プルプル悪い領主じゃないよ?
「数の暴力って素敵だなぁ」
眼の前に有る“扉”を見ながらそう呟く。
あの後ね、実にあっさり大森林の方に繋がってる“扉”、見つかったんよ。
俺達だと人手が足りなくて出来なかった事でも、200人……匹? まぁ、どっちでも良いか。近くの人手があれば、こんなに簡単に見つける事も出来る訳だ。
数は力なんだよ兄さん! 兄さん?
もっとも、これほど早く見つけられたのは、彼らがジモティーだって事も大きかったんだがね。
件の“扉”、大体同じ場所を周回しているものらしく、角犬達、“扉”の通っているおおよその場所を把握していたんだわ。
「あ、あの……」
「気にしないで、先に戻ってくれ」
調査隊の面々がお互いに顔を見合わせるが、 流石に調査隊のメンバーには一旦お帰り頂く。そもそも確認するだけの予定だったのが、こんな事に成っちまったからなぁ。
入って直ぐに宝物の有る場所かと思ってたら、ワンダリングする“扉”を探して三千里的な? いや、三千里も移動して無いけど。
当然、本来通じて居る筈の部屋……ホムンクルスの守っていたあそこやね。の調査も出来ず仕舞いで、調査隊の面々は残念がってたけど、想定外の事が有って、一応にも安全マージンが取れたとは言え、いや、取れたからこそ、仕切り直しってぇ事で、【ソードオブグローリー】の面々と一緒にお帰り頂く訳だ。
“扉”潜って戻っても、未だ大森林の中だ。【ソードオブグローリー】が護衛に付いてくれなければ、危なくて戻るに戻れんだろうさ。
で、何で俺達が一緒に行かないかといえば、まぁ、まだ一寸やらんといけない事が有るから。
俺個人としては『やらんといかんのか?』ってぇ疑問も残る事なんよね。
いや、理屈では分かってるんだが、どうしてもなぁ。
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まぁ、そんな感じで角犬達のご褒美タイム。“扉”を探す事とのトレードオフってぇ事やね。
最初は、こんなひび割れた荒野の、それも渓谷の底に住んでるんだから、食料とかが良いのかな? とか思ってたんだけどね。
「オオン!」
「バウ!」
「バウバウ!!」
ミカに踏まれて、喜びの声をあげながら腹を晒し、ゴロゴロ転がる角犬達。それで良いのかおまいら。
まぁ俺の方も俺の方で、【プラーナ】を少し流しつつ角犬達をワシャッてる訳だが。主に雌角犬をバラキの監視の中で。
いや、俺が監視されてる訳じゃなく、バラキが監視してるのは、ワシャられてる雌角犬達の方。
多分あれだ、前世で有った握手会みたいな感じのノリなんだと思う。
この辺、何やら雌角犬達とバラキとの間で、色々話し合いの様な事が有ったっぽく、色々な提案、願望、欲望、却下、交渉、妥協なんかが有った末に、こんな形に成った様なんだわ。
“扉”を探して貰ったんだから、褒美が必須なのは分かるんだが、なんだかなぁって感じ。
……てか、会話が通じるんな、犬達と角犬達。
それは兎も角として、ここの【宝物庫】も確保はしておきたい所。ホムンクルスを保管している場所でもあるし、他のホムンクルスの稼働も見ておきたい。
うん、最初のアレ以外にも保管してあるホムンクルスは存在していた。
正直な話、ホムンクルスの脅威度か同等であるなら、放置するのも問題だろう。
だからと言って、安易にジェノサ〜イとは行かないからなぁ。
だとすれば、今後もここには来るだろうから、まぁ角犬と友好を築いて置くのも、悪い事じゃ無かろうさ。




