現実が全てスッキリ行くとは限らないんよね
“過去”ってのは忘れ去られる事はあっても、決してなくなる物じゃない。良きにつけ悪しきに付け、な。
「いや、誓って言うが、決してお前等の力は弱くないぞ? そもそも、お前達が最前線に立って尽力していたからこそ、助かった命だって確かに有るだろうし、だからこそ、現状を見過ごせなかったってのも理解出来るんだわ」
戦争を長引かせたいってぇパズス側の思惑を読み取れなかったのは、単純に、向こうがそれを隠して上手く用兵をしていたってのも有るんだろうが、やっぱり、フラッシュさん達の情報収集に不足は有ったんだと思うんよね。各国の王がどの程度情報の開示をしてるのかは分からんが、オーサキ領の情報部にもそれなりに情報は入って来てる訳だし。
まぁ、家の情報網については、独自のソレも有るけど、王家と共有してるって強味も有るから何とも言えんのだがね。
個人で同程度の情報を収集できるかって言えば、出来ないだろうしなぁ。
最前線では、“魔族”ってヤツの実態が分かって無いんだから、万魔殿の軍と良い勝負出来てると思えば、敵国の王様の暗殺も出来るかも知れないってぇ勘違いするのも分かるんだわ。
それに、決してフラッシュさんパーティーは弱くは無い。成りたて魔族とどっこいどっこいだって言ったって、そもそも魔族ってのが人知を超えた一騎当千以上の戦闘力を持ってるってのは確かだしな。
ただ、その魔族の中でも戦闘能力の差がかなり幅が有るってぇ話なんだわ。魔物で言えば角猿と角牛の戦闘力が同じかって言われれば、方や緑色の猿に過ぎない奴と、方や10m越えの凶暴な装甲牛とを比べて同じ“魔物”のカテゴリーでくくられてる様なもんだし。
『【嘆息】アドミニストレーターも、他の下等とは言え、人類と同じ“人類”のカテゴリーで語るのは差があり過ぎるデェス』
うん、一寸黙ろうか。
「それに、あんたらの憤りも焦燥も正しいちゃ、正しいとは思っては居るよ?」
「ならばっ!」
「ただなぁ、正しいだけじゃ世界は回らんのよ。まぁ、今回に限っては、あんたらの見積もりも甘かったんだがね」
俺の言葉に、悔し気に眉間に皺を寄せるフラッシュさん。
「それに、今回は相手と自分達との力量を見誤ってたのは確かだし、事態が大きく成れば大きく成る程、色んな所からの思惑も出てくるし都合も出てくるって事は覚えておいて欲しいんよね」
たった一柱の魔族を倒したからって、その後の事が全て上手くいくとは限らんからなぁ。その為に『その後』の予想もするし、対策の為の話し合いもしてる。
本当は、シンプルに行ければ良いんだがなぁ。俺の足元で侍って居る犬達を見る。動物は好きか嫌いか、関わるか、かかわらないか位のシンプルな関係しかないからな。もっとも、そもそものコミュニティの大きさが違い過ぎるってのも有るが。
「別に、周辺諸国だって、手ぇこまねいて居るだけな訳じゃないって事は覚えていて欲しい」
「分かった……」
納得までは行かなくても、理解はして貰えたかな?




