多分、次が最終局面と言った所だろう
パズスの軍の兵士は、その信仰心故か、それとも洗脳的手段故なのか、致命傷とも言える傷を負いながらも立ち上がり、向かって来る。まぁ、疑似ゾンビみたいな物だと思えば、それも出来て可笑しかないんだがさ。
ただ、俺の家族達は、そんな相手にも【プラーナ】をぶち込む事で行動不能にさせたり、動かなく成るまで魔法を打ち込んだり、一撃で息の根を止めたりと、油断なく、確実に相手を減らして行っている。
その成果も有って、フォルネウス以外のパズス軍の兵士は、ほぼほぼ沈黙し、ここでの戦争の趨勢はもはや決したも同然な訳だが、この世界の戦争が、全くの“個”の力によってひっくり返される場合が有るってぇ事は、俺が良く知っているからなぁ。
個人で戦争を止めた事が有る俺自身が、言わば生き証人みたいな物だし?
そんな事に思考を割きながらも、連続で襲い掛かるフォルネウスの槍を弾き、受け流し、受け止める。いや、もうこれ連続じゃぁなくて同時攻撃だよね? 何で右手の槍で弾きつつ逆の手で受け流し、脚でガード決めなきゃ対応出来んのよ。
その攻防の間にも、呼吸を整え、【プラーナ】を生成、循環、増幅、しつつ、純化、濃縮、精製し続ける。
大体の趨勢が決まったとは言え、フォルネウスの力自体は未だ脅威ではあるし、正直、俺以外のヤツが相手だと、結構厳しいと思う。
これ、思い上がりでも何でも無く、事実として、俺の家族の中でもセフィの能力が未知数だって事を除けば、フォルネウスの戦闘力に対応できる相手っていないんよね。
多分、鎧の中は怪人形態に成っては居るだろうけど、その状態でも【恐怖】を使ってデバフを掛けている様子も無ければ、それ以外の能力を使ってる気配もない。つまりは槍の技術だけで、俺を抑え込める力があるってぇ事だからな。何せ、一撃が三回攻撃で必殺攻撃で即死攻撃な訳だしな。全体攻撃かどうかは知らん。
ただ、コイツ一柱を放置するだけで、ここ迄の戦果が全てパァに成りかねんってぇ事な訳だ。
そうなると、今の様に防戦一方って状態じゃ無く、少なくともフォルネウスが撤退する事を選択できる程度には俺が優勢にならないといけないってぇ事に成る。いや、倒せればベストだろうし【闘神化】出来れば倒す自信も有るんだけれども、正直【闘神化】出来るだけの隙が作れんのだわ。
そんな隙を探しつつも、連続同時突きをいなし、左右からの薙ぎ払いを回避し、上下から来る振り抜き振り下ろしを受け流す。
これだけの猛攻をしつつも、流石は魔族。スタミナ切れどころか息切れすら見られない。いや、マジで隙が見当たらん。
何度か隙を作らせる為に大きく受け流しても見たんだが、槍の引きが素早くコンパクトなお陰で、それすらも空振りに終わっている。
一応、隙を作れそうな手段も有るにはあるが、一寸使い辛い手段なんよね。特に家族の前では……
「っと!」
「このオレを前に考え事をする等と、随分と余裕があるじゃねぇか!!」
後頭部と左右側頭部への攻撃を間一髪でしゃがんで避ける。と、その態勢の崩れた所に連続での突きが来た。それは強引に槍をねじ込む事で何とか受け止める。ってか、この攻撃、この槍の強度が無ければ致命傷だったわ。
いやいや、今のは本当にヤバかった。これ、もう、手段がどうのこうの選んでる場合じゃ無いのか?
さてさて、どうするかねぇ?




