喜びの日
「「「イブ、お誕生日おめでとう!!」」」
久方ぶりにオーサキ領に戻ってのその日、イブさん11才の誕生日。
またすぐに援軍へと向かうだろうから、規模は小さいながら、屋敷で、知り合いを招いての立食パーティー。
何時もと違って家の女性連中もドレスでおめかし。犬達も蝶ネクタイで着飾ってる。バラキが『似合う? 似合う?』ってえ感じで頭をこすりつけて来るんで、ワシャっておく。
皆が色とりどりの花の様で、とても華やかだぁね。うん、眼福眼福。
当然だけど、主役のイブもドレス姿でおめかししてる。いつも下ろしてる髪を今日は上でまとめてバレッタで止めている、ちょっと大人仕様。桜色のプリンセスラインのドレスが、とても良く似合ってるやね。
イブも、俺の前世で言えば、小学校高学年といった所だし、出会った頃から見れば、随分と身長も伸びて、スラリとした美人さんに育ったもんだわ。
屋敷のメイド娘達に『おめでとう』の言葉を貰いながら、嬉しそうに談笑している。
何か、使用人の男の子達も、一寸頬を赤らめながら声を掛けてるやね。あれか? 他の男子に肘で突かれながら出て来た少年達は、ラブ的な意味でのボーイフレンド候補的なアレか? 何か複数人居るけど。
モテモテですなぁイブさん。
とは言え、彼女自身が言い出すなら兎も角、まだまだイブを他のヤローにやる気は無いがね。まぁ、言い出されてもゴネる自信まで有るがな。
いや、取り敢えず、そこの少年達よ、恋人に成りたいなら、先ず俺を倒してからにして貰おうか!!
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「はい! あたしからのプレゼント!! バースデーケーキだよお!!」
パーティーも中頃、キャルがワゴンを押しながらそう言って登場した。
え? ボーイフレンド候補達? フルボッコにしましたが何か? TCGの対決的な意味で。
世界に一つしか無い専用カードって卑怯だよね。
さて、キャルがワゴンに乗せて出して来たのは、前世では良く見知った感じの生クリームタップリの純白の土台にイチゴが乗ったホールケーキ。
当然だけど、パンケーキすらなかったこの世界だと、全く他では見る事の出来ない逸品。
生クリームの甘い香りと、苺の爽やかな甘酸っぱい香りのハーモニーが、初めて見たであろうパーティーの参加者にも、美味しそうだと感じられるらしい。見れば、キラキラと目が輝いている。
いやまぁ、キャルに『何かめずらしくて美味しいヤツ。当然喜ばれそうなのでっ!』って相談されたんでイメージを含め色々と伝えはしたけど、良く再現できたよな。
何かもう、すっかりパティシエってぇ感じだわ。キャル。
ホールケーキを切り分けて、最初に口にするのは当然イブ。
口にした途端に目を見開いてキャルに対してコクコクと頷く事で『美味しい!! ディ・モールト美味しい!!』と、伝える。
キャルの方も、それを見て嬉しそうに笑った。
うん、やっぱり俺は、皆が楽しそうにしてる方が好きだわ。
そして、本当におめでとうイブ!!




