すぐそこに在った危機
色々と申し訳ない。
”扉“の大まかな軌道としては、緩やか〜にカーブしつつふらふらと右へ左へ上へ下へと。これ、このまま痕跡追うのは、ちと難しい感じか?
おおよそ、『こっちかな?』って方向は分かっても、これ、変に途中で方向変えられたら、明後日の方向を探す羽目に成りそうだわ。
そう思う程度には不安定な軌道。
そもそも、乾いた大地には申し訳程度に低木と、乾燥に強いであろう緑がチラホラ。おそらく雨風の侵食によって作られたであろう亀裂の様な谷間が数多いが、それでも、視界的には遮るものがほとんど無いにもかかわらず、“扉”の存在が視認出来ないってぇ事は、視認出来ない程に上空に行ったのでなければ、恐らくは谷底に行ってるって事だろう。
「てか本当に、何で“扉”が彷徨ってるんだか」
『【推測】雨風によって周囲の壁が風化し、“扉”そのものが開放されてしまったにもかかわらず、指定座標の変更は行われていない為、近似の座標を動いているのでしょう』
『【補足】“扉”自体は空間に浮いているだけなのデス。惑星が動いているせいで、その都度座標を修正しているから、相対的に彷徨って見えるのデス! つまり、“扉”の座標指定は生きてると言う事デェス!! 朗報デェス!!』
怖っ! それって座標指定が死んでる“扉”に行き当たったら、下手すりゃ、潜った瞬間に宇宙に放り出される可能性も有ったって事だろう!?
たとえ、瞬間的に【闘神化】出来たとしても、宇宙空間に放り出されたら一発アウトじゃろうし。
……アウト、だよな? あれ、『出来ない』ってぇイメージの方が出て来ない。むしろ、普通に活動してるイメージすらある。
いや、まぁ、そもそものイメージが宇宙用だしなぁ……よし、この辺りの事は今の所、心の底に秘めておこう。どの道、現状じゃあ検証も出来んし。目立つから。
でも、瞬間的に【闘神化】出来る様には鍛錬を続けよう。特に深い意味は無いけど。うん。
いや、これ以上、神掛った部分見せて、信仰値上げてもさぁ。とは言え、生存に直結する部分だし、鍛えて於いて損は無いだろう。
あ、後は、頭部にサブコクピット的なのが有るけど、それ以外に何か、人を搭乗させていられる様な場所も増やしたいんだよな……今の所、それ出来る方法が無いからなぁ。
【闘神化】、あの形状での顕現しか出来ないんよね。多分、俺の無意識下の領域に焼き付けられた【闘神】の設計図を何とかして変更できる方法を見つけんと。
おっと、関係ない方向に思考がズレた。
「つまり、この“扉”は、この周辺をウロウロしてるってぇ認識で良いのか?」
『【肯定】イエス、マイマスター』
まぁ、あまり遠い所までウロ付いて無いってのは、確かに朗報ではあるのかな? 俺達が“扉”を潜ってから結構経ってるし。
それに、今、“扉”の向こう、俺の領地がある場所は、宝物庫が開放されちまってるから、それはつまり“扉”が開きっぱなしに成ってるってぇ状態な訳だ。
この宝物庫のある場所から、家の領地の所まで、素通り出来る状態ってのは、拙いっちゃ拙いか? 何か変な生き物が通って領地に侵入しちまったら……
いや、言うて、向こう大森林の中だからな、むしろ、向こうに居る魔獣がこっちに来る可能性の方が高いまで有るか?
それはそれとして、“扉”がこの付近をワンダリングしてるってんなら、見つける方法は有るかな?




