言い聞かせるぞな
ちょっと疲労度が……
座った途端に意識が無くなるのは不味いですよね。
ともあれ、遅くなり申し訳ない。
阿呆領主の目が覚めると、激昂して怒鳴り散らして来たんで、タックルからの反り投げ経由で脇固め、腕ひしぎ、逆十字、四の字固めまでを1セットで3セット。
そこからは怯え始めたんで、バックを取っての投げっぱなしジャーマンからの腕絡め、そのまま振りぬいて、ひっくり返してからのキャメルクラッチ。良い感じで意識が飛びそうに成った所から、そのまま腕を取って足を絡めて吊り天井固め経由での地獄車を1セットでの3セット。
ここ迄で『ごめんなさい』を言うだけのBOTと化して意思疎通が出来なく成ったんで、一旦絞め落としてリセットして覚醒待ちって状態。
当然、意識のない間に【プラーナ】でダメージは回復させておく。下手にクレーム付けられても何だしね。
暴力? 怪我? 何処にそんな証拠が? って感じになぁ。
阿呆領主は、白目でビックンビックンしてたけど、それでもそれから暫くして目を覚ました。
「やあ、どうだい? 目覚めの気分は」
「ひぃ!」
俺の顔見た途端に、悲鳴をあげる阿呆領主。
まぁ、さもありなん。自身にトラウマ捩じ込んだ相手が、目を開けた瞬間、自分の傍らに居るんだから、ある意味ホラーよりも怖かろうて。
俺は、なるべく何か企んでる様にニタニタとした笑みを浮かべると、甘ったるい猫撫で声で話す。
「ようやっと起きたね? その様子だと、自分が何で気を失ったか、覚えてる様だねぇ」
顔を青くしてガタガタ震える阿呆領主に対し、俺は声色を1段低くして続けた。
「さてさて、確か、『陛下に訴える』みたいな事を言ってたけどさ、それやったらお咎めを受けるの自分だって言う自覚はあるのか?」
「オ、オオ、オーサキ伯がっ、ここ、こんせっ懇切、ていっ、丁寧にっ! お教え、下さったのでっ!! はは、はいっ! りりりりりり、理解、しまっした……」
高速バイブレーション&超音波発生。どんだけ怯えとるねん。
「煩いんで、ソレ、やめてもらえる?」
俺がそう言うと、阿呆領主、『スンッ』て、感じに止まった。
『ピタッ』じゃなくて『スンッ』。
感情ごと抜け落ちた感じ。某軍曹の言う所の『泣いたり喚いたり出来なくしてやる!』を実行されたみたいな?
……まあ、煩く無いなら良いか。
この阿呆領主の自信の大本は、王家から直接、補助金を出されてる上に、『よろしく頼む』的なお手紙が届いてるからって物だったらしい。
要するに、それだけ目を掛けられてるってぇ思った訳だ。
いやそれ、囚人受け入れてるが故の物で、むしろ『コレだけ手厚く補償してるんだから、罪人逃す様な馬鹿な真似するなよな』ってぇ事だろ?
ある意味では目を掛けられては居るんだろうが、決してこの阿呆の思ってる様な方向じゃぁ無いと思うんだわ。
まぁ、コボルト諜報部から上がってきた報告書を見る限り、次男だった事も有って、あまり教育に力を入れて貰ってた訳じゃぁ無さそうなんだけど、それでもちょっと、考えが足りんよなぁ。




