()


 二人から『【了解】』の念話が届く。


「流石の化け物も、毒には敵わなかった様だな!! お前達にはここで死んでもらう!! この村の存在は外には知られたくないのでな!」

「ひゃあ!! そ、そんなぁ!! って、え! トールさん!!」


 床に倒れ伏している俺を見て、ヴィヴィアンが焦った声を出す。いや、お前はもうちょっと自分の心配をしろよ。有難いが。


「お前の犬どもが来るのを待っても無駄だぞ? この俺の【従属】の術は、ゲーグレイッツァの未熟者なんぞよりずっと強力なのだからな!!」


 そうか?


「さあ! これでおしまいだ!! 者ども!! 矢を放て!!!!」


 引き絞られた弓矢が解き放たれ、それが一気に俺達の元へと降り注いだ。

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