地の底から戻ったら地獄絵図だった件
自分でドン引きできる程、ぶっ倒れて落ちていました。
遅くなって申し訳ない。
ミカとバラキの2頭を小脇に抱えて、崖を駆け上る。
2頭も駆け上がるのは出来るはずなんじゃがな? 何か、抱えて運ばれるのを気に入ったっぽいな。まぁ、2頭とも重くもないし良いけどなぁ。
フンフンと鼻を鳴らしながら、時折、俺の顔を見る。どうやら、自分達で動かなくても過ぎ去って行く景色や、スピードを楽しんでるらしい。
嬉しいのだろう。尻尾もブンブンと振り回している。
自分の足で走るのとは、また違った感じなんだろうな。まぁ、ミカとバラキが嬉しいなら良いやね。それって俺も嬉しいし。
崖の高さが結構有って、登り切るまで5分程。ようやっと上がり切って崖上に降り立った俺は、困惑で少し唸る。
え? ど言事?
登り切った先の光景は、セフィが生やしたであろうゴン太の蔦に張り付けにされたローリーと、それを狙うかの様に【アイシクルランス】を待機させているイブ。そしてその足元に倒れ伏しているローリーの【ソードオブグローリー】。
ラミアーは笑い転げていて、ティエネッツェちゃんとギルドの職員がオロオロしている。
ファティマとジャンヌはと言えば、我関せすとばかりに突っ立っている。まぁ、聖武器'sは、一定以上の実力の無い奴等には辛辣だからな。
……ローリー達、一応にもA級パーティーなんだがなぁ。
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「別にローリーの所為って訳じゃ無いんだから、罪を問わんでよろしい」
「『ぶー』」
何か不満いっぱいな返事だが、実際、罪に問えるかと言えば、『それは無い』と言い切れるからなぁ。 むしろ、この宝物庫が特異だったってぇだけの話なんだし。
取り敢えず、荒ぶってたイブとセフィを宥めてすかして落ち着かせ、ほんでもって、他の冷静そうな面子に事情を聞いた訳だが……
うん、イブとセフィ、ローリーが俺が落下してるのを止められなかったからってぇ事で折檻してたらしいんだわ。
【ソードオブグローリー】が倒れてるのは、折檻を止めようとしたからなんだと。
いや、名目上、俺が雇い主ってぇ事には成ってるけど、別にローリーが俺を警護してるってぇ訳じゃぁ無いんだから、その辺の責任って、無いんじゃね? とも思うし、ローリー、ちゃんと俺の伝言、伝えてくれたらしいんだが『それ、は、それ』らしい。今は落ち着いたのか、俺の事を抱きしめたままのイブ曰く。
『【嘆息】単純に、A級冒険者のくせに、雇い主が単独先行する事を許したことは、おろかとしか言いようが有りません』
「それ、先行した俺の方が悪くないか?」
実際はミカとバラキも一緒だったんだけれども。まぁ、2頭は勘定に入れて無いんだろう。多分。
『【見下】と言うか、A級なんて看板ぶら下げてて、アドミニストレーターに付いて行けてないと言うのが情けなさ過ぎるのデェス! 最上位の冒険者だと名乗るのなら、むしろ、付いて行って当たり前なのデェス!!』
「あ、そう言う事?」
言いたい事は分かったが、普通の人間は視界すら届かん崖下へのフリーフォールにゃ耐えられんし、崖を駆け上るとか出来ないと思うから、それは無茶振りだと思うの。




