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超次元生物

 森の異変って、もしかしてコイツ等の所為なんじゃね?

 ゴン(ぶと)オークを丸呑みにしたニーズヘッグを見ながら、俺はそんな風に思った。


 って、ミッスルトー!!


 オークの木に寄生していたミッスルトーごと呑み込まれてんじゃん!!

 ぶった斬ろうとするが、俺の両脇に抱えるのはイブとジャンヌ。


「!! ジャ、ジャアァァァァンヌ!!」

『【了解】デェェェェェェスッ!!!!』


 一瞬の判断でジャンヌを聖槍に変型させ、それを振るう。

 クッ!! 左手だと遣り辛い!!


 ニーズヘッグの肉を断つが、切断までは程遠い! 太過ぎるってのもあるが、咄嗟すぎて力を乗せ切れんかった!!


 胴をザックリと断たれた事でニーズヘッグが暴れ回る。ちょっと接触しただけでも大ダメージん食らいそうだ。

 実際、周りの直径5mは有りそうなオークの木が、ぶち折れ、薙ぎ倒されている。

 偶然当たったとしても、俺だけならたぶん耐えきれるが、その場合、イブがどう成るか分からない。


 俺は後方に大きく飛び、ニーズヘッグと間合いを空けた。


 その俺の動きを感じ取ったのかヤツが地中に潜って行く。

 ミカ達が後を追おうとするが、俺はそれを止めた。


 この先は、相手の得意フィールドに上がる様なもんだ。こっちが不利過ぎる。

 俺は大きく息を吐いた。


 俺の欠点が丸ッと出ちまったわ。


 斧以外の武器の熟練度不足と戦闘の最高時に至るまでの()()時間の長さ。


 発動と維持に関しては、随分と訓練をこなした事も有りそれなりの練度を保っている自信はある。

 ただ、武器にプラーナを送り強化するのも、魔力装甲のパフォーマンスを最高時にまで持って行くのも、体内循環を濃く速くしていくのにも時間が掛かるんだ。


 まぁ、こういった実戦でのミスが、即、死に繋がるんだから、本来なら言い訳はできないんだが。

 この所、自身の戦闘の欠点が浮き彫りに成る事が多い。これらに関しては、もう訓練で何とかするしか無いんだが、もう少し、色々考えんとな。


 それはともかく、今回のニーズヘッグに関しては、どうにも腑に落ちない部分もある。

 なぜ、あそこまで近付かれるまで、俺は気が付かなかった?

 『気が付いていたが反応できなかった』のではなく、『あの距離まで気が付かなかった』んだ。あれだけの大きさの生き物が近付いて来てたんだぞ? 気が付かない方がむしろおかしい。

 それに関しては俺だけじゃない。イブはまだしもジャンヌが気が付かなかったってのも可笑しいだろう。

 そもそも犬達ですら気付いて無かったんだぞ? どう言う事だってばよ!!


『【説明】それはニーズヘッグが、外次元から来たからです。マスター』

「は?」


 いや、単語自体は理解出来てるねんで? え? 外次元? 何時からこの世界がファンタジーだと勘違いしていた!

 ……違う、そうか、()()ニーズヘッグも、()()に近いのか。

 文字通り次元が違う存在って訳だな。だが、実体もある。いや、次元に干渉できる存在ってだけで、普通に生物だと考えれば良いのか?


『【肯定】その認識で間違いないと思います。マスター』

『【補足】むしろ、同じ世界の裏側に住んでるって考えた方が分かり易いと思うデス』


 ああ、そう言う考え方の方がファンタジー的納得度は高いな。しかし、そんな生物も居るんだな。何か初めて本格的なファンタジー生物を見たって気がするわ。え? 魔族? そんな物の記憶はありません。


 まぁ、ニーズヘッグの事についてはだいたい分かった。だが、それを踏まえた上で問題が。


 あん畜生!! ミッスルトー根こそぎ持って来やがった!!


 うがぁ!! 結局、ヴィヴィアンの所まで戻らんきゃあかんじゃねぇか!!


 ******


 魔法薬店『妖精の泉』まで戻り、今度は複数の場所を聞いて来たんだかね。


「マジかぁ。ここも食い荒らされてやがる!!」


 何か所か回り、その尽くが食い荒らされているのを確認した。まぁ、あくまで食い荒らされてるだけっちゃあだけなんだけんどもよ。


 なんで、面倒だが、無事な所だけかき集めて量を賄ったわ。今回に関しては色々と世話にもなったんで、ヴィヴィアンの分も含めてな。

 ただまぁ、これからちょっとばかし、面倒な事になるんが確定してしまったよな。


 ミッスルトーは高級ポーションの原材料の一つだ。そのミッスルトーが採れなくなるって事は、つまり、高級ポーションの原材料が足りなくなるって事で、それはポーションが作れないって事な訳じゃん?

 そうなればどうなるか? 当然、高級ポーションが品薄になり、そのせいで価格が上がる。そうなると高級ポーションを買えない冒険者も出てくるし、イザって時の切り札が減るって事でもある。


 また、高級ポーションの価格が高騰する事を見越して、転売なんて手段に出る輩も居ないとは限らない。

 ともかく、そうなると、ミッスルトーを求める者も多くなるだろうし、ミッスルトーの採取依頼の料金も高くなる事は想像に難くない。


 いや、それだけだったら、構わんのだが、依頼料が高ければ、その依頼を受けようって奴も多くなるんだわ。で、今、森ん中あんなんだろ? 事前に情報収集してから行く奴等なら構わないんだが、高額料金に飛びつく輩ってのは、その辺すっ飛ばす様なのが多いんだよね。


 で、結果、怪我したり、最悪命を落としたり。高級ポーションが品薄なのに、いや、品薄だからそう言う事に成るんだろうが。何という負のスパイラル!!


 グラスにも注意喚起はして貰ってるが、果たしてどれ程効果が有るんやろね?

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