語って聞かせるぜ
「そもそも、人の誕生会に来といて、問題起こす方がどうかと思うんだわ。俺としては」
「お、ご、ぐぅ」
「あんたにはあんたの主義主張が有るとは思うんだけんどもよ、ここは俺の領地なんだし、そこの身内に対して、反意を促そうってする事自体が横紙破りだってのは分かるか?」
「ご、うぐっ」
阿呆領主ね、ネフェル王女に対して、何も無礼な事をしている意識は無かったっぽい。手ぇ上げたのも、しつける為には当り前位の認識だったらしいよ?
何と言うか、貴族と王族ってぇ認識以前に、男と女だってぇ認識が先に来てたって言うか、女性が男の言う事を聞くのは当たり前位の認識で、そこから逸脱したネフェル王女の方が“悪い”ってぇ感じ?
だからこそ、『それを正してやる方が“正しい”』みたいな、フェミニストに全力で喧嘩を売ってる様なスタンス。
正直、この阿呆領主がどんな考え方をしていようと、構わないとは思ってる。たださ、それを自分の領地でやってるだけなら良いのよ。その領地では、どんな阿呆な領主のどんな阿呆な主張だったとしても、そこのルールになる訳だからさ。正直、その土地だけで運用されてて外に出ないってんなら、それはそれで別にどうこうしようとか思わんし。
最も俺は、そんなとこ行かないし、強要されたとしても全力で拒否するがね。
ただそれをよそ様の土地にまで来てやろうとすれば、俺はそんなモン叩き潰すしやらせはせんのよ。
もっとも、この阿呆領主は、自分のやってる事に疑いってもんを一分としても持って居ないから、ナチュラルに行使しようとしたっぽいけんどもさ。
「あんたの認識はどうであれ、王女は王女で、男だとか女だとか以前に王族で、それも同盟国のトップの一族の人間なんよ」
「ぐがっ」
「たかが侯爵程度の人間が、そんな相手に暴力をふるうって時点で、その国に喧嘩を売ってるに等しいって事、分かるかね? 分かって無いよな? 分かってたら、そもそもそんな事なんざしないだろうし」
「おごっ」
「あんたも貴族だってんなら、その辺の事、ちゃんと認識しとこうや、な?」
『【報告】マイマスター。ソレ落ちました』
……いや、チキンウイングフェイスロックで落ちるて。これ、首と肩を同時に極める技で在って、締め落とす技じゃぁ無いんだがねぇ。
阿呆領主があんまりにもごちゃごちゃ抜かすんで、取り敢えず、他国の王族に対する不敬罪って事で、チキンウイングフェイスロックを仕掛けて、滾々とその罪を語ってやってた訳だが、何でか落ちたらしい。
あっれれぇ? おっかしいなぁ~。これ、痛めつけるだけで、別に落ちたりはしない筈なのになぁ。
『【嘆息】マイマスター、痛みでも人は気絶する事が有ると、具申致します』
うん、知ってる。




