それは流石に皮算用過ぎだと思う
すみません、体調を崩していたらしく、昨日はぶっ倒れて居ました。
気が付くと既に夜に成っていたと言う。
遅くなり、申し訳ない。
魔人族国の使者ってか聖弓がやって来たのは、その日の昼頃だった。
こっちはちゃんと先ぶれも有ったよ。
まぁ、こっちの対応の方が普通なんだけど。
ただ、使者として来た聖弓さん、なんと言うか……
『【失笑】とんだ浮かれポンチデェス!』
『【同意】『取らぬ狸の何とやら』に成れば良いのに……』
「そこは、『ならなければ良いのに』じゃないんだ」
『【肯定】ぜひ成って貰いたい所です』
何だろう。仲が悪いのともまた違って、ある種のライバル関係、みたいな? 多分、例の序列とやらが関係してるんだとは思うが、ちょっと謎。
それはそれとして、いつもの聖弓は『あらあら、うふふ』ってな雰囲気な訳だが、今は『あらあらあら、うふふふふ』ってな感じ。ジャンヌも言ってたが、少し浮かれてるって様子。
場所はオーサキ領領館の応接室。俺の膝上にセフィがゴロゴロし、背中にラミアーがしがみ付いて居る。
足元にミカとバラキが侍って、イブとファティマがメイドとして給仕し、ジャンヌと、何でかネフェル王女が護衛然として後ろに立っていた。いや、何でアンタが護衛してるんだよ王女。
そんな俺達の向かいのソファーでは聖弓がファティマにお茶を淹れられ、『あらあらあら』とふわふわし、その横では無理やり聖弓の隣に座らせられたエリスが不貞腐れていた。最初、俺の横に座ろうとしてたんよ、エリス。
いや、ファティマ、おま、聖弓がお茶なんざ飲めんの分かってってやってるよね? 出来ない事をわざわざやらせようとする。つまり、お茶を出されて手を出さないというマナー違反をさせようとしてる訳だ。
出された物に口を付けないってのは、つまりは『テメエの出した物なんざ、毒入ってるかも知れねえんだから飲めねぇ』って言う、喧嘩を売ってる行為な訳だが、これ、飲む事の出来ない聖弓にやってる事で、『おやおや、こちらの出したお茶も飲めないのですか? そんなにこちらの事が信用出来ないのであれば、とっとと帰って頂けませんでしょうか?』って言う意味を含めるという……
何と言う上級な嫌がらせしとるねんファティマ。
うん、ちょっと空気を変えようか。
「あー……次期王太子候補が生まれたそうで、取り敢えずおめでとうと言っておく」
『【歓喜】はい有り難う存じます。これでワタクシも、こちらに移住する事が出来ますので、大変嬉しく思います』
いや、待て、何でそうなる。話が大分飛躍してねぇか?
『【憤怒】待つデェス!! そんな事僕は認めないデェス!!!!』
『【同意】これ以上の聖武器の入る余地は、無いと愚考します』
この発言には、家の聖武器’Sも大反対の様だわ。この場に同席しているエリスは、我関せずとばかりにのほほんとしてる。ってか、聖弓の発言を否定してないってことは、そう言うつもりで居るっぽい。
「あ! お前! 聖弓を嫁入り道具にするつもりか!!」
王位を弟に押し付けて、自分は俺んとこに来る気満々なエリスの言動と一緒に考えると、つまりはそう言う事だろう!! そもそも国宝を嫁入り道具にするのもどうかと思うが、俺の所に、聖武器が集まるのも色々と拙いんじゃねぇの?
てか、嫁入り道具と言う言葉に反応してか、イブとネフェル王女の視線がエリスの方に向く。
「当たり前なのじゃ、聖弓はワシにしか扱えんのじゃ」
いけしゃあしゃあとそんな事をエリスがほざきやがる。あ、ミカとバラキが俺の事をガン見してる。『どうするの?』って、視線がそう語ってるわ。
いや、エリスがあんまりのも堂々と言ってるけど、そもそもの話としてさ。
「おまいと婚約するとか言った覚えは、ない」
「なん、だとっ!! なのじゃ……」
そこまで驚くか?




