教会、完成したってよ
もう、色々とすみません。
と言う事で、阿呆領主には円満和解で帰って貰ったよ。何かアレが帰る時に乗ってた馬車が、超振動してた気もするが気のせいだろう。
いやいや、マジ俺の方には一ミリセコンドも益の無い時間だった。
だって、ネフェル王女は、アレの攻撃喰らう程、反応遅くねぇし、別にあのままやらかして不利益被るの阿呆領主だけだったし。
強いて言えば、俺のストレスの解消が出来たってぇ事位か?
……いや、ネフェル王女からの視線に何かこう、艶めいたものが混じる様になった気がしないでもないが、多分誤差範囲だし、それが俺に対する“益”かと問われれば……どうなんだろう?
嫌われるよりは良いかもしれんが、こっちとしては、そっち関係で応じる気は無いしなぁ。
その辺の事は、ネフェル王女も分かってるっぽいから、態度としてはいつも通りなんよね。
まぁ、その辺りに関しちゃ、少し心苦しいとは思ってるよ?
ただなぁ。それはそれとして、俺の方にも色々と葛藤が有るんでな。魔族にも狙われてるらしいし。
そう言った事情も含めて、そっちの方面は暫くは考えない事にする。第二夫人にも猶予は見て貰えてるみたいだし。
いや、将来的には考えなきゃいけない問題だってのは分かってるけどもな。今の所、優先事項的に低いってぇ事で。
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オーサキ領の領都のにおける、歓楽街の本格始動は既に目前で、その事も有って、新しい教会の方に呼ばれて、俺はヘンリエッタ王女と件の教会へと赴いてる。ついでにマリエルも。この教会の責任者、ヘンリエッタ王女だし。
俺の方に付いて来てるのは、何時ものミカとバラキ、イブとファティマとジャンヌ。そしてラミアーとセフィ。結構大所帯だよな、何時ものメンバーだけでも。
それはそれとして、俺は新しく出来上がった教会を見上げる。
青と金で彩られた教会は、静謐、荘厳と言った言葉がよく似合う感じ。四階建てのビル程の高さが有るけど、それでも中に入ってみれば一階建てなんよな、これ。
三メートルはある入口から入ってみれば、大きめに作られた明り取りの窓と、そこに嵌ったガラスによって、結構明るい。ガラスの強度や精度が上がったおかげだ。頑張ったなドワーフ連中。
外部は寒色系だが内部はクリーム色と金とで、明る目の内装に成っている。そこかしこに宗教画が飾られていて、目で神話を理解できるような作り。まぁ、教育を頑張ってはいるが、まだまだ識字率もそんなに高くないしなぁ。
正面ロビーとも言える空間を過ぎて、中央の廊下である身廊と側廊に入ると、両脇には礼拝堂が並んでいる。その先が聖堂か。
ただ、その先の聖堂に入ると、俺は大きく溜め息を吐いた。メインが光教会だから、光の女神……いや、この世界的な認識だと光の神か。まぁ、そのシンボルが釣り下がられているのは良い。けどさ、その下にある像は何なん? あれ、どう見ても俺なんだが……
俺がジト目でヘンリエッタ王女の方を見ると、自信満々で、彼女は胸を張っていた。
いや、彼女の信仰的な面を考えれば、分からんでもない。これ、下手すりゃ光の女神からの神託で決まった可能性だってある。
『その通りぃ。さすがはトールきゅん!』
……何か空耳が。
「!! トール様!! 今、光の神から神託が!!」
「あ、うん」
空耳じゃ無かったらしい。




