意識高い系ってヤツか? 違うか
その日、領主館は朝っぱらからの来客の為、少っしばかり騒がしかった。
『国王陛下から話は聞いてたけどさ』
と、俺は溜め息交じりに独り言ちる。
領主館の応接室のソファー、俺の座っているその正面には一人の青年。とは言え、その青年一人でって訳じゃ無く、その両隣には計三人の少女の姿。それとは別に彼の後ろに騎士然とした女性の姿がある。
俺の方はと言えば、足元に犬達が居て、後ろにネフェル王女が侍っている。もっとも、更にその後ろにはイブとファティマ、それとティネッツエちゃんが立って居るんだけどさ、メイドとして。
イブとファティマはいつも通りとしても、ティネッツエちゃんがメイドとしてここに居る理由は、まぁ、相手の言動を見極める為な訳だ。
いや、向こうの要件がそのままだったなら、それ程必要って訳じゃ無いんだけんどもさ。
ただただ、面倒臭い事に成りそうだってのは確かなんよね。
そんな俺の心情なんざ知ったこっちゃないってばかりに、目の前の青年が口を開く。
「言った通り、こちらの要請に応えて貰いたい!!」
ドーン!! って擬音が聞こえてきそうな感じで、その青年、フラッシュ・ゴールデンドーンはそう言った。赤味掛かった金髪と、ハシバミ色の瞳。意志の強そうな整った顔に、細身ながら引き締まった身体。『どこのRPGの主人公だろうね』ってぇ感じ。
そう言えば、どこぞの勇者的アレの時も同じ様な事思ってたな。
まぁ、それはそれとして、目の前のフラッシュさん。彼の要請ってのが、『【魔王パズス】を打倒する為に協力を要請する』ってぇ事なんよね。
まぁ、全方位に戦争売った訳だし、実際、アイツの国の兵士、基本、狂信者で、でなければ洗脳ゾンビーみたいな奴らばっかりだから、存在させてても害悪にしか成らんのは分らんでもないんだがね。
いや、最終的に打ち倒さないといけなくなるだろうってのは確信してるんだ。ただ、フラッシュさんさぁ……
「悪の枢軸は【魔王パズス】ただ一人! それ以外は強制されてるに過ぎない。ならば、【魔王パズス】を打倒せしめれば、万魔殿も瓦解するは必然!! なれば、今は協力し、打ち倒すのが最善だと思われないか!!」
まぁ、言わんとする事は分かるんだ。そしてパズスを倒そうって気概も有るのは認める。
話を聞く限り、彼は自身の手でパズスを倒そうってしてるみたいだし。
チラリとティネッツエちゃんの方を見ても、彼女はコクンと頷くだけなんで、フラッシュさんの言葉は本心な訳だ。
これ、穿った見方をすれば、自分がパズスを倒して、その栄光を物とする為に、ザコを引き受けろってぇ言ってるともいえるんだよね。
まぁ、それは流石に深読みが過ぎるし、ティネッツエちゃんの反応を見る限りは、そこまで深く、ものを考えてはいないっぽいんだがね。
とは言え……
国王陛下が、王命って形で俺の方に彼等に協力する様に言わないってぇのは、単純に彼等が同盟国の人間って訳じゃ無いからって事も有るんだろうが、彼らに協力するかどうかを俺の意思に任せてくれてるってのも有ると思うんよね。
つまりは引き受けても断っても、どちらでも良いってぇ事な訳だ。
さて、どうするかね。




