進んで化ける
この所、毎回の様に書いている気がします。
遅くなり、申し訳ない。
驚く俺達に、アポリオンは意外そうな表情をする。
「切り札まで使って勝てなんだら、撤退するしか無かろう? うむうむ、これは拙僧の修行不足であるが故にな!」
言われればそうなんだろうが、現状で言えば、アポリオンの方が余力を残してそうに見えるんだが? まぁ、そんな事、わざわざ指摘なんざせんが。
実際、【プラーナ】枯渇で殆ど動けん俺と、本体のみの実力的に、アポリオンには届かないファティマ。オファニム・ケルブと接続されていりゃ、今のアポリオンの【人間体】であれば、圧倒とまでは行かずとも、有利に戦いは進められるだろうが、正直、アポリオンが【魔族体】だったり【怪人体】だったりに変身してしまえば、その力関係は、簡単に逆転してしまうだろうしなぁ。
「行かせるとでも?」
あえての挑発。
ただそれでも、この危険物を野放しにする訳には行かないさね。
修行と称して、何千単位の人間を犠牲に出来るコイツは危険すぎるんだ。例え、俺がどうなろうとも、やすやすと逃す訳には行かない。
アポリオンが、眩しい物を見るかの様に目を細める。
「うむ、やはり良いな、貴殿は。ただ、拙僧とて、目的がある。ここは押し通させて貰おう」
うあ、何か寒気が……
と、周囲の空気が重くなったように感じる。いや、実際、アポリオンが【恐怖】の圧を高めたんだろう。多分【オド吸収】と合わせれば、マトモに立っていられる者なんざ皆無なんだろうさ。
俺だって、パッシブで【身体能力向上】がかかってなきゃ、アッという間に潰れてただろう。
そんな風に俺が忌々しく思っていると、アポリオンは面白そうに口元を歪める。
「流石であるな! その状態でも抵抗出来るとは!!」
思わず口元に苦味が走る。コイツ、こっちの状態、きちんと把握しやがってるのかよ。
ならあれは、何時でも撤退出来るが故の余裕ってヤツかぁ?
俺達とアポリオンとの間に、にわかに緊張感が奔る。
と、胸部装甲が開いたままだった筈のオファニムが、ソレを閉じ、ゆっくりとだが、立ち上がった。
「は?」
思わず声が漏れた。いや、だって、オファニムには意志こそ有れど、自律的に動ける能力も、動力の持ち合わせも無いはずなんだが!?
固唾を呑んで見ていると、オファニムは両手を広げ、俺達を守ろうとするかの様に、アポリオンとの間に立ち塞がる。
「!!!!」
現状だと、俺達の方が不利という状況を理解している!? いや、オファニムには確かに意志があり、俺達の事も理解していたし、その都度学習もしていた筈だ。つまりは、現状も理解できているって事だろう。
ならば、ひどく優しいオファニムの事だ。俺達を守ろうとしてもおかしくは無い。
けれど、どうやって動いて……あぁ!! そうか! 学習したのか!!
俺が【魔力鎧】を【魔導鎧】に進化させた様に!! オファニムは、自分自身を動ける様に進化させたんだ!! 恐らく、俺の【プラーナ】の運用の仕方を学習して!!
もっともそれは、ケルブと合体している、現状有っての物だろうが、けれど、これは確かに、オファニムの進化だ!!




