以外な事実
少し、体調の方を優先しています。
遅くなって申し訳ない。
こちらの軍が、盾と長槍を使ってのファランクスにも似た歩兵戦術なのに対し、パズス軍の攻撃は、全員が特攻攻撃と言う、まるで百姓一揆の様な様相を呈しているのだが、それでも絶命しない限りはひたすら特攻を続ける集団と言うのは脅威に成る。
イブやジャンヌには、なるべく直撃しない様に爆発系の魔法でパズス軍の兵士を吹き飛ばし、意識を奪うって事を第一目標にして貰い、ミカやバラキ、ウリとラファ達にはひたすらかく乱に徹して貰っている。
兵士達にも『命を大事に』を徹底して貰い、負傷者はティネッツエちゃんに感知して貰いながら、ラミアーとセフィが後方の救護隊へと送ってくれている訳だ。
救護隊にはヘンリエッタ王女が控え、その警護にネフェル王女とマリエルが付いている。イブとジャンヌには、なるべく人を殺して貰いたく無くて直撃を避けるように頼んだが、本来なら、こんなものは単なる油断でしかないんよね。ただ、それでもあまり殺人を犯して欲しくないと言うのは、前世の記憶を持つ俺のエゴだし、兵士の方にはそんな命令なんざしていないのだから、こんな物、偽善でしかなく、俺の自己満足以外の何ものでも無いんだがね。
それは兎も角、周囲でそんなバチバチをやって居る中央で、俺とアポリオンは刃を交えていた。聖斧と拳で『刃を』ってのもアレだが。
大斧型であるファティマを回転させるように使い、刃と柄とでの攻撃が主体の俺に対し、アポリオンは拳、手刀、蹴り、頭突きと多彩な技を繰り出して来る。ただ、その出だしこそあちこちと様々な場所ではあるが、結局の所、狙って来るのは俺であり、致命傷を受ける部分にさえ気を付けて居れば、その攻撃は回避出来なくもない訳だ。
『【嘆息】そんな理屈で戦えるのは、マイマスターだけです』
……ガゴンガゴンとぶつかり合う大聖斧とアポリオンの拳。まだまだ威力的には足りていないと感じた俺は、【プラーナ】の精製速度を速め、高速循環を行う。【プラーナ】を【プラーナオリジン】と呼べるまでに高めつつ、それをさらに加速循環させると、全身のスリットが開き、そこに高速で循環する光りの奔流が見て取れる様になる。
アポリオンの方も、顔と思しき部分の顎にあたる箇所が裂ける様に開き、そこからギチギチと言う音を発しながら、攻撃を加速させて来た。
攻撃の速度は俺の方に分があり、攻撃の重さではアポリオンに軍配が上がると言う、いつぞやと同じ様な展開。但し戦闘の中での成長が無かった前回とは違い、今回はアポリオンも俺のそれにキッチリ付いてくるので、闘いの天秤は、平行線のまま。拳、肘、バックブローからの回し蹴り。それを避け、受け流し、躱して蹴りで迎撃し、ファティマで大上段から打ち下ろす。
それをアポリオンは刃横を添わせる様に受け流すと、俺の顔面に拳を叩き込んでくる。のをバックパックのスラスター逆噴射で回避しつつ、距離を取る。
直ぐに追撃してくると思っていたアポリオンは、しかしその場で構えたままだった。
『ふむ、矢張り拮抗してしまう様だな。ここからは、一段階ステージを上げるとしよう』
は? 嘘だろう!? アポリオン、お前、その状態で喋れたの!?




