創り出されし者
精神まで読んで貰って分かった事は、このホムンクルスは何も知らないってぇ事だけだったわ。
なんと言うか、本当に防衛機構に組み込まれた道具扱いだったようで、余計な情報の一切を持ってなかった訳だ。
あのチロチロは無駄だった訳じゃない。『何も知らない』と言う事が分かったんだから、無駄だった訳じゃない。無駄だった訳じゃないんだ。
……まぁ、防衛機構の銃火器部分扱いだってんなら、下手に情報なんざ持ってる方がリスクは高いからなぁ。
『【当然】道具としては、当然の扱いですね』
『【同意】魂すら持たない“モノ”なのデェス』
「あぁ、やっぱり擬似的な魂すら持ってないのか」
【ブラーナ】を一切感じられない事から、その可能性は考えてたけど、やっぱりそうなのか。
【魔力】をエネルギー源としてこそいるものの、魂の形に【魔力】を無理矢理形成して運用しているゾンビーとも、アプローチ的にも別物なんだろうな。
『【説明】魂によって肉体を生かしているのではなく、遺伝子データを【魔力】によって運用し、膨大な情報をもって、生きているかの様に振る舞っているだけなのデェス』
『【嘲笑】心を持たぬ自動人形の様な物です』
色々言いたい事はあるが、まぁ、ファティマ達は、一応にも魂を持ってる存在って事だから、ホムンクルスとは違うってぇ事なんだろう。
【魔力】によって“魂”を形作って居る訳ではなく、情報の蓄積で、肉体を運用しているって事か?
つまり、前世のイメージ的に言えば、ホムンクルスってのは、生身の肉体に、電子頭脳を積んで運用してる的な感じか? どこの『銃〇』の住人だ、それ。もしくは『狂〇学ハンターREI』のア〇シア。
まぁ、銃〇あれは脳を小型チップに入れ替えてたってぇ話だったが。そしてどちらも【魔力】とか使ってないけれども。
「それは兎も角、どうするかな? これ」
『【疑問】『どうする』とは?』
本来なら元の場所に戻すってのが正しい行動なんだろう。ただ、こうして人と同じ様に見える相手を全くの道具として扱い、元々の防衛機構のシステムの中に戻すってぇ事に抵抗を覚えるんよね。まぁ、偽善的な感情なんだが。
俺と目が合うと、プルプルと震えながら視線を外すホムンクルスを見る。『心が有るのと、心が有る様に見えるのとは、早々変わらんさ』みたいな台詞を語ったのは、何のキャラクターだったか。
宝物庫内のホムンクルスを全員解放して、あそこを彼らのホームとしても良いんだが、それをやるのは、少々リスクが高い。
あそこのシステムを掌握したジャンヌの言によれば、あそこに保存して有るホムンクルスは、何らかの能力付与を施した、兵器としての運用を考えられてた個体ばかりらしい。防衛機構としてシステムに組み込まれてた……彼女ってぇ訳でも無かったんだよなぁ。このホムンクルス。だからと言って男性って訳でもなく、いわば無性らしいんだが、そんな事はどうでも良く。
防衛機構に組み込まれてた個体だって、俺達には効かなかったとは言え、【万有引力】なんて強力な能力を有してた訳だし、他のホムンクルスが、どんな能力を持って居るかなんて分からないし、ましてや、その人格なんて分かる筈もない。
下手に解き放つとヤバい場合だって十分にある。
さて、本当にどうした物かなぁ。




