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ただいまOSHIOKI中

 青味がかった肌と、鞣した毛皮で作ったのだろう服を纏った姿。肌が青いって所以外に普通の人間と違っているのは耳がとがっているって所ぐらいか?

 背は120cm程度、まだ幼い容姿から少年だとは思うが、ずいぶんと生意気そうな表情だ。周囲の狼達の戸惑いにも似た雰囲気とは逆に、自信満々と言った感じだが……


 ここ数日、俺達を監視してたのはコイツって事か?


『【警鐘】マスター』

「分かってる」


 オファニムを纏い、ファティマを肩に担ぎながら、俺はコボルトと対峙する。向こうからの敵愾心や殺気は感じない。むしろこっちに対する嘲りや見下しの様な感情を感じる。

 むしろ、ミカ達の警戒心の方が強いか? ウリとバラキが俺の横に立ち、イブとジャンヌがヴィヴィアンを庇う様に両脇に。そしてミカ、ガブリ、ラファ、セアルティが三人を守る様に囲んだ。


 ニヤリ、と少年コボルトが嗤う。


 ザワザワとした()()が、俺の神経を撫でる。ちょっとイラッとする程度だが。


『【警戒】【詠唱破棄】魔法名【プロテクションマインド】!!』


 っつ!! ()()()()()の術か!! バフォメット達の【恐怖】と同じ様な!! あれよりずいぶんと弱いが!


 ジャンヌの声に、その事に思い至った俺は自身の殺気を解放する。元から効かない俺やファティマとジャンヌ、その俺と同調しているオファニム、ミカ、バラキ、ウリ、ラファ、ガブリ、セアルティも、この手の術の効きは弱い。俺と同じ様にプラーナが使えるからだろう。イブも、一度は【恐怖】にすら抗ってみせた。問題だったヴィヴィアンも、ジャンヌが精神防御の魔法を唱えた。だから、問題は無い。問題など無いけどよ……


 おい、てめぇ、俺から()()を奪う心算だったのか?


 ビクリと少年コボルトの背が跳ねる。

 空気が凍り付いたかの様に音が消え、重さすら伴う圧力で、目の前のコボルトはガタガタと膝を振るえさせた後、ペタリと腰を抜かし座り込んだ。


 そしてその次に、この少年が出て来た狼たちの向こうの岩に視線を向ける。焦っている様な気配が複数。

 だが、出て来ないならどうでも良い。


 むしろ今はこの少年だ。殺気も敵愾心もなく術を使ったって事は、この少年が、他者の心を操るなんてのを日常的に当たり前に行ってるってことだ。


 どうする? 二度とこんなふざけた真似なんざできねぇ様に潰しとくか? こんなつまらん奴なら、やっちまっても構わねぇよな?


 そう思いながら、俺の足元でガタガタと震え、涙すら流してる少年を見下ろす。その黄色い瞳には、黒い、悪鬼の様な鎧が、ユラリと立っているのが映っていた。


 ……落ち着け、モチつけ、俺。

 大丈夫だ。問題なかっただろう? ……うん、ちょっと落ち着いた。


 だとするなら……あれだ、あれだな、うん。OSHIOKIの時間だ!!!!


 ******


 狼達の腹をワシャワシャしていた俺が顔を上げると、どうやら随分と焦って走って来たらしい大人のコボルト達が息を整えるのも忘れて驚いた様に目を見開いていた。


 少年コボルト達はエグエグと泣きながら、ひたすらに地面を掘っている。

 ああ、あのあと、最初の少年以外のコボルト達も、岩の裏から引っ張り出して来た。

 今、コイツ等は、俺が手刀で削りだした石のスコップでひたすら穴を掘って埋めると言う作業をやらせている。疲れ果てて手を止めるならともかく、やる気が無くて手を止めた奴には、容赦なく電気アンマを喰らわせてやった。

 疲れ果てたやつも、強制プラーナ注入で回復させた後、再び穴掘りへ。のエンドレス。


 ヴィヴィアンがドン引きしてたが、知らんて、第一これ、OSHIOKIだし。


「申し訳ありませんでした!!」


 大人コボルト達は、俺を見てすぐさま頭を下げて来た。だがね、この謝罪の意図がさっぱり分からんのだが? 子供達を止められなかった事なのか、子供達の仕出かして事なのか。

 それともまた別の意図があるのか。


「別に謝罪は要らんよ、許してないからこうやって罰を与えてる訳だしな。まぁ、禊が済めばチャラにするがね」


 俺の言葉を聞いて、大人達が安堵する。

 見るかぎりじゃ、この襲撃は子供達(ガキども)の暴走っぽいやね。

 ただ、こうしてコボルト達が雁首揃えて出てきてる事も考えれば、この場所は彼等のテリトリーって所か。

 そうなると、知らなかった事とは言え、侵入して来たのはこっちって事に成る。そう言う意味では俺達にも非はあると言いたい所だが、しかし、自分達のテリトリーって事なら、最初っから意思表示しとくとか警告の為に姿を見せるとかしておくべきだったんじゃないのか? 何も知らない相手に、突然攻撃を仕掛けておいて、実は自分達のテリトリーだったから襲ってんだとかって、何処の山賊やねんって話だ。


「で? 俺達に何の用だ。子供達を返せとか言うなよ? 今やっているのは罪に対し罰を与えている所だからな? 終われば返してやるが、今はダメだ」


 なんで、とりあえず事情くらいは聞いてやる。出来る事と出来ない事の線引きはきっちり引かせてもらうがね。


 大人コボルト達が、何か相談し合い、結果が出たのか俺に向き直った。

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