同行する事に成りました
後から来た第二夫人達と合流して、ついでにラボラス侯爵もご一緒で王都を目指す事に成った。いや、本当にイベント多すぎじゃね?
んで、そのラボラス侯爵、何でか俺と同乗をご希望。
疑惑も有るんで、同行するのは俺とファティマのみ。イブさんに随分粘られたけど、『イブに何かあったら、俺が辛い』と説得して、領に戻ったら一緒に狩りに行く事を約束して、やっと納得して貰ったわ。
そこでお食事だとか、スイーツだとかじゃないのは、多分俺が喜ばないから。『愛されてるわねぇ』と第二夫人にからかわれたけど、愛されてる実感は有るから、それは第二夫人からからもなぁ。
それはさて置き、ラボラス侯爵所有の馬車は内装はゆったりとはしてるが、乗り心地としては普通の馬車。いやまぁ、家の馬車が破格だってのは理解してるんだけどな。
とは言え、前世では子供の頃は農村育ちだったし、トラクターに牽引されてる荷車に寝ながら移動とかもしてたんで、この程度の揺れでどうこうは思わんのだがね。
そもそも前世で使ってた荷車、コンバインとか田植え機とか運ぶ為の奴で、タイヤも空気とか入れられるタイプじゃ無いガチガチに硬い奴だったし、そもそも本体が、鉄の網状の板で出来てたからね。その上で寝ながら移動してた訳だから、むしろ、この馬車の方がまだマシって部分も有る。革張りのシートとは言え、クッション効いてるし。
道? 前世の農道も、ここの街道も、そんなに変わらんよ? 土むき出しな所も同じだしなぁ。
とは言え、この馬車に家の連中を乗せようとは思えんけどね。乗り心地に関しては、妥協とかせずに追求したし、そもそも、家の連中が不快に思わない様にって、自重しなかった部分でもあるし。
「【ドラゴンスレイヤー】殿は武勇に優れているだけではなく、統治の手腕も優れているとか、いやはや、羨ましい限りです」
「いえ、その辺は、自分も周囲の人間に助けられてばかりですから」
「そう言った人材が揃うのも【ドラゴンスレイヤー】殿の人徳と言う物でしょう」
この馬車に乗り込んだ時から、こんな感じで持ち上げられ続けてて、一寸居心地が悪いんだよなぁ。【ドラゴンスレイヤー】って称号に関しては、外では“実は大した事はない”的な噂も広がってるって事も聞いてるし、何か、ここまで持ち上げられると、何か裏があるんじゃないかって、勘ぐっちまうんよね。俺の猜疑心が強いってだけの可能性も有るけど。
『【得意】この人間は、良く分かって居ますね。感心です』
いや、ファティマ、明らかに持ち上げ過ぎだろうよコレ。……てか、人間だと思うのか?
『【肯定】あの個体名【バフォメット】の人間体に感じる様な、不自然な感じは有りません』
う~ん、限りなく白に近いグレーかなぁ。アザゼルも、カンツァレラ一家を篭絡した時は褒め殺しみたいな事やってたらしいし。
「最近は領地の方も随分と賑わっているらしいじゃ無いですか。そう言った発想力など、あやかりたいものです」
「その辺も自分だけのアイデアって訳じゃ無いので」
「いや、いや、それはつまり、周囲の人間が意見が出しやすい環境と言う事では無いですか。そう言った環境を作れるのもまた、領主の才能と言う物でしょう」
別に後ろ暗い事とかやってた訳じゃ無いけど、単純に、肯定的に褒められるだけの状況ってのは何と言うかモヤるんよね。俺自身が完全肯定される程のパーフェクトなヒューマンじゃないと思ってるって事も有ってなぁ。




