眠り姫の目を覚まさせる為の準備
また、色々と体調を崩していました。
遅くなり申し訳ない。
冒険者ギルドの面々は、安全の為、宝物庫内で待機して貰う。ただ、【ソードオブグローリー】の連中は、どうしても見学がしたいってぇ事で、自己責任の名の下に見学を許可した。
開幕一発目に重力攻撃があるはずだってのも忠告はしたけど、どれだけ理解できてるんだかってぇ感じ。
相手の目的が捕縛であって死殺で無いなら、死にはしないだろう。多分。
ベクトル操作での【重力】攻撃なら、おおよそ【障壁】系の魔法も通用はしないんじゃないかなぁ? それこそ空間を断絶でもしない限りは。
「そんな訳で、イブさんにも宝物庫の方に居て貰いたいんだけんどもさ」
「や」
一語で返された。イブは、確かに魔法の天才だとは思うが、その実、身体能力的には普通の女の子に過ぎない。ジャンヌも身体強化系の魔法は教えたらしいんだが、だとしても2倍3倍とかってステータスがアップする訳じゃ無い。一割二割上がれば良い方だ。
『【不平】それに関しては、アドミニストレーターの身体能力の向上率が可笑しいのデェス! 何で倍々でステータスが増えるのかっ! デェス!!』
まぁ、それは置いておくとして。元々普通の女の子並みの身体能力が一割二割高く成った所でたかが知れてる訳だ。ホムンクルスを解放した時、大凡、される攻撃が【重力】であるなら、その重力の効果を増やすってぇ方向での攻撃が来るだろう。
そんな所に一割二割の強化された身体とは言え、元々の能力値的に低い少女のそれでの抵抗なんぞは、焼け石に水と言うか誤差とも言えない程度の物でしかない。
その辺りの事も含めて滾々と説明をしたんだけど、ヤッパリ回答は『や』の一言。
俺に対する家族愛的な物も有って、『一緒に居る』ってぇ事を選択してくれているのは分かるから、どうにも押し切れないのがなぁ。俺自身、イブに甘いってぇ自覚は有るんだがね。
ジャンヌの方も『【得意】ボクに考えが有るデェス』とか言ってたから、諦めて任せる事にした。
ちなティエネッツェちゃんは、大人しく宝物庫の方へ。『悔しいですけど』とは言ってたけどね。
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荒野に立つ俺の胸元には、引っ付いたままのホムンクルス。その傍らにジャンヌが立っている。
機能不全で動かないなら動く様に解消してやれば良い。って事で、【魔力】を吸収出来ずに機能不全を起こしてるんだから【魔力】をくれてやれば良いと言う理屈。
俺には【魔力】は無いんで、その代わり、ジャンヌが【魔力】を与える役目を引き受けてくれる。曰く……
『【当然】アドミニストレーターの【プラーナ】を変換して【魔力】として使用してるボクの【魔力】は、アドミニストレーターの【魔力】と言って過言出は無いのデェス! むしろボクがアドミニストレーターの【魔力】なのデェス!!』
ちょっと一部、何言ってるか分からないけど、まぁ、納得出来なくも無い理屈なんで、ジャンヌに任せる事にした訳だ。
確かに“俺”に反応して起動したってんなら、その吸収されるべき【魔力】も、俺のソレのほうが良いだろう。とは言えそもそも俺に【魔力】が無いんで俺から【魔力】を抽出するってぇ事は出来ない。
そうなると、ジャンヌ自身が言ってる様に、『俺の【魔力】』ってモノに、一番近い物を持ってるのは、確かにジャンヌな訳だ。
それに、何だかんだ言って【魔力】関係の扱いは、ジャンヌが一番旨いだろうし。
ジャンヌ以外も、それぞれホムンクルスが敵対行動をした場合に対処する為の配置に着く。俺と向い合せに、前衛としてミカ、バラキ、ファティマ。中衛にラミアー、セフィ。後衛でイブ。見学の【ソードオブグローリー】。
「じゃ、頼む」
『【了解】ラジャーデェス!!』
俺の言葉に応え、ジャンヌがホムンクルスに【魔力】を注ぎ込む為、その手をホムンクルスにかざした。




