そんな時代だった
遅くなってしまい、申し訳ない。
俺の力が強いからか、それとも痩せぎすの娘さんが軽すぎるからか、謎パワーで俺にくっついてる少女は重いと言う事はない。
その謎パワーもそうだが、俺がこの娘さんを『人間である』と断定できないのは、彼女に全く【プラーナ】の存在を感じ取れないからだ。
正直、この娘さんが落ちて来た時には、一瞬、人形か死体かと思ったわ。ただ、何か直感的に『生きている』と感じたんで受け止めた訳なんだけれども。
で、実際に抱えてみれば、確かに呼吸とかしてるし、どう見ても、作り物と言った感じは受けない。ただただ、【プラーナ】を感じ取れないってぇだけでなぁ。
そうなると、選択肢はそう多くない。つまりは『フレッシュゴーレム』か『ホムンクルス』ってぇ辺りだろう。ただし『クローン』と言う選択肢は無い。『クローン』だって、人間の細胞やらDNAを元に増殖させてつくられてる以上、生命体ではある筈なんで、流石に【プラーナ】は有るだろうからな。
そう言う意味で、生命の根源たる【プラーナ】を感じられないにも関わらず、それでも、“生きている”なんて存在は、元々は人間であった物を魔術的アプローチで疑似生命体として仕立て直した『フレッシュゴーレム』か、そもそも魔術的アプローチで、疑似的に生命の創造を試みた『ホムンクルス』かの二択になる訳だ。
実際はゾンビーも選択肢に入るんだろうけど、俺に引っ付いてて、それでも、無事って時点でそれは無いって事なんよね。
俺自身、あの時より纏う【プラーナ】は、より【プラーナオリジン】に近しい物に成ってるから、むしろゾンビーの方が近付けないからなぁ。
そんな事をツラツラ考えてたら、ジャンヌが俺の方を向き口を開いた。
『【同意】この施設は、『ホムンクルス』の研究施設だった様デス』
「って事は、この娘も?」
『【肯定】能力付属型の試作体の内の一体みたいデェス』
つまり、試作で造ったホムンクルスを廃棄も出来ないんで保存していたってぇ事かな?
てか、俺の知ってるホムンクルスに、こんな謎パワー無いんだけど?
錬金術的な物にしろ、心理学的な物にしろ。
『【追憶】あの当時は、様々な兵器を開発、投入していましたので』
「あー」
それはあれだ、古代文明時代でも、更に宇宙で戦争とかしてた時代の話ってぇ事か。聖武器'sも、造られたのはその辺りの時代だったか?
てか、人造人間造って、それを更に兵器として運用とか、倫理観末期な時代だったんだな。古代文明時代。
『勝てばよかろうなのだァァァァッ!!』ってのは、何処ぞの完全生命体の台詞だったか。
戦争ってのは『勝ってなんぼ』な所があるから、倫理観なんて物は何処ぞにポイしたか、それとも人工物扱いで倫理観には抵触していませんよってぇ事なのか……
つまりは、この娘さんは、何らかの特殊能力を付与された人工生命体ってぇ事な訳か。
てか、人にくっつく能力って何だ?
まぁ、家の面子にも、出来そうな輩がチラホラ居んけど、どうもどれも、しっくり来ないんだわ。
って事は、諸々、この娘さんが目を覚まさんと、何も分からないってぇ事かな?




