首を刎ねれば大体死ぬ
ここ迄で限界でした。
短くて申し訳ない。
「え? え!?」
バイコーンが倒れ、突風が吹き荒れる。音の壁を突き破った余波だ。
自分の後ろに居た筈の俺が、戦斧を構えた格好で、倒れ伏したバイコーンの更に奥に居る事に、騎士は驚きの表情をした。
いや、何の事は無い。ただ、超加速して跳び上がり、落下しつつ更に加速して、すれ違いざまに首を刎ねたってぇだけの話だ。
種も仕掛けもない、ただの超スピード。音速に巻き込まない様に気を付けはしたけど。
勢いをつける為にか、興奮していたからか、地面なんざ蹴って『これから攻撃しますよぉ』みたいな予備動作をしてるから、どうしたって、一テンポ遅れる事に成る。
今までがどうだったのか知らんが、俺の前じゃ、ソレは、致命的な隙だったぞ、と。
まぁ、普通に野生してて、音速でぶつかり合う事なんざ早々無いだろうからな。特に地上だと。空だと分からんがな。
『【報告】空中でも音速を越えるとなると、それ程種類は居ません。マイマスター』
あぁ、やっぱり居るんだ。
それはそれとして、俺の姿を捉えられなかったのは、バイコーンだけじゃなく騎士も同じだった様で、唖然とした表情に成ってる。普通に生きてて、音速越えて移動する人間なんざ、早々見ないだろうしなぁ。
「お~い。まだ、戦闘は終わってないぞ」
「あ、お、う?」
俺が声を掛けると、目をぱちくりとしていたが、倒れているバイコーンと俺とを交互に見比べ、しかし、口をポカンと開けたまま、あうあうと声に成らない声をあげる。
まぁ、自分達があれだけ苦戦していたバイコーンをいともあっさり倒しちまったんだから、しょうがないっちゃ、しょうがないやね。
「見ての通り俺は大丈夫だから、バイコーンを狩るのはこっちに任せて、あの馬車の方を護ってて貰えるか? 護衛対象が乗ってるんだろう?」
「え? あ、ああ」
とは言え、あんまりここで呆けたたままに成られてても危ないんで、取り敢えず、護衛対象だろう貴族が乗っていると思われる馬車の方へと誘導。あそこなら、他の騎士も居るだろうから、ここで呆けられてるよりは何ぼかマシだろう。
俺は、何か納得の行ってなさそうな騎士を見送り、犬達の相手をしていない別のバイコーンの方へと向かった。




