真っ向勝負!!
フォルネウスが、剣を腰溜めに構え、その状態のまま、俺の方へと突っ込んで来る。体勢としてはランスチャージが近いか。騎乗して居ないが、勢いで言えばそれと変わらんスピードだわ。
そう言えば、今俺の持ってる槍は、コイツの得物だったか。要は得意なのは剣よりも槍ってぇ事かも知れないが……ならなんで投げるかね。まぁ、良いけど。
「次はっ!!!! キサマが吹っ飛ぶ番だあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
嫌だよ。
自分が吹き飛んだ事で出来た直線を逆走するかのように加速して来る。結構な巨躯と、騎馬並みのスピードやね、どれくらいの運動エネルギーなんじゃろか? 俺は、体内の【プラーナ】を純化、濃縮、加速させて行く。
純化純化純化純化純化純化純化純化純化。濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮。加速加速加速加速加速加速加速加速加速。純化純化純化純化純化純化純化純化純化。濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮。加速加速加速加速加速加速加速加速加速。純化純化純化純化純化純化純化純化純化。濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮濃縮。加速加速加速加速加速加速加速加速加速。
普通で言えば、加速して来る物体と、停止している物体とでは、加速して居る物体の方がエネルギー量は多くなる。まぁ、そんなもんは単純な同質量の物体の話で、それが対人の、それも戦闘やら格闘やらをやって居る人間には必ずしも当てはならないんだわ。
確かに、俺は足を止めているかもしれんが、その代わり、体内、体外と【プラーナ】を激しく循環している訳だからな。俺と言う存在が持つエネルギー量で言えば、走って来るフォルネウスに勝るとも劣らんだろうさね。
それに、物理的運動エネルギーだけじゃぁ勝敗なんざ決まらんのよ、実際にはなぁ。
「集中っ!!」
俺はピタリと、フォルネウスに向けて槍を構える。向かって来るフォルネウスは、実直に真っ直ぐに、俺に向かって剣を突き出す。直前の変化も無しかよ!! だが、それも良し!!
「死っ!!!! ねえええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「お前が逝っとけええええぇぇぇぇぇ!!!!」
フォルネウスのチャージソードとも言うべき攻撃に、槍を合わせる。
キイイイイィィィィィィィィン!!!!
硬質な金属がぶつかり合う、何処か、戦場には似つかわしくない清廉な音が鳴り響き、一瞬遅れて周囲に衝撃波が吹き荒れ、それに巻き込まれた兵士が吹き飛ばされる。
激突をした俺とフォルネウスの足元が沈み込み、亀裂が入る。ピタリと一致した切っ先と切っ先。お互いブレる事無く、剣と槍とで押し合う形と成った。
「ぐ、う、うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「う、く、うがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
流石は人外の膂力。俺も相当なパワーを有していると自負できるが、フォルネウスも、俺と同等近いパワーを持っているらしい。しかも、ジリジリと出力を上げられる俺のソレに合わせるかのように、フォルネウスの方もパワーを上げて行っている。
「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ミシリ、とお互いの得物が嫌な音を立てる、が、ここで引く訳には行かない。俺は更に【プラーナ】を循環加速させ、出力を上げる。
「ぐ、うっ!!! ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺の圧力に抗う様に、フォルネウスがさらに力を込めた、その瞬間……
「なっ!!」
ピキィィィィンッ!!!! と言う音を立て、フォルネウスの剣が罅割れ砕けた。




