あぁ、そう言えば
この所の体調不良が可笑しいです。
色々と申し訳ない。
一応にも主催って事で、俺が割って入らんと埒が明かない感じ。
見た所、ネフェル王女が激おこプンプン丸状態で、そんな彼女に阿呆領主が言い訳と言うか説得と言うか、そんな事をしてるっぽい。
ファティマに聞いた所、二人で踊って居たのだが、その途中で、ネフェル王女が阿呆領主の手を振り払ってダンスフロアから下がってしまおうとしたんだとか。
その後、何とかネフェル王女を引き留めようとしてか、阿呆領主が彼女に手を伸ばし、しかし王女はそれを尽く避け倒すと、今度は、あの阿呆領主、ああやって行く手を塞ぎつつ、声を掛けまくってるらしい。
まぁ、ダンス途中で相手が立ち去ってしまったら、笑い者にしかならんから、どうにか戻って貰おうとするのは分かるが、ああまで目立つのは、逆に恥の上塗りにならんのかね?
周囲の貴族も、やや嘲笑めいた雰囲気だし。
さて、事の推移は分かったが、発端の方は、本人達に話を聞かなきゃ、わけワカメだわ。
そんな訳で、早速介入しようとしたんだが……
「このわたしがっ! こうまで言っているというのにっ! 黙って従えっ!!」
とかって、手を振り上げる。……阿呆領主、アホ過ぎんだろ?
あの程度、ネフェル王女なら、簡単に躱せるだろうが、なぁ。
俺は一足飛びでフロアまで行くと、阿呆領主の肩を掴んで、強引に膝を折らせる。
「師父!」
「え! ぐあっ!!」
「なぁ、お前、今、何しようとした?」
身内に手を出されそうに成ると、いきなり沸点が低くなるのは悪癖だとは思う。思う、が、直す気はない。
「ネフェル王女、事情を説明してくれるか?」
「それが……その……」
唐竹を割った様な性格の王女にしては、珍しく口籠る。
そんなに言い辛い事なんかね?
自国を馬鹿にされたとか? いや、それなら普通に話すか。
「貴様!! 高々伯爵の分際で、このわたしに、こんな無礼を!!」
………………あー、思い出した。近隣の、山岳地帯であるが故に、土地だけは広いラウカン侯爵領。
鉱物資源は有るらしいが、纏まって埋蔵されている事が少なく、その為あちらこちらに鉱山が分散し、人手が必要な為、主に犯罪者を使ってるんだったか。
確かに、俺と必要以上に馴れ合わなきゃいけないって事もなく、服役中の犯罪者がメインで暮してる関係で、娯楽品も必要無い。
だからこそ、家の商会も支店を出していないし、前領主は代官だけ置いて、王都で暮らしてたんだったか。犯罪者を引き受けてる関係上、国からの補助金が出てる関係で、そのリスクに見合った金額を出す為の理由付けってのと、その領地の広さ故の侯爵待遇だったんじゃ無かったか?
まぁ、その辺の事情は、ルールールー経由でルーガルー翁辺りから聞いた情報だった筈なんで、正しいとは思う。だって、ルーガルー翁の情報って事は、王家からもたらされてるってぇ事な訳だから、それが間違ってるとは思わない。
と言うか、そもそも俺、辺境伯なんで、権力的な部分では侯爵家と変わらん筈なんだがなぁ。




