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砂漠谷

 あれから更に1ヶ月ばかりが過ぎ、人の噂も75日、そろそろ噂も落ち着いたんじゃね? とか思ったんたが、どうも噂の暴走は続いているらしく、赤銅のゴブリンライダーは、裏組織を牛耳り、住人を拐っては他国に売りつけ、大手の商会を倒産させたり、下級貴族を破産させたりしてるらしい。イブが聞いた話では。


 ……いや、もう、そこまでいくと1ゴブリンの仕業じゃないよな?

 ゴブリンがどの程度の魔物か分からんが。

 果たして、ただの噂話なのか、そんな噂話がある事を良いことに、色々やらかしてる奴等がいるのか。

 これ、下手に見つかると碌でもない事に成りそうだよなぁ。


 それはともかく、森の際での生活も2ヶ月が過ぎ、住めば都の諺通りに、なんとかかんとか遣り繰りできてる。

 森の木々と、イブが貧民街から拾ってきてくれる、雑多な廃棄物を駆使し小屋を作り、生活基盤も整えた。

 その代わり、教会菜園の維持なんかはイブに任せっきりになっちまっているし、森の際での水の確保は彼女の『集水』に頼りきりに成っている。

 今は熾火を使ってるとは言え、最初の火を点けたのもイブの魔法だ。


「……もう、イブなしじゃ生きられねぇなぁ、俺」

「Σ! ……///」


 じゃあ、俺は何をやっているかと言えば、主に戦闘訓練だ。

 森の際では10日に1回位のペースで襲撃がある。多分魔物の。


 なんで多分かと言えば、どう見ても角の生えた野生動物にしか見えないからだ。

 実際、俺もちょっと強い野生動物だと思ってたし。

 イブが「それ、モンスター、だと、おもう」って言わなかったら、今も角の生えた野生動物だと勘違いしてた自信があるね。


 角の生えた野生動物って、それもエラいパワーワードだったな。

 そもそも偶蹄目には角の有る種類も多い訳だし。

 当然たが、そう言った種類って訳じゃ、もちろんない。


 前世では角なんか生えてなかった、兎とかネズミとか猿とか、そんな感じの奴らに角が生えてる訳だ。


 その中でも驚きだったのは猿だろうか? アイツ等、森林迷彩になってるんだぜ。

 毛皮が緑色なのな。

 魔物だって指摘されるまでは、異世界の動物って変な進化してんだなって思ってたわ。


 だって魔物って言ったら、冒涜的な狂った夜の眷族的な魑魅魍魎の類いだって思うじゃん。


 まさか、こんな普通に、動物が別系統の進化した様な生き物だって、誰が思うよ。

 まぁ、兎やネズミも、仰天記事なんかで見る様な1mを越える巨体だけどさ。


 そんな感じの奴等との命懸けな戦闘なんかがあって、少なくとも森の際に隠れ住んでる内は戦闘能力の向上が必須だと思った訳だ。

 身体能(フィジカル)力向上(エンハンスメント)は、オフる所か更に強化する羽目に成ってる訳だが。

 あれ? オフにできないと街中に入れないのに抑制の訓練に時間を割けないって、本末転倒か?


 いやいや、短時間のブーストとか出来る様になったし、制御の訓練だと思えば前進してるって、マジでマジで!


 俺個人の戦闘力向上だけではなく、犬達との連携も強化した。

 武器……と言っても石斧だが……を持つ俺が、一応はメインアタッカーで、ミカとセアルティ、そしてガブリが、相手を追い立てる勢古兼、意識を引き付ける、言わば避けタンク。

 バラキは、大振りに成りがちな俺の補助とガード。そして、ウリが遊撃だ。


 もう、ウリのヤツは自由にさせる以外ない。ぶっちゃけ俺達の中で、アイツに付いて行ける奴は居ないからな。

 元々、敏捷性の高いヤツだったけど、今は三角飛びで木上まで駆け上がり、樹上を駆け回りやがる。

 もう、ウリは犬っぽい何か別の生き物だと思うわ!


 で、ラファとイグディの役割がないのは、ラファは、街へ行くイブの護衛だからで、イグディは、教会で番犬……をしているからだ。

 あんにゃろ、結局、教会から一歩も動きやがらなかった。

 強化する前とは言え、成人男性に等しかった俺の筋力でびくともしないとか、どんな仔犬だよ!!

 ウリとは別の方向で、犬の形したナニカだわアイツは!


 ゴホンッ、それはともかく、そんな感じで戦力強化をしてた訳だ。俺は。


 ******


「ただ生きるだけの事が、こんなに難しいだなんて……」


 熱い何かが溢れてくるわ、こんチクショウ!!


 今、俺達の目の前に迫って来てるのは、“角の生えた熊”。それも全長6mは下らないであろう巨熊だ。しかも二足歩行。

 前世でも、その凶暴さは折り紙つきだった熊の、更に強化版とか、石斧しか持ってない石器時代人には、荷が勝ち過ぎだっちゅうの!!

 小説“羆嵐”だって猟銃で武装してたわ!


 実の事を言えば、俺達の中で最大火力を持っているのはイブだ。

 そのイブは、今、街へ行っていてここにいない。もっとも、居たとしてもイブを俺は戦力に数えちゃいないがな。

 だってそうだろう? どんな神経してれば、3歳程度の幼女を戦闘の場に出そうとか考えられる?


 ……あ、俺、乳児だった。


 まぁ、ともかく今回襲撃してきた魔物がこの角熊な訳だ。

 どうよ、この無茶振り。ちょっとばかし、嘆いたってバチは当たらないと思うんだがね。


神よ、神よ、(エロイ・エロイ・)何故、我を(レマ・)見捨てたのですか(サバクタニ)!!」


 ふう、少し落ち着いた。さぁて戦闘の時間だ。精々、足掻いて見ようかね。


 俺は、口の端しを歪めると笑みを作る。ピンチの時ほどニヤリと笑うのが男らしいからな!!


 と、思っていた俺だったが、次の瞬間、驚愕で目を見開く羽目に成ったのだ。

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