でもこれ、戦争なのよね。
体調不良の為、時間が掛かってしまいました。
遅くなって申し訳ない。
ゴギンッ!! ゴギンッ!! と重量物同士がぶつかり合う様な音が響き、その都度、不可視の衝撃の波が周囲に飛び交う。
ほぼ防戦一方となっている俺は、フォルネウスの槍さばきに内心、舌を巻いていた。
予想通りと言うか何と言うか、やはりコイツの得意な得物は槍の方だったらしい。緻密で的確な槍の軌道が、次々と俺を襲って来る。
俺もジャンヌを聖武器形態で使う以上、槍については修練を重ねちゃ居るが、それでも経験不足って感はどうしても否めなかったし、その事は、こうしてフォルネウスと槍を交えてしまえば嫌でも実感できる。
ハッキリ言おう、槍を持ったフォルネウスは、強い。
長い柄と、鋼鉄製とは言え、それなりにしなる槍よって、フォルネウスの攻撃は近距離近接の間合いで、360°の方向から、無限の軌道を持って襲って来る。
俺とフォルネウス、どちらの得物も槍一本であるにも関わらず、フォルネウスの攻撃は、まるで幾人もの兵士と同時に遣り合って居るかの様に感じられるわ。
いや、マジ強えぇって。顔面への攻撃をかち上げ、足元への攻撃を受け流し、槍を引き、石突で後ろからの攻撃をいなし、薙ぎ払いを受け止め、頭上からの打ち下ろしを回避する。たった一人を相手にしているとは思えん手数。しかもこれ、何らかの能力によって行われてるってぇ訳じゃぁ無く、純粋な槍の技量の上に成り立ってる純粋な攻撃能力なんだぜ?
それでも何とか対応出来てるのは、【プラーナ】による【全能力起動】の恩恵と、攻撃対象が俺一人だって事が分かって居るが故に、何とか食らいついて行けてるからってぇだけの話だ。
凄いね、膂力で互角、手数で先を行かれ、技量でも上に行かれている。ただ、槍での技量は兎も角、単純戦闘能力で負けてるとは思っちゃいない。だからこそ、動体視力と反射、見切りを駆使して、どうにかしている訳だがね。とは言え、どこかで反撃できるチャンスを見出さないと……
「くくく、凄いな、このオレと同等に戦える相手なぞ、片手で数えられる程度しか居ないのだぞ? 誇って良い。キサマは強い!」
うへぇ、コイツも俺と同じ様に、相手を「凄い」とか思ってたのか。魔族と思考同調とか勘弁して欲しい。俺はコイツ等程、思考破綻者のつもりは無いんじゃが!?
てか、強い敵と戦う事に楽しみを見出すのはバフォメットと同じ感じだが、コイツの場合、少っしばっかし、目線が上からだね。
まぁ、魔族ってだけで人間を超越してるからってのも有るんだろうけどさ。自身の技量を高め、上を目指すって事に喜びは有るし、楽しいとも感じる。けど、俺はこう言った殺し合いで、そう言った事を感じる事は無い。
フォルネウスは、命を担保にした戦いで、それも、僅差の技量を持つ相手を叩き潰せるってぇ事に愉悦を感じて居るっぽいな。
もしくは僅差での負けに伴う『焦り』だったり、『悔しさ』だったり、『絶望』と言った感情を伴った【オド】が好みなのか。
フォルネウスは俺に攻撃する事に夢中になっているからか、周囲の状況は全く気にしちゃ居ないが、一撃毎に吹き荒れる衝撃波のせいで。周囲はエライ状況に成っている。地面なんて、もう、ボッコボコ。
それに伴い、自軍の兵士が結構犠牲に成ってるんだが、気付いて居ないのか気にして無いのか。まぁ、俺としちゃ、都合が良いんで構わんけれども。
少し意識を巡らせ、戦場を見回せば、ミカやバラキ、ウリとラファ、ファティマや、それとネフェル王女の攻撃や、イブとジャンヌの魔法、ラミアーの【念動力】、セフィは……あれ植物操ってるのか? 暴れまくる蔦によって、戦局としては俺達がかなり有利になっている。
俺がフォルネウスを抑えて居る事で、戦況をひっくり返して居ただろうコイツが、ソレをする事が出来なくなっているからだ。コイツの相手は正直厳しいが……これも家族の負担を減らす為と、俺の技量を上げる為だと思って、もう少し踏ん張ろうか!!




