予想できた惨劇
ソレを見た時、背筋にゾワリと怖気が立った。
俺はその可能性も有ると知っていた。知っていたんだ。だとすれば、コレは怠慢の罪なのだろうか?
******
連合軍の行軍は、予想していた途中での敵からの攻撃など一切なく、あっけない程に万魔殿軍と接敵できた。
俺達のパーティーは遊撃って事も有って、斥候も兼ねて先行し、万魔殿軍が展開している荒れ地で、連合軍の到着を待って居たんだわ。
俺や斥候の兵士が敵軍を発見した時、万魔殿軍は不気味な程整然と列を成し、八つの集団に分かれていた。何と言うか、陣形を成しているってぇ訳でもなく、本当に整然と列を成しているってぇ感じで。
連合軍の斥候は、敵を発見した事を伝えに進軍中の連合軍へと戻って行った。俺達はそのまま待機。特に巨大な影が見える訳でもないし、しばらくは様子見ってぇ所か。
ただ、俺が余裕を持てたのはそこまでだった。連合軍と万魔殿軍が相まみえ、お互いに戦闘開始の鬨の声を上げた直後、俺の背筋に冷たい物が流れ、俺は一足飛びで最前線へと飛び込んだ。
何故なら、怪人態の姿を露わにした魔族達が、その背後に邪神とのゲートを開き始めたからだ。
******
連合軍の兵士の五分の一程が一瞬で命を失い、その上で塵と成って崩れ、ソレ等に引き寄せられ渦を巻いている。もっとも、こっちは五分の一程度だが、万魔殿軍の兵士の方は全滅し、たった8柱を残すのみと成って居るんだがさ。
だったとしても全く安心なんざ出来はしないんだがね。8柱、そう、残っているのは全員魔族で、その上で、その全員が、かつて人であった塵を身に纏い渦巻かせている。
そう、アポリオンがやっていたアレと同じだ。つまりこれから現れるのは8柱の怪獣態。
それだけでも厄介だってのが分かるだろうが、その上で、こっちの軍は全く役に立たなくなっている。俺が咄嗟に起動した【フォートレス】の範囲内治まる事が出来た先頭に居た集団と、敵の【借力】の範囲から免れていた後衛を合わせた連合軍は、その五分の四程が残っているにも係わらず、そのほぼ全員が【恐怖】に当てられて身動きが取れなくなっている。
そうだよ、そもそも魔族はデフォルトで【恐怖】を持ってるんだったんだよ。ここ迄の戦争で使われる事が無かったから、意識の外に成っていたわ。
それ位、相手は全く本気で戦って無かったってぇ事だ。掌の上どころか指先で転がされてたってぇ事だわ。
それでも闘志を落としてない連中ってのも、軍の中には居るが、それが家の誓狼騎士団と、恐らく、各地の英雄と呼ばれている連中なんだろう。
だとしても、怪獣態の魔族相手に、どれだけ抵抗出来るんだかってぇ感じだわ。普通に50m級の生物に対抗出来る人間なんて早々存在しないからなぁ。
俺は、嘆息しながら【フォートレス】を解き、【闘神化】する為に【プラーナ】を研ぎ澄まし、高速で循環増幅を始める。
各軍の英雄たちもそうだが、家の家族連中は怪獣態の魔族相手だって言うにも拘らず、やる気満々でフンスと鼻息を荒くしている。全く、頼もしい連中だよ。




