千載一遇のチャンス
体調の方を優先している関係で、遅くなりました。
申し訳ない。
『ぐわっはっはっはっはっは!! これこそが!! 我が【邪神】より力を借り受け強化された拙僧!! 言うならば【魔神アポリオン】である!!!!』
まさかの【邪竜】超え。流石にちょっと驚いたわ。
このサイズだと、喋ってる言葉だけでも物理的圧力を持って伸し掛かり、身体をビリビリと震わせる。
後、重低音過ぎて聞き取り辛い。ただ、【魔神アポリオン】だとかって言ってるのは聞こえた。ってか、言葉、喋れるんだ……
……アポリオンと言うか、アポリゴンと言うか……俺の目の前には全高40mは有りそうな、巨大な昆虫の特徴を備えた、なんと言うか、分かりやすく言えば、怪獣の姿。【怪人態】のそれとは違い、蝗の意匠を盛り込んだ様な、言わば蝗怪獣。
背後から、息を呑んだと分かる気配。ちらりと見れば、家の軍の人間達が唖然とした様子でアポリオンを見上げている。
それは非常識に慣れているであろう俺の家族も同じ感じ。いや、本体が多分あれよりデカいであろうセフィだけはいつも通りだが。
パズスの軍は、ほぼほぼ壊滅したっぽいな。敵との戦いってより、アポリオンの生贄に成った者の方が多いだろう。
アポリオンは、俺を見つけると、踏み潰さんと足を上げる。なんと言うか、怪獣ってより、巨大化怪人の定番っぽい動きだな。いや、巨大化怪人で間違っても無いのか。見た目はウルトラな怪獣なのになぁ。
俺は各所噴出孔とバックパックのスラスターを使って、ドゴンドゴンと踏みつけて来るアポリオンの足をギリギリで躱す。
「うおお!! 危ねえぇ!!」
アポリオンの全高からしたら、わずかな範囲なんだろうが彼我のサイズ比が半端ないせいで、かなり必死に避けまくる。なんぼこっちのタフネスが高かろうと、大きさが大きさだ。踏み潰されて無事で居られるイメージが湧かんわ!!
大地は揺れ、地面は陥没する。踏みつけの衝撃だけでも、普通なら大ダメージを喰ってる所だわ!!
モウモウと舞い上がる土煙で、視界が奪われる。
「オファニム、パージだ!! ファティマ、頼んだ!!」
『【了解】サー! イエス! サー!!』
オファニムの胸部が開き、俺が離脱するのと入れ替わりで、人型に成ったファティマが中で接続される。
土煙のせいでこちらから見えないってぇ事は、逆に言えば、そちらからも見えないってぇ事だよな?
俺と入れ替わったファティマが、俺の意を汲んで、土煙の外に飛び出した。
それに釣られて、アポリオンの攻撃が俺からファティマ達の方へと逸れる。
彼女等を囮として使うのは心苦しいが、この程度で殺られる訳はないと言う、信頼も有る。
元々、アポリオンが土煙を上げなければ、こっちで、地面を破壊して、目眩ましはやる予定だった。
【闘神化】には、どうしても、ワンクッションが必要だからな。
向こうがそれをやってくれるってのなら、それに乗らない理由は無い。
アポリオンの視線がファティマ達に向いた、その隙を突いて、俺は【闘神化】に必要な【プラーナオリジン】を解放した。




