時には厄介事に突っ込んで行く
一寸疲労の為かぶっ倒れて居ました。
遅くなって申し訳ない。
その後も度々盗賊やら山賊やら野盗やらに遭遇した訳だが、其処此処の領主やら貴族やらにチョッカイは掛けられなかった。
『【嘆息】そしてそうやって、昏倒させた盗賊同士の頭をお互いの太股で挟んで固定して、その場に放置と言う外道っぷり』
『【爆笑】人生最後に見るのが、お互いのナニって言うのが最凶デェス!!』
「まだ死ぬとは限らんし?」
『【嘆息】全身打撲で一部骨折までして居て、その上、二人一組で固定されてる状態から、無事に生還できる物でしょうか?』
気合が有れば? まぁ、盗賊に身をやつした時点で俺に同情は無い。俺だって捨てられた状態から真っ当に育ってるねんで、と。
態々手を下そうとは思わんし、手を下すのも躊躇は有るんだが、勝手に死ぬことに思う所は無いんだわ。そもそも、アイツ等も他者を害しまくって生きて来た訳だし。
それはどうでも良いんだ。貴族の方については、そもそも同じ国の別の領主に直接的な害を与える事に、全くメリットってのは無い。それこそ、その罪を犯してでも得られるメリットが、あらかじめない限りはな。
詰まり、カンツァレラ子爵がやった事の方が、本来ならイレギュラーだったってぇ事やね。
てか今回、魔物狩りをしてないや。いや、同行者が多いし、態々危険な所とか行かんけんどもさ。長距離移動の度に、魔物狩りがセットだったんで、一寸妙な気分だわ。
とは言え今回は安全第一品質第二ってぇ感じで行くんだがね。
「……血の、臭い?」
おかしい、安全第一とか思った途端に不穏な様子に……これがフラグの力かっ!!
「悪い、一寸先行する」
「んっ!!」
『【追従】私は同行いたします、マイマスター』
「頼む」
恐らくは、何がしかが戦ってるってぇ事だろう。血の臭いからは動物、人、魔物のソレを感じるってぇ事は、誰かが魔物に遭遇してるってぇ事だ。
ケルブの内部から露出したオファニムの胸部装甲が開く。俺は御者台からそこに飛び込むと、【魔力外装】を接続し、聖斧形態へと変形したファティマがその手に収まる。
「トールちゃん!! 頑張ってね!!」
「はい、母上」
声を掛けて来た第二夫人に応えると、俺は【噴出孔】から【プラーナ】を放出し、一気に現場へと飛び出した。
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街道の先で真っ先に目に入ったのは全高が6、7mは有ろうかと言う巨大な角のある馬。アンテロープの様にも見えるが、蹄が割れて無いからありゃ馬だ。馬は奇蹄目で、アンテロープは偶蹄目。そこには明確な違いって物が有る。トール、知ってるぅ。
角が生えてる馬だから魔物なんだろうけど、何かは分からん。そう言えば、家の古代遺跡って、そもそも魔物を含めた生物の生態を研究したりサンプルを保存する為の施設だったっぽいんだから、そう言った情報とかも有る筈なんだよな。全くそっち方面は調べて無かったわ。“扉”の方に全意識が行ってた。
『【説明】因みにアレはバイコーンだと推察されます。マイマスター』
「角が二つでバイコーンって、そのまんまだな」
1つだったらユニコーンだと言う理屈やね。
それは兎も角、そんなバイコーンが5、6頭で馬車を襲ってるっぽい。紋章の付いた馬車群だから、まぁ、恐らくは俺と同じ、王都に向かう貴族だろう。
まぁ、それはどうでも良い。何か、久し振りの狩りで、一寸、高揚してる自分が居るわ。
ヤッパリ、こっちを殺すつもりで襲って来る人間相手で、ストレスとか溜まってたっぽいな。
さぁて、久しぶりの魔物狩りだ!! 見せてせて貰おうか、角2つの馬の、実力と言うものを!!




