状況に入るぜ
現場をよく見ると、何頭かの馬が倒れていて、その馬の腹に口を突っ込んでいるバイコーンも居る。
って、肉食かよ!!
てか、共食いじゃねぇのか!? これ!!
幾つかの馬車は横転していて、車軸が折れている物もチラホラ。
その馬車の残骸が散らばる中の、まだ無事な一台に、襲い掛かっているバイコーンが数頭。護衛の騎士も応戦してはいるが、その巨体に見合わぬ俊敏さの為か、騎士の方も果敢に攻めては居るものの、決め手に欠けてるってぇ感じ。
もっとも、馬車を護って居るからってぇ縛りも有るからだろうが。
幸いと言って良いか、騎士の方に倒れ伏している者は居ても、まだ、死亡して居る者は居ないらしく、全ての騎士から【プラーナ】が残っているのを感じる。
もっとも、かなり拙そうでは有るが。
「ワンワン!!」
「アン? ワオォン!!」
「ワオーン!!」
「わん!!」
俺が飛び出した事で後を付いて来た犬達が、俺に『どうするの?』って感じで吠える。
正直、バラバラの位置にいるバイコーンを全て排除するとなると、それなりに時間を食いそうなんよね。騎士の方には、少しでも手間取っていると事切れちまう奴とか居そうだから、先ずは重傷者の回復をしたかったんだわ。
「よし! ミカ達は、バイコーンを押さえてくれ!! 隙が有れば殺って良し!! てか、その前に声掛けか!!」
犬達に、一時的に待てをして、戦っている騎士達に声を掛ける。俺単騎なら一応にでも人型だし味方だとかって迷わないとは思うが、犬たちはなぁ。いや、この世界の魔獣って、一様にデカいから、魔獣に間違えられるって事は無いとは思う。無いとは思うんだが、そこは一応。
冒険者だって、横入りってか手助けする時は『手助けが必要か?』って聞く事に成ってるしなぁ。後々トラブルに成らん様にさ。
「私は、オーサキ領、辺境伯、トール·オーサキ辺境伯である!! 魔獣に襲われているのを見て助力する為に来た!! 手助けの為戦闘に参加をしようと思うが、良いかっ!!」
「オーサキ? おお!! 【ドラゴンスレイヤー】殿かっ!! 済まない、助力を願う!!」
騎士の言葉に、俺は犬達の『待て』を解く。と、犬達が散開して、襲って来ているバイコーンだけに飛び掛かった。
一頭一体かよ! いや、出来そうでは有るが!!
犬系の強みって群れの連携の筈なんだがなぁ。いや、牧羊犬は単体でも、誘導はするんだが。それでも狩りって事に成るとまた違うと思うんだが、でも、家の犬達だしなぁ。
俺が一瞬そんな事を考えていると、散会し、バイコーンと一対一かます犬達を見ていた騎士達が、口々に『犬が!?』『え? 犬か!?』『いや、【ドラゴンスレイヤー】殿は【犬使い】だとも聞いている!! 多分、犬、なのだろう』とかって騒ぎ始める。
……犬ですよ?
まぁ、【魔力外装】纏ったり、分身したり、空中翔たりしてるけんども!!
まぁ、そこは、家の犬達、天才ですからぁ!!




