トール、行っきまぁ~すっ!!
「前回と同じ感じかね?」
『【肯定】兵士の構成は殆どが人間の様です。マイマスター』
ケルブとドッキングしたオファニムを装着したファティマが、俺にそう答える。イブとジャンヌ、ヘンリエッタ王女は後衛として遠距離攻撃と彼女らの防御を担当し、その上でマリエルが護衛として残ってくれる。ティネッツエちゃんも一応後衛って事に成ってはいるけど、その役目は戦場の全体的な動きを感知して、中衛であるラミアー、セフィ、そして前衛であるファティマとネフェル王女。それと遊撃で在り、特攻をする俺とミカ、バラキ、ウリ、ラファへと伝えるってぇ役割をしてくれる予定な訳だ。正直、あんまり幼い彼女を戦場に駆り出すのもどうかとも思うんだが、彼女のたっての願いって言う事で、そう言う事に成った。
あんまり無理しなきゃ良いんだがね。精神的な方向で。
眼前には昨日、不自然に後退したパズス軍が再び姿を見せている。冷静になって思い直せば、アレって、こっちの軍の絶望とかそう言う【オド】を喰らう為の時間だったんじゃないかとも思うんよね。殺せば一瞬。だけど生かして殺さず生殺しなら、継続的に【オド】を喰らえる訳だし。
まぁ、想像でしかないが、あの不自然さを考えれば、それ程遠い予想じゃないと思うんよね。何か、向こうの兵に、明らかに“生命力”が増加してる奴とか居るし、多分そいつらが魔族なんだろうさね。
「んじゃまぁ、作戦通りってぇ事で良いかね?」
俺が振り返ると、彼女達もやや緊張した面持ちではあるけど、確かに頷く。
作戦会議では、俺達が先行する事に不平不満を声高々に発してた面々だったけど、一寸、お手玉をして見せたら、大人しく俺達の先行を認めてくれたよ。脅迫? イヤイヤ、一寸、遊んで見せただけですしおすし。
【プラーナ】を【プラーナオリジン】のレベルにまで精製純化させ、それを濃密に圧縮し、高速循環させる。俺の周囲に同調共振した【プラーナ】が集まりだし、俺は、それすらをも操作、取り込み、【魔力鎧】改め【魔導鎧】として纏う。
ギュルギュルと、圧縮された【プラーナオリジン】が【魔導鎧】を循環し、それらがスリットから赤色光として溢れ漏れる。
パズス軍は所定の位置へと着いたのか、行軍を止め、そして降り注ぐかの様に矢が放たれた。
「イブ!! ジャンヌ!! ヘンリエッタ王女!!」
「んっ」
『【了解】デェス!!』
「分かりました!!」
俺の声で、三人がそれぞれ【障壁】を展開させ、それらがことごとく矢を弾き落として行く。パズス軍も、矢による攻撃の効果が薄いと分かったのか、矢を射るのを止めると、歩兵を突撃させた。
……魔法での攻撃は、無し、ね。まぁ良いけど。
「さて、と。じゃぁ、行きますかっ!!!!」
「アンッ!!!!」
「ワン!! ワオン!!」
「アオォォンッ!!!!」
「わおーーんっ!!!!」
両肩、背面、両脹脛の噴出孔から圧縮【プラーナ】を噴出させ、一気にパズス軍の兵士の頭上へと飛び出すと、それら噴出孔の方向を調整し、軌道を兵士の中へと突っ込むソレへと変える。
脚部に【プラーナオリジン】を集中凝縮高速循環させ、それが物理的熱量をも持って、バチバチと放電をする。
俺は、更に【プラーナ】の圧縮噴射によって加速すると、それを兵士の密集してる場所へと叩き込むっ!!
ドッゴオオオォォォォォンン!!!! と言う音を轟かせ、爆塵が周囲へ走り広がり、細かい礫が巻き散らかせられる。
爆風と粉塵で兵達がなぎ倒され、その中心には10m近いクレーターが出来上がっていた。
クレーターの縁からは、遠巻きに、唖然としている兵士達の顔も見えるが……
まぁ、お前らが喧嘩売った相手ってのが、どんな奴らなのか、ここで思い知って貰おうかね。
さぁ、精々、派手にやらせて貰おうかっ!!!!




