伏魔殿と人は言う
色々と有って、遅くなりました。
申し訳ない。
まぁ、他の貴族との兼ね合いとかも有って、その辺りどうするのかってのはまだ決められないらしい。正直、俺との婚約ってだけでも影響力は高くなるんだそうな。
「国王陛下との直通ラインを持って居るってのは、やっぱり強いわよねぇ」
「ああ……」
わかりみふかし。独自戦力を許されてる挙句、国のトップと直接会話できる存在って、そりゃ、多少の瑕疵が有っても手に入れたいわな。
俺との婚約での影響力もそうだけど、俺が手に入れられる権力にも気を配らなくちゃいけないんだとか。実際、俺自身の影響力ってのも、結構デカいらしいんだわ。第二夫人曰く。
これ、あれだ。自覚無いままだと不味い奴だ。何気ない発言で忖度とかされて、気が付けば悪役辺境伯とかに成ってるって言う。トール知ってる!
とは言え、俺、派閥とか作ってる訳じゃないけど、擦り寄ろうとかしてくる輩は、そう言う事関係なく、身内面したりするからなぁ。厄介な事に。
何度か挨拶したことある的な程度で、『あの、何々閣下の覚えも目出度い』的な。
その上で『何々閣下の為を思って』とか言う理屈で私腹を肥やして、その責任は押し付ける、みたいな?
『覚え目出度い』とか、『為を思って』的な事口にするなら、その相手の気性とか性格とか、ちゃんと把握して、その人物が望むであろう方向で役に立てやと思うんだわ。
何で、あの手の輩って、『あの方も喜ぶであろう』とかって、自分の価値観押し付けるのかね? 本当に犯罪めいた事やって、その相手が喜ぶのか分からんのかな?
まぁ、そう言った奴等って、『自分なら嬉しい』って事なんだろうが、その時点で相手の事全く分かって無いよね? って言うね。
そんで、こう言う輩からのプレゼント的な物を俺はおろか、屋敷の人間が受け取った時点で共犯確定って言うのがなんだかなぁって思うんよね。
その場で突っ返したってのなら兎も角、お伺い建てる為ってぇ理由で、一時的に預かったってぇ場合でも、『受け取った』ってぇ事実が問題に成るんよね。
対立する貴族からすれば、それでも突っ込める隙に成るからなぁ。
こうなると、『自分は知らなかった』『部下が勝手にやった』は言い訳にも成らないって言う。
だってそれって、部下も御せない無能って言ってるもんだからな。
怖いわ〜、貴族社会怖いわ〜。
要するに、隙を作らない様に完全武装するか、少々の隙じゃビクともしない権力を持つか。その権力だって、自分の味方に成る他の貴族が居なけりゃ意味が無いんよね。『裸の王様』なんて言葉が有る程度には、味方の居ない権力者ってのは脆い。ほんの少しのスキャンダルで周囲から引き摺り下ろされる位にはなぁ。
まぁ、その為のお茶会だったり夜会だったりでの味方作りなんだろうけどさ。ロビイ活動ってのが、こう言った社交界で重要だってのは、前世でそう言う活動が苦手だった所為で、正論だけで対応しようとして、声の大きさと根回しのせいで他の国に後れを取ってた日本に暮らしてたから、良く分かる。
結局、難癖付けられて、どんだけ国家予算から支援金だとか補償金だとかって名目で持って行かれたんだか。
その上、相手国の無茶な理屈で返金されるべきお金も戻ってきてないと言うね。いや、ホント怖いわぁ。
まぁ、前世は前世でアレだったけど、今世の貴族社会ってのも、そう言った意味では近しい所があるからな。そう言う輩とやり合わなきゃいけないって時点で、並の精神的なタフさじゃやってられんのよね。貴族ってさぁ。