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絡められる搦め手

 完全に取り込みに掛かって来てるじゃねぇか!!!!!!

 いや、為政者として正しい判断なのは分かってるんよ?

 ただ、ここまであからさまだとは思わんかったわ。

 俺がそんな事を考えていると、こぼれ出る不穏な空気を感じ取ったのか、エリスが焦った様に言った。


「いや、オヌシ様、これには色々と理由があるのじゃ」


 ほほう? これは是非とも理由を聞きたい。


「まず一つ目に、オヌシ様に対する報奨が少ないという意見があちこちから出ておるのじゃ」

「いや、俺は充分……」

「この場合はオヌシ様がどう思っておるかではなく、周囲にどう思われておるのかと言う話なのじゃよ」


 周囲にと言っても、国宝級二体だぞ?


『【提案】それは私から』


 うん?


『【説明】マスター、私は元々マスターのモノなのです』


 うん? えっと? いや、元々魔人族国の聖武器だったよな? ちょっと言ってる事が分からんぞ? もうチョイ詳しく説明してくれ。


『【詳細】魔人族国に現れた英雄であるマスターの姿は、黒の魔鎧を着込んだ聖斧を携えた冒険者と言う認識なのです。つまり、マスターは()()()()私と個体名【オファニム】を所持していたと思わている訳です』


 ああ!! そう言う事か!!

 俺としては、ファティマもオファニムも借り物で、その後、対価として譲り受けたと思っているが、他の人間から見ると、俺に与えられたのは、ジャンヌだけに見えてるのか!!


 そうなると、エリスが『冒険者のトール』に渡した報酬は聖槍のみ、それも、すでに聖斧を持っているにも関わらずに、だ。


 確かに聖武器は国宝級だろう。だが、すでに同じ聖武器を持っている相手に対してと考えれば、報酬が少ないと考える者も居るのか。


「それに、オヌシ様は国の復興を考えてとして、金銭的なものは受け取らんかったじゃろ?」

『【嘆息】その為に『自身の報酬も()()()()()()のでは?』と、邪推する貴族が出てきているらしいのです。愚かしい事に』


 う〜ん。良かれと思っての提案が、返ってエリスの足を引っ張る結果に成るとはなぁ。


「オヌシ様の提案は有り難かったのじゃが、それでは、どうにも特に元国王派を抑えられなかったのじゃ」


 ああ、王弟派はおそらくそれなりの覚悟があって反乱を起こしたはずだからな。だからこそ、負けたにも関わらず、生かされているって事実だけでもその事を厳粛に受け止める。

 ただ逆に、単に選択ができずに国王派に留まってた連中は、王弟派が、負けたと言う事実だけで、自分達が手柄を立てたってツモリに成ってるんだろう。

 事実上勝ったのは王女派なのにな。ただ、()()()()()()()()ってだけで元から味方だったかの様に振る舞う。

 そう言う考えなしの方が、いや、そう言う考えなしだからこそ、厚顔無恥に高い報酬を期待するし、貰って当然だとか考えるんだよな。


「ああ、それで爵位か」

「そう言う訳なのじゃ」


 要は空手形の様な物だな。爵位は、土地とセットに成ってる物もあるが、その逆に、地位だけの物もある。

 どちらも国から年俸だか年金だか、要するに給料は出てるんだがな。

 そして爵位ってヤツは、()()()()()身分を約束するモノでも有るわけだ。

 つまりは名誉。王家からこれだけ信頼されてますよって言うな。


 俺に爵位を与える、栄誉を与える事で、凄い褒賞を与えましたよって、ていにする訳だな。


 けどな。


「俺のホームは公都だぞ?」

「構わんのじゃ。特に冒険者等は、凄い成果を挙げる事で、その国で栄誉爵を貰うことなど良く有る事なのじゃ」


 そう言うものなのか? 良く知らんが。


「それともう一つが……」


 そう言えば今のが1つ目だったか。


「ワシから爵位を与えることによって、オヌシ様が魔人族国に危害を加える存在ではないと言う証明とする為なのじゃ」

「……やっぱり居るんか、排除論出すヤツ」

「愚かな事なのじゃがな」


 まぁ、力を見せ付けた時点で、そう言った輩が存在するだろう事は予想は付いた。

 とにかく『危険だ』『排除すべきだ』って主張するヤツな。

 そう言う輩って、良く『あの力がこちらに向いたらどうするんだ!!』とか、『気まぐれに力を振るわれたら、たまった物ではない』みたいな事、言うけどさ、そうやって歩み寄る姿勢も見せずに、不信感丸出しで居る方が返って危ないんだって、理解出来ないもんなんかね?


 まぁ、つまり、そう言った不安の種を払拭する為に必要な処置って事なんな。


 女王が認めて、それを受け入れたんだから、お互いに信頼でつながっている的なパフォーマンス。


 実際、爵位授けられたからって、叛意を持たないなんてこたぁないんだかね。

 実際、王弟、反旗を翻してるし、それに同調する貴族だって居た訳だし。

 もっとも、これでも排除論出すやつは、自分もいつ、女王に反旗を翻すかわからないですよって喧伝する様なものになるから、よっぽどの馬鹿でなきゃ、異論なんて出せないんだがね。


 ふと、甲板で遊んでいる他のメンバーを見る。まぁ、犬達は人間の地位なんざ関係無いんだろうがね。他の家族はどうだろう。


「イブはどう思う?」

「トール、さま、はじめから、すごい、よ?」


 まぁ、イブに爵位の説明しても、まだ理解はできないだろうな4歳だし。あ、俺2歳だったわ。


『【意見】マスターの勇名が轟く事は、むしろ推奨したい所存です』

『【称賛】ボクは大賛成デスよ? 天下に名を轟かせ、そのまま世界を統一するのが良いと思うデス!!』


 まだ何も言って無いんだか? てか、ジャンヌはまだその設定を引き摺ってたんか。

 でも、反対は居ないのか……う~ん、そう言う事なら、仕方ないのか?


「本当に名ばかりの爵位なんだな?」

「うぬ、これにおいては、オヌシ様に負担をかける事はないと断言するのじゃ」


 真剣な表情でエリスが言う。なんか、着々と外堀を埋められて行ってる様な気もするが……


「分かった、貰っとく」


 俺がそう答えると、エリスは満面の笑みを浮かべた。

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