そして決着へ
何かひどくエネルギーを使いました。
えらく遅くなり、申し訳ない。
アポリオンの命中精度が次第に上がって来やがる。火球の隙間隙間を縫うように回避してるが、その上でも熱だけでもダメージは受ける。そのダメージは即座に回復させては居るが、か〜な〜り、キツイわ!
正直、俺の読みの速さと、アボリオンの攻撃速度が、今は拮抗しかかって来ていやがる。
焦りは戦闘能力を低下させるが、正直、焦らずにいられない状況に成っている。
それでも、冷静に勤め、アポリオンの攻撃を先読みし、避ける。
攻撃の度に地がえぐれ、クレーターを造る。
なるべく精神をフラットにしてたつもりだが、それでも多少ざわついて居たのは確かだったようで、足を掛けた途端に崩れたクレーターの縁で足を取られ、意識がそちらに持って行かれた。
「チッ!!」
好機とばかりにアポリオンが火球を連射する。丁度背中をアポリオンの方に向けた状態。崩れた足元に気を取られた為に、一瞬反応が遅れる。
一、二発程度なら、耐えきれるかもしれないが、十数発は有る火球。あの数はヤバイ!! ここぞとばかりに出血大サービスじゃねぇか!! こっちはその熱だけでも鼻血も出ねえわ!!!!
『【報告】充填率、100%です!! マイマスター!!』
「っ!! よっしゃぁ!!!!」
アポリオンの火球が迫る中、攻撃チャージ終了の報告に思わず歓喜の声を上げる。最終融合OKの報告を貰ったキングオブ勇者の様に。
反転し、火球を見つめる。キャノンがスライドし、脇を通って前面へと出る。即座に砲身を固定。狙いは曖昧。そもそも向かって来る火球のせいで、アポリオンの位置すら見えない。
『【痛恨】高熱源が近すぎる為にセンサー類が機能して居ません!! すみません!! マイマスター!!!!』
「……気にするな! ファティマッ!!!!」
それは……大丈夫だ! 火球の向かって来ている、その直線方向の先にこそ、アポリオンの、それも顔はあるんだからな!! それも、『必ず』、だ!!!!
ほぼ直感で狙いをつけ、対閃光防御のバイザーが降りると、須臾の間も無く引き金を引く。
「いっっっっっ! けえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!!!!」
直前にまで迫っていた火球は、しかしその直後、赤色の光線に飲み込まれた。その先に現れるのは驚愕に染まっているであろうアポリオンの顔。
そして、高圧縮され半ば実体化し、ほぼ、重粒子加速ビームと化していた【プラーナオリジン】の赤色光は、そこを通過し、眩い輝きの跡を残しながら、虚空へと消えて行った。
通過、だ。あまりにあっさりと通り過ぎて行った為、俺の目にはそう見えた。
果たして、バイザーを収納し、アポリオンの方に目を凝らす。
そこには、頭部を失った形で佇む甲虫型の怪獣の身体が……
それは、次の瞬間、グラリとよろめき、そして加速しながら大地に轟音を轟かせた。




