親方ぁ
遅くなりました。
申し訳ない。
それは、あまりにも唐突で、しかし、視界の中に見えた物を無視する訳にもいかず……
「ぶわっ!!」
降り落ちて来た大量の液体を被り、思わず声を出す。ミカとバラキは直接それを被るのを嫌がったのか、俺から数mほど離れていたが、液体が引いたのを見て、側に寄ってきた。
俺の腕の中には見た感じ少女と思しき人型の何か。スースーと呼吸はしてる様だが、果たしてこれは? と言うのが俺の感想。
もう少し詳しく調べてみたい所だが、何処をどう調べれば良いのかも分からない。ただ、本当に見た感じは普通の少女の様に見える。それも、目鼻の感じとしては、今世の人達と言うよりも前世の日本の人達に近しい、ある意味なじみ深い感じの。
とは言え、肌の色味は褐色だが。それもネフェル王女の様な赤褐色というより、黄味掛った日焼けして日本人的な感じの。まぁ、裸体を晒している所を見ても、日焼け跡的なソレは無いんだがね。
懐かしいなと思いつ顔を覗き込んでしまう。
青味掛った黒髪と彫りの浅い、どちらかと言えばのっぺりとした感じの顔。低い鼻梁と薄く小さな唇の口元。主張し過ぎない輪郭で、全体的に見れば卵型の頭部。手足も細く身体も薄い。あれだ。華奢と言うよりは骨ばって痩せぎすと言った感じだ。
「あだ!」
謎の少女風の何かの顔を覗き込んでいたら、ミカとバラキが太腿に頭をぶつけて来る。いや、だから太腿割りは地味に痛いんだってば!!
何気に急所に成る部分狙って来る犬達、害意高くないか? それでも邪魔したいってぇ事なんだろうけど、いや、とは言え……俺は周囲を見回す。部屋の床はやっぱり金属的な板でのパッチワークな感じで、寝かせられる場所も、見た感じ無いんだよ。上着を下に敷きたくても、びちょ濡れに成ってるし。
てか、コレが落ちて来てからさっきのブザー音がしなく成ってるんな。そうなると、もしかして、コレが解放されるってぇ合図だったって事か?
俺は、疑問に思って再びソレの顔を覗き込む。やっぱり、どう見ても、普通の娘さんが眠ってる様にしか見えんのだが、しかしなぁ。
「むーーーっ!!」
と、背後から唸り声の様な物が聞こえて来た。振り向けばイブとファティマが、“扉”から顔をのぞかせてる。
いや、イブさんや、何でご立腹?
******
適当なメーター外して、ジャンヌがセキュリティーをジャックした。
後追いで追いついて来たギルド職員達や【ソードオブグローリー】の面々も中に入って来て、内部を興味津々で見ている訳だが、しかし、それでも、俺達の方に興味が尽きないのかチラチラと見てきている。まぁ、傍から見てれば修羅場っぽいからなぁ。
んで、ミカとバラキは相変わらず、俺の太股に頭突き意を繰り返して抗議してきてるし、イブは膨れっ面で俺の服の裾を掴んでいる。
俺が“扉”に入ったまま出て来ないし、犬達も入って行ったから、安全だろうって事で、入って来たらしいんだわ。
で、実際、ジャンヌも入って来て内部の安全を確保できたって事で、全員で中に入って来たらしい。いや、変に二分するよりは、全員が一カ所に居た方が良いだろうって判断だそうだ。まぁ、間違ってないな。
外にいると、常に駆け足で移動せんといけんし。
ジャンヌがハッキングかましてコントロールを奪うまでは、ファティマが外で後続を待ってたそうなんだが、全員揃ったんで中にってのが、これまでの流れ。
で、何でこんな事に成ってるかと言えば、例の少女っぽいのがさ、離れてくれんのよ。見た感じ眠ってるってぇ感じなのに、俺が横抱きしていた状態のまま、どんな能力使ってるのか分からんけど、ピッタリ俺に張り付いてて離れない。信じられるか? こいつ、手、放してても落ちないだけじゃなく、ラミアーが【念動力】使っても、セフィが蔦だして、みんなで引っ張っても離れないんだぜ?
こんな状態だから、俺の方も身動きが取れんのよね。いい加減、服着替えたいんだがなぁ。ずぶ濡れのままだし。