ホムンクルスは【重力】を使った
遅くなりました。申し訳ない。
【魔力】を注がれ見開かれたホムンクルスの、その黄金の瞳に、『綺麗だな』と言う、何処か場違いな感想を抱いた。
その当の本人は、そのまま無表情のままで、何の躊躇いもなく【重力】を増加させた。
「ぐっ!」
「あん!」
「アオン!」
「むー」
『【抵抗】!! なかなか、強力、ですね』
『【不敵】予想、以上、デェス』
「おー」
『きくねぇ』
一瞬目眩が襲い、身体が地面に引き寄せられる。が、【プラーナ】を循環させ、身体を強化しつつ、それに耐える。
ミカとバラキも【プラーナ】を循環させているのか、赤いオーラが漏れ出ていて、ファティマも自身の出力を上げ対抗している。
イブの方を見れば、あれは【結界】、か? だが、【結界】の魔術だけじゃ、【重力】に対抗は出来ない。
と、ジャンヌが、風魔法を使って、自身をイブの方へと吹き飛ばす。
イブの【結界】の中へと収まったジャンヌは、【空間魔術】を展開し、【結界】内をソレで満たした。
『【完成】! 理論構築はしていたデスが! お披露目する場所の無かった新魔術!! 名付けて!! 【固有けっk……】』
「言わせねぇよ!!」
要は【結界】内に【空間魔術】で亜空間を創る事で外部との接続を断ち、外部の影響を遮断してるらしい。何でも有りだな、魔法。
そしてさり気なく、【ソードオブグローリー】の面々も、その範囲におさめている。こう言う所、そつねぇし、助かるよな。
そしてラミアーとセフィは……いつの間にかイブとジャンヌの【結界】の中に居やがる。うん、平気そうだな。
さて、ホムンクルスの方はと言えば、自身もろとも【重力増加】をした為に、地面に押し付けられ潰れる様に大地にへばり付いている。
俺自身は、【プラーナ】を活性化させて耐え切って居る為、立っているが、ホムンクルスの方は完全に自身の能力で地面に押しつぶされてる訳だが。その 所為も有って、彼女は今、完全に俺から離れている。
「てか、諸共巻き込んでかよ」
まぁ、第一手で、相手に取り付いてるんだ。そのアドバンテージを活用するのなら、自分を巻き込んでの【重力】攻撃は有効な手段だろう。
コレが俺達じゃ無かったならば、の話だが。
とは言え、トラップが作動不良を起こしてなかったら、初見でコレの餌食に成って居ただろう事を考えると、すこし厄介だっただろうな。もっとも、それでも対処する自信はあるんだけんども。
とは言え、だからと言って、自分すら巻き込んで、その後、どうする心算だったんだか。見てる感じ、コイツ自身も動けない様だし。
そしてホムンクルス、こんな状態だと言うのに、その金色の採光の瞳には、未だ、何ら感情を感じさせない。
何と言うか、あれだ、アンドロイド的な感じ。人間に近しい人型ロボットの事はサイボットと言うんだったっけか?
どういう命令を受けているのかは分からないが、ホムンクルスは【重力】攻撃を行っている以外に他の行動をしてくる様子が無い。
そう思ってたんだが、どうやらホムンクルスの方は、俺達ってか侵入者の足を奪うのが第一であるらしく更に【重力】が強くなる。だが、俺は【プラーナ】を更に精製循環させ、身体能力を強化させ、それに抗う。家の家族達もそれに抗ってる。
ミシィ……ッビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキッ!!
が、どうやら足場の方が持たなかったらしい。大地に罅が入り、そして俺達は、足場が崩れ、真っ逆さまに落ちて行くのだった。




