頼りになる家族達
背後から飛び出して来た物に俺は目を見開く。
合計20個の【ファイアランス】、それが次々に多足多砲塔戦車に着弾し、爆炎を上げた。
と、背中から軽い衝撃。
「トール、さまっ、また、むちゃ、し、て……」
「悪りぃ……」
苦笑するしかない。確かに俺も無茶したかもしれんが、1ヶ月は掛るだろう旅程をどうやったら四分の一にまで縮められるんだか。
『【確認】わたくしの【回復魔法】に同調してくださいな。個体名【トール】』
え? 聖弓も来てるのか? 俺が驚いて振り向くのと、ウリ達が飛び出すのはほぼ同時だった。
「うおん!!」
バラキが身体を擦り付けてくる。それ以外のミカ、セアルティ、ウリ、ガブリ、ラファと、誰? 何やら一際巨体のメカメカしいのがいつものメンバーの中に居るんじゃが?
ソイツ等は爆炎によって上がった煙で悪くなった視界の中へと飛び込んで行った。と、すぐに交戦している音が轟く。どうやら、走り回って撹乱し、同士討ちをさせてるらしい。
だよな、確かにイブ達の【ファイアランス】は高威力だが、敵の装甲も半端じゃない。
しかし、流石だ。俺では出来なかった戦法だな。
『【屈辱】ボクの魔法で一撃で倒せなかったデス! 何なんデスかあの装甲は!!』
「オヌシ様は、一撃で潰しておったのじゃがな?」
ジャンヌが不機嫌そうな声を出すと、エリスがそれをからかう。いや、かなり無茶してやっとだったんだが? ってか、エリス!?
何してんの!? 女王様!!
いや、ロボセイントが居る時点で、使い手のエリスが居ても可笑しかないかもしれんが、一国の女王が他国の遺跡居るっておかしいからな!?
『【確認】お体の方はどうかしら?』
「ん? ああ、完璧だな、むしろいつもより軽いくらいだ」
回復魔法を掛けてもらったのは初めてだが、随分と体が楽になるんだな。
ん? ロボセイントが、何か言いたそうに、俺を見てる。
『【安堵】満足できましたかしら? で、有れば、わたくしに個体名、べっ』
『【軽蔑】全く油断ならない女狐ですね。遅くなりました、マスター』
ロボセイントの頭にチョップをかまして、ファティマが、そう言った。
いやいや、俺が思ってたよりも、随分早かったが?
神殿に繋がってた“扉”は、使えなかっただろ?
『【肯定】はい、そうでしたが、魔人族国の遺跡にあった飛空艇を借りて来ましたので』
何、だとっ……
何それ、羨ま妬ましい!! 飛空艇に乗るなんて!! そんな浪漫状況!!
てか、飛空艇の操作なんて出来たんだな。
『【肯定】はい、聖剣が』
そう言われ、聖剣の姿を探す。
『【説明】彼女は留守ば……飛空艇の警護に残しました』
活躍する場を奪われて、血涙を流して悔しがるロボバトラーの幻覚が見えたんだが?
いや、そんな事より、それって無断入国じゃね!?
『【自負】私達は、マスターの所持品ですから』
所持品……ああ、うん。ちょっと忘れがちになるけど、おまいら品物だもんな。ミカ達は……法的には物品に成るのか……あれ? それって前世での話か? 今は……今もか。テイムされた動物とかはテイムした人間の所持品として扱われるんだったか。
「わたし、も、トール、さま、の、もの」
イブ、お前は人間だからな? 品物じゃないから、やっぱり無断入国だと思うの。
「ワシもオヌシ様の婚約者なのじゃ」
「いきなり噓ぶっこんで来るんじゃねぇよエリス!」
リティシアが『え、そうなの?』って顔してんじゃねぇか!!
「それから婚約者だったとしても密入国なのは同じだからな!?」
そしてお前、それ取り締まる方の立場だ!!
「ホッホッホッ、心配せんでも、ワシが許可出す立場でもあるんじゃぞ? ちゃんと許可は取るのじゃ」
「『取るのじゃ』って、まだ取って無いって事だろうが!」
「それは……ほら、あれじゃ、『緊急避難』と言うヤツなのじゃ!!」
いや確かにピンチだったのはピンチだったんで、助かったちゃぁ助かったんだが……
「そこに居るの、この国の公爵家の娘さんなんで、キッチリ話し着けとけよ」
「うぬ! 任せるのじゃ!!」
ロボセイントのおかげで完全回復できた。今更ながら、自爆覚悟の特攻とか、視野狭窄も甚だしかったな。
良し、冷静に成れた。追加で俺特効の増援が来るなんざ、つまりは本体はここには居ないって事だ。
で、ガーディアンの話が正しいのなら、多脚多砲塔戦車の持っているのは自己修復であって、自己増幅ではない。
それの示す所は、アイツの本体は、まだ宝物庫の中に居るって事だな。
冷静に成れば、すぐに思い至れる事に思考が及ばなかったわ。どんだけ冷静さを欠いてたんだか。それも、皆が来てくれた事で払拭できた。
そんな気は無いつもりだったが、結構、コイツ等を心の支えにしてたって事が良く分かったわ。
そう思いながらバラキをワシャる。
「って事は、あの空間穴に入らなきゃならんのだが……」
『【提案】私に良い考えがあります。マスター』
ファティマはドヤ顔でそう言った。




