仕様の想定外だったらしい
遅くなりました。
申し訳ない。
ジャンヌがハッキングで情報集めた所によれば、ここはやはり、生体兵器を保存してる場所らしく、この娘さん以外にも、何体かのホムンクルスや細菌兵器、合成獣とサイバネクス兵士なんかが保存されてた。
「はい?」
『【説明】一応、それも、防衛機構の一部なのデェス』
「これが?」
俺は、自分に張っ付いたまま眠り続けている、痩せぎすの娘さんを見る。
いや、どんな防衛機構よ。
実際、この娘さんの質量分、体の前面に干渉してる分程度には邪魔に成っては居るけど、ぶっちゃけ、くっついてる事を失念しかねない位に、重さが有るって訳でもない。
何と言うか、あれだ。デイバックを前側に抱えてるってぇのが近い感覚だ。
物があるけど、大して気に成らない感じ。
侵入者に対する防衛機構って割には、何ら枷に成ってないんじゃが?
『【苦笑】本来なら防衛機構として作用して居た筈なのデス』
「どゆこと?」
『【解説】この宝物庫のカタログのスペック的には、『最小エネルギーである【万有引力】を使い、高効率に対象を制圧出来る』筈だったのデス。その対象の【魔力】を奪う事で、覚醒する予定だったのデェス』
「あー」
要するに、あらゆる“物体”が有するエネルギーである【万有引力】を利用する事で、侵入者に取り付いて、その相手から【魔力】奪って、【万有引力】……もっと分かり易く言えば【重力】を操作する事で、侵入者を拘束なり何なりする役目だったって事なんね。この娘さん。
ただし、取り付いたのが【魔力】って物の皆無な俺だったせいで、取り付く所までは行けても覚醒までは至らなかった、と。
そうだよ! 俺に【魔力】が無かったから、防衛機構が不全起こしてるだけなんだよ!!
うっかり掛かったトラップが機能しなかった事に喜べば良いのか、それとも俺に【魔力】が無いって事実に悲しめば良いのかっ!!
「てか、俺に取り付いた後、ラミアーとかセフィとかも、この娘に触ってたけど、何で、アイツ等から【魔力】奪わないん?」
『【思案】恐らく最初に接触した対象からしか【魔力】を奪えない様なロックが掛かってるんだと思うデス』
「変に同士討ちしない為のセーフティーかな?」
そう考えると、最初にホムンクルスを受け止めた俺、GJ。
イヤ、別に、アイツ等からなら奪っても構わないって訳じゃ無いけど……迂闊に触らせちまってた事に今更ながら反省。特に強奪系使う相手には、その辺慎重にせんとなぁ。まぁ、ホムンクルスがドレイン使うとか分からんかったんだけんども。
……いや、そう言えば、ラミアーにしろセフィにしろドレイン使いじゃん。すっかり忘れてたわ。いや、ついさっきドレインされてるのに、何と言うか、チロチロされる事の方に意識行ってて、ドレインだって事を全く失念してたんだわ。
コレはあれか? 俺が『やめれ』と言ってる“舌先でチロチロ”を繰り返す事で、実は俺がエナジードレインされてる事に気付かせないと言う高度な心理戦だったってのか!?
そんな風に思い、やる事なくてゴロゴロしてる魔物’sの方を見る。無いな、うん。アイツ等がそんな事考えてるとか無いわ。




